【米国株 ウィークリーレポート】今週もボラティリティの拡大を警戒する1週間に
2月の米雇用統計を受け、賃金インフレの懸念が後退した。しかし、米銀シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻を受けて投資家心理が冷え込む状況にある。今週も経済指標とSVB破綻の影響により、米国株(アメリカ株)はボラティリティの拡大を警戒する1週間となることが予想される。
※次回のウィークリーレポートの配信は、3月27日(月)となります。
【サマリー】
・SVBの経営破綻による投資家心理の動きがボラティリティ拡大の要因に
・2月のインフレ指標でも米国株は上下に大きく振れる展開が予想される
・S&P500種株価指数の展望とテクニカル分析について
・ナスダック100指数の展望とテクニカル分析について
シリコンバレーバンク(SVB)破綻と投資家の心理に与える影響
スタートアップ企業への融資で知られる米銀のシリコンバレーバンク(SVB)は10日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入った。
2022年末時点におけるSVBの総資産は約2,090億ドル(約28兆円)の全米16位であり、米銀の破綻としてはリーマン・ショック時のワシントン・ミューチュアル以来の規模となる。事態の重さを受け米連邦準備理事会(FRB)は10日、米国に拠点を置く銀行に対して緊急の調査に入った。
先週10日にアメリカ労働省が発表した2月の雇用統計では予想外に失業率が上昇し、かつ平均時給が前月比と前年同月比でともに下回った。この結果を受け、米国株の先物指数は当初買いで反応した。
しかし、SVB破綻の報道を受けて10日の米国株市場は景気敏感株を中心に下げ幅が拡大し、主要指数が軒並み1%超下落する展開となった。
米債市場では各年限の利回りが急低下し、外為市場では円とスイスフランが買われる展開となった。
これら市場の動きは、投資家の心理が急速に冷え込んだことを示している。
金融市場で信用不安が高まると拡大するTEDスプレッドの動きを確認すると上昇基調にある。しかし、リーマン・ショックやコロナショックと比べるとその水準は高いとは言えない。
SVB破綻の問題に対して米金融当局が迅速に対応している(連邦準備理事会は金融機関に対して緊急の融資枠を新設し不安の連鎖解消に向けて迅速に対応している)姿勢は、投資家心理の改善につながるだろう。
だが、SVBに続き12日にはニューヨーク州を地盤とし資産規模で全米29位のシグネチャー・バンク(暗号資産関連の企業との取引で知られる銀行)が破綻した。同行はFDICの管理下に入り預金は全額保護されるというが、今後も米銀の破綻が続く場合は、投資家の不安心理が市場全体に伝播することが予想される。
週明けの米株指数先物は上昇でスタートしたが、金融不安に関するヘッドラインによってはボラティリティが拡大する状況を想定しておきたい。
TEDスプレッドの推移
TEDスプレッドの推移
ボラティリティ指数の動向
投資家の心理を反映するVIX指数(VIX)の動きを確認すると、先週10日に24ポイント台まで上昇している。3ヶ月間の予想変動率を示すVXV指数との比率(VXV / VIX)は「1」に向かって低下の傾向にある。これらの動向は、現在の投資家心理が冷え込んでいる状況を示唆している。
上で述べたとおり金融不安が連鎖すれば、投資家心理はさらに悪化するだろう。よって、今週の米国株では銀行セクターの動きを注視することが重要となろう。
なお、先週のセクターパフォーマンス(S&P500種株価指数)を確認すると、銀行セクターの下落率は8.5%となり最も下落した。
VIX指数とVXV/VIXの比率
S&P500種株価指数のセクターパフォーマンス:直近5日間
インフレ指標とボラティリティ拡大の可能性
SVBの経営破綻の問題以外で今週の米国株を大きく動かす要因となり得るのが、インフレ関連の経済指標である。
14日に2月の消費者物価指数(CPI)、15日に同月生産者物価指数(PPI)が発表される。
2月の雇用統計で賃金インフレに対する懸念が後退している。このタイミングで2月のインフレデータが総じて予想以下の内容となれば、米国株の上昇要因となり得る。しかし、インフレデータが株高の要因となっても、その持続性はSVBの破綻問題に対する米金融当局の対応とその効果、そして投資家心理の動向次第となろう。
米金融当局の適切な対応によりSVB問題を震源とした悪影響が限定的との見方が市場で広がれば、インフレリスクの後退がより重視され、米国株の反発(調整の上昇)幅が拡大することが予想される。しかしこの展開となっても、来週の連邦公開市場委員会(FOMC)を控えていることから、利確により上値が抑制される状況も想定しておきたい。
