米国株、PCEでFOMCショック後退も見通しは依然不透明、S&P500の週間見通し
11月のPCEデフレーターでFOMCショックがひとまず後退している。しかしS&P500には不透明感が漂っている。今週はテクニカルラインの攻防を重視したい。クリスマス前に6,000台へ反発すれば年末高の期待が高まろう。
PCEデフレーターでFOMCショックがひとまず後退
11月の個人消費支出(PCE)価格指数(以下PCEデフレーター)は、前月比と前年同月比でともに市場予想を下回った。20日の米債市場では利回りの上昇が一服し、主要な米株価指数が上昇して終えた。ひとまずFOMCショックが後退するムードにある。
アメリカ株価指数の騰落率:12月20日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
見通しは依然として不透明
だが、時系列で週間の騰落率を確認すると反発は限定的であり、かつ中小型株のラッセル2000が最も下落したことが分かる。中小型株の買いは、投資家の強気心理を測る重要な指標の一つである。その中小型株が売られている状況は、米国株が再び一部の大型株、特にマグニフィセントセブンに代表されるハイテク株に頼る状況にあることを示唆している。事実、11月の下旬以降、ラッセル2000が下落する一方で、大手ハイテク株の影響を受けやすいナスダック指数の上昇幅が拡大している。
11月のPCEデフレーターが市場予想を下回ったことで、米金利の上昇はひとまず一服している。しかし、低下幅は限定的である。インフレ再燃の可能性、そして25年の利下げパスの不透明感を意識した動きと考えるのが妥当であり、米金利の上昇リスクが依然くすぶる。米国の見通しには依然として不透明感が漂う。
アメリカ株価指数の週間騰落率:12月16日~20日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
テクニカルラインで反発が止められたS&P500
先週20日のS&P500も米国株の不透明感を示唆した。この日はPCEデフレーターの内容が好感され、S&P500は前日比で1%上昇した。しかし、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準5,980レベルで戻りが止められた(下のチャート、黒矢印を参照)。「上昇→横ばい→下落→戻りが限定的」という一連の流れも考えるならば、FOMCショックを完全にこなしたと判断するのは早計だろう。
しかし見方を変えれば、クリスマス前に61.8%戻しをはじめとした重要なテクニカルラインの突破に成功すればFOMCショックをひとまずこなし、S&P500の年末高期待が高まるということでもある。
S&P500のチャート
出所:TradingView / 1時間足 11月15日~12月20日
S&P500の見通しとテクニカルライン
焦点は6,000ポイントの突破
今週のS&P500はテクニカルラインの攻防を重視したい。上で述べた61.8%戻しを完全に突破する場合は、以下でまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
・日足のMACDは低下基調にあるがゼロライン以上の水準で推移している。モメンタムには反転のムードが漂う。強気地合いは後退しているが、下落幅が拡大する可能性は現時点では低い。この点は、VIX指数の低下も示唆している
VIX指数のチャート
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 日足 9月~12月20日
・今日は、個人消費やGDPとの相関性が高いとされる12月の消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想は113.0と、前月の111.7から上昇する見通しにある。予想以上ならば、米景気対する楽観的な見方がS&P500を下支えすることが予想される
・強い経済指標が米株高の要因となれば、節目の6,000ポイント突破に注目したい。すぐ上の水準6,007ポイントには10日線が推移している。クリスマス前にこれらのレジスタンスラインを完全に突破すれば、年末高の期待が高まろう
・S&P500が6,000ポイント台の攻防へシフトする場合は、最高値の6,100ポイントの攻防が焦点に浮上しよう。12月18日の高値6,070ポイントの突破は、6,100ポイントをトライするサインと捉えたい
・6,100ポイントの突破は、新たな高値水準の攻防へシフトするサインと捉えたい
レジスタンスラインのまとめ
・6,100:レジスタンスライン(日足)
・6,070:12月18日の高値
・6,007:10日線(日足)
・6,000:節目のライン(日足、1時間足)
・5,979:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(1時間足)
下落の局面では75日線と5,800ポイントの攻防に注目
10年債利回りと株式益回りで算出されるイールドスプレッドは、S&P500の割高感がジワリと高まる状況を示唆している。
米10年債利回り、S&P500の株式益回り、イールドスプレッド
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 週足 2020年以降
また、ブルームバーグのデータによれば25年の予想EPS(一株利益)は、今秋を境に低下基調へ転じている。米長期金利が再び上昇するなどの株安要因が発生すれば、以下で取り上げたサポートラインの攻防に注目したい。
S&P500の予想EPS:25年
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 日足 年初来
・先週20日の市場では、75日線がサポートラインとして意識された。今週、S&P500が下値をトライする局面では、この移動平均線の維持が最初の焦点となろう。引き続きサポートラインとして意識される場合は、上で述べたレジスタンスラインを視野に入れた動きが続くと予想される
・S&P500が75日線を下方ブレイクする場合は、5,800ポイントの維持が焦点に浮上しよう。この水準は、サポートラインへ転換する可能性がある。実際にサポート転換が確認される場合は、75日線がレジスタンスラインへ転換するかどうか?この点を確認したい
・5,800ポイントをも下方ブレイクする場合は、5,700ポイントの維持が焦点に浮上しよう。このラインは10月31日以降、サポートラインへ転換している
サポートラインのまとめ
・5,841:75日線(日足)
・5,800:サポートラインへ転換する可能性あり(日足)
・5,700:サポート転換の水準(日足)
S&P500のチャート
日足:8月以降
出所:TradingView
1時間足:11月15日~12月20日
出所:TradingView
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