【米国株 ウィークリーレポート】 短期買いと反落リスクの両方を警戒する1週間
米国の株式市場では、インフレと金融引き締めの長期化に対する懸念が急速に後退している。投資家のリスクセンチメントも改善の傾向にある。現在の米国株は、調整の反発局面(中間反騰の局面)にあると考えられる。よって、今週の米国株も短期買いにサポートされる展開が予想される。しかし調整の反発局面である以上、反落リスクも常に警戒しておきたい。その要因として目先注意すべきことは?詳細はウィークリーレポートにて。
今週も株高を想定、しかし経済指標や決算の内容次第で反落も
【サマリー】
・インフレのリスクと金融引き締めの長期化に対する懸念が急速に後退している
・現在の投資家のリスクセンチメントは改善の傾向にある
・株価指数の注目は”ナスダック” 展望とチャートポイント
・市場テーマのシフトにより今年は「悪いニュースは、“悪い”ニュース」に
鮮明となるインフレのピークアウト
米労働省が1月6日に発表した2022年12月の雇用統計によれば、平均時給は前年比で4.6%と、前月の5.1%から低下した。前月比でも0.6%から0.3%へ低下した。
一方、米商務省が1月12日に発表した同年12月の消費者物価指数(CPI)は、予想どおりインフレの鈍化を示す内容となった。
また、1月13日の1月ミシガン大学期待インフレ率(1年先)も前月の4.4%から4.0%へと低下した。
米国のインフレ指標
今年後半の利下げを意識する市場
インフレ関連の経済指標はいずれも米国のインフレがピークアウトしたことを示している。そしてインフレ懸念の後退は、米金融引き締めの長期化に対する懸念の後退につながっている。この点について短期金融市場の動向を確認すると、今年の後半に連邦準備制度理事会(FRB)が利下げへ転じることを織り込んだ動きが続いている。
米政策金利の予想推移
先週は予想どおり株高の展開に
前回のウィークリーレポートでは、米国株の短期買いを予想した。レポートで指摘したとおり、先週の米国株は7.7%の上昇となった(MSCI USA Index)。
先週の動向で注目すべきは、ナスダック指数の上昇率がS&P500種株価指数(SPX)やダウ平均(DJI)を上回っていることである。ハイテク(グロース)企業が多く上場しているナスダック指数の特性を考えるならば、先週の米国株は「インフレリスクの後退→持続的な利上げリスクの後退→米金利の先安感」を強く意識していることがうかがえる。
米国株の週間パフォーマンス
株高を支える投資家のリスクセンチメント
米株高のトレンドを支えているのが、投資家のリスクセンチメントの改善傾向である。この点についてアメリカ個人投資家協会(AAII)が公表しているデータで確認すると、強気(ブル)と弱気(ベア)の比率(強気/弱気の比率)は上昇の傾向にある(下チャートの緑矢印)。
22年以降のトレンドを確認すると、この比率が0.8を超えると再びリスクセンチメントが悪化するパターンが見られる(下チャートの赤矢印)。
現在の比率は0.60。投資家のセンチメントが悪化に転じる水準(0.80)までまだ余裕がある。
アメリカ個人投資家のセンチメント:強気(ブル)/弱気(ベア)の比率
一方、投資家のセンチメントを測る代表的な指標であるVIX(30日間の予想変動率)は20ポイントを下回り、18ポイント台まで低下している。
長期のボラティリティ指数であるVXV(3ヶ月間の予想変動率)との関係を「VXV/VIX」で確認すると、分母のVIX指数(短期のボラティリティ)の低下により上昇基調にある。この動きは、投資家の短期的なリスクセンチメントが改善の傾向にあることを示している。
VXV/VIXレシオ
注目の株価指数は“ナスダック”
インフレのリスクと金融引き締めの長期化に対する懸念が後退していることで、今後も米金利には低下の圧力がかかり続けるだろう。
そして上で述べた先週のパフォーマンスと投資家のリスクセンチメントが改善の傾向にあることも考えるならば、今週米国の株価指数で注目したいのが、ナスダック総合指数(IXIC)とナスダック100指数(NDX)である。先週、これらの指数はともに50日線(MA)の突破に成功した。MACDでは強気のシグナルが点灯している。
総合指数の焦点は、昨年8月以降の下落トレンドを象徴する短期レジスタンスの突破である。これを達成する場合は、レジスタンスポイントとして意識されている11,600レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する。
なお、200日線(MA)は今後、11,600レベルと交錯する局面が来るだろう。よって、11,600レベルは今後のナスダック総合指数のトレンドを左右する重要ポイントと想定しておきたい。
ナスダック