景気不安の後退で強気地合いが戻る米国株、次の焦点は小売売上高、S&Pは50日線の攻防に注目
過度の景気不安が後退し、長期金利も低下の基調にあることで米国株には強気地合いのムードが漂う。機関投資家が運用のベンチマークとするS&P500種株価指数(SPX)は半値戻しの水準を突破し、50日線などのテクニカルラインが密集する水準の攻防にある。さらなる上値トライとなるのか?今日は7月小売売上高がその鍵を握ろう。S&P500の見通しと注目のチャート水準は?
記事のポイント
・景気不安の後退と長期金利の低下で米国株に強さが戻っている
・S&P500は50日線などが密集するテクニカルラインの攻防が焦点に
・今日は7月の小売売上高が米国株の変動要因となろう
・S&P500、目先注目しておきたいチャート水準について
S&P500、注目のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・5,539:リトレースメント76.4%戻し
・5,485:短期のレジスタンスライン
・5,460:リトレースメント61.8%戻し /76.4%戻し(45分足)
下値の水準(サポート)
・5,400:サポート水準
・5,375:サポート転換を意識する水準
・5,320:サポート転換を意識する水準
S&P500の見通しとチャート分析
テクニカルの面では分岐点に差し掛かる
多くの機関投資家が運用のベンチマークにしているS&P500種株価指数(SPX、以下ではS&P500)は7月中旬から8月上旬にかけて発生した下落局面をこなし、半値戻しの水準を完全に突破。現在は、50日線をトライする状況にある(日足チャート、青矢印を参照)。
50日線のすぐ上の水準5,460レベルは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。また、45分足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準でもある(45分足チャート、青矢印を参照)。
重要なテクニカルラインが重なる5,460前後は、テクニカルの面で重要な水準といえるだろう。
短期レジスタンスラインの突破
日足のRSIはゴールデンクロスへ転じ、強気のモメンタムに勢いがあることを示唆している。一方、MACDでもゴールデンクロスが確認された。ゼロラインを下回る状況ではあるが、RSIの動きも考えるならば、今のS&P500は強気地合いにある。
今日以降もS&P500が地合いの強さを維持し、上で取り上げたテクニカルライン(5,460レベル)を完全に上方ブレイクする場合、次の焦点は短期レジスタンスラインの攻防となろう。このラインは今日現在、5,485レベルで推移している。
S&P500が短期レジスタンスラインを完全に突破する場合は、さらなる上値トライのシグナルとなろう。具体的には、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準5,539レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する。
S&P500:日足 今年4月以降
出所:TradingView
3つのサポート水準
一方、S&P500(SPX)の反落局面では、3つのサポート水準に注目したい。
最初の水準は5,400ポイントである。二つ目の水準が5,375レベル、最後の水準が5,320レベルである。後者2つの水準は、レジスタンスからサポートのラインへ転換する可能性がある(下の45分足チャート、黒矢印を参照)。
現在のアメリカ株式市場では、過度の景気不安が後退している。しかし、7月の米雇用統計では失業率が4.3%へ上昇し、サームルール※の経験則に従えば、アメリカの経済は景気に後退に向かっている可能性がある。ゆえに今の反発相場は、経済指標で簡単にトレンドが変わる可能性が水面下でくすぶっている。
その経済指標で今晩注目したいのが、下で述べる7月の小売売上高である。
下の45分足チャートにプロットしたストキャスティクスとRSIはいずれも買われ過ぎの水準で推移している。デッドクロスへ転じた後に低下幅が拡大する場合は、短期の売りを考えたい。
※米連邦準備制度理事会(FRB)元エコノミスト、クラウディア・サーム氏が考案した指標。直近3カ月間の平均失業率が過去1年の最低値を0.5ポイント上回る場合、景気後退の確率が高まという。
S&P500:45分足 8月以降
出所:TradingView
今日の焦点は7月の小売売上高
9月の大幅利下げ期待は後退しているが
過度の景気不安が後退していることで、短期金融市場では9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ポイント利下げの可能性が後退している。CMEのFedWatch ツールでは、0.5ポイント利下げの確率が37%まで低下している。
しかし、投資家心理の改善が大幅利下げ期待を後退させた主因であることを考えるならば、この点は米国株にとってネガティブな要因とはならないだろう。
むしろ注視すべきは、重要な米経済指標の内容である。
9月FOMCの利下げ幅と確率
アメリカ個人消費の動向
7月の生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)はいずれも、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。インフレの鈍化はアメリカ長期金利の低下要因となっている。
景気不安の後退と長期金利の低下は、米国株にとって良好な環境といえる。この環境が続くかどうか?この点を左右する経済指標が、今晩の7月小売売上高となろう。
個人消費はアメリカ経済の土台である。7月の小売売上高で個人消費の堅調さが確認される場合は、景気不安のさらなる後退が米株の押し上げ要因となることが予想される。
しかし市場予想を確認すると、総合では0.4%増と6月の0.0%から回復の見通しにある一方、自動車を除く小売売上高は0.1%増(6月0.4%増)、コア小売売上高は0.2%増(6月0.8%増)と、それぞれ6月から落ち込む見通しにある。
市場予想以上に個人消費の落ち込みが確認される場合は、景気不安が米国株の重しとなる展開が予想される。このケースでのS&P500は、上で述べた3つのサポート水準の攻防に注目したい。
米国 小売売上高:23年7月以降
米国500のチャートポイント
上で述べた現在の原市場の動向とテクニカルの攻防を踏まえ、IG証券が提供している株価指数CFD「米国500」(原資産 S&P500種株価指数)のチャートポイントを以下にまとめた。
上値の水準(レジスタンス)
・5,533:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・5,500:レジスタンスのラインへ転換する可能性がある水準
・5,475:短期レジスタンスライン
下値の水準(サポート)
・5,393:フィボナッチ・リトレースメント23.6%
・5,347:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・5,330:サポートのラインへ転換する可能性がある水準
4時間足:7月10日以降
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