一方、SVBの経営破綻を震源とし、システミックリスクを想起させる状況となれば、米国株の反発は一過性または下落することが予想される。SVB問題が意識される状況の中、今週の物価指標でインフレリスクが再び意識される展開となれば、米国株の下落幅が拡大することが予想される。
2月CPIとPPIの市場予想
S&P500種株価指数の展望とテクニカルポイント
焦点はサポートポイントを見極めることにある
上で述べたVIX指数(VIX)の動きを考えるならば、今週のS&P500種株価指数(以下S&P500指数)は、下落リスクを警戒しておきたい。この点はテクニカル指標も示唆している。2月2日に高値4,195レベルまで上昇した後、20日MAと50日MAがレジスタンスラインとして意識される状況にある。これらの移動平均線に相場の戻りが止められ、日足ローソク足では連日で大陰線が示現した。そして先週9日の市場では、200日MAをも一気に下方ブレイクする展開となった。
上で述べた各移動平均線を下方ブレイクする過程で短期レジスタンスラインが形成され、さらにMACDは急速に地合いが悪化していることを示す状況にある。
これらの動向を総合的に考えるならば、S&P500指数(SPX)の焦点は、新たなサポートポイントの見極めにある。
上下のチャートポイント
上で述べたSVB問題とインフレ指標がリスク回避の要因となれば、S&P500指数(SPX)は昨年の12月下旬から今年1月の上旬にかけて相場をサポートした3,800レベルのトライが予想される。
先週10日の下落を止めた半値戻しの水準3,843レベルの下方ブレイクは、3,800トライのシグナルとして警戒しておきたい。
S&P500指数が3,800レベルを完全に下方ブレイクする場合は、昨年12月22日の安値3,764レベルのトライを想定しておきたい。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%(3,760レベル)にあたる。
S&P500指数が3,760台をも完全に下方ブレイクする場合は、昨秋の安値レベルに向かって下落幅の拡大を警戒したい。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準3,657レベルの攻防に注目したい。
一方、S&P00指数が反発する場合は、200日MAがレジスタンスとして意識されるかどうか?まずはこの点を確認することが重要となろう。200日MAの “レジスタンス転換” は、相場の地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
反発の局面でS&P500指数が200日MAを突破する場合は、50日MAおよび20日MAの攻防に注目したい。これらの移動平均線で反落する場合も、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
S&P500指数のチャート
ナスダック100指数の展望とテクニカルポイント
S&P500指数と似た状況
ナスダック100指数(NDX)は、S&P500指数(SPX)と似たような状況にある。
例えば移動平均線の攻防では、200日MAを下方ブレイクする状況にある。この移動平均線を下方ブレイクする過程で短期レジスタンスラインが形成され、MACDも地合いの強さを示唆している。そして先週10日の下落相場では、半値戻しの水準11,788レベルがサポートポイントとして意識された。
騰落株線(ADライン)が低下基調へ転じている状況も考えるならば、今週のナスダック100指数は新たなサポートポイントを見極めることが焦点となろう。
上下のチャートポイント
SVB問題やインフレ指標を受けてナスダック100指数が半値戻しの水準11,788レベルを下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(11,530レベル)および76.4%の水準(11,211レベル)での攻防を注視したい。
一方、ナスダック100指数が反発する局面では、S&P500指数と同じく200日MAが “レジスタンス転換” となるかどうか?この点を確認したい。
反発の局面でナスダック100指数が200日MAの突破に成功しても、今月7日以降、相場の上昇を止めている20日MAが控えている。すぐ上には、短期レジスタンスラインも推移している。これらテクニカルのラインを完全に突破しない限り、ナスダック100指数の下落リスクを常に意識する状況が続くと予想する。
ナスダック100指数のチャート
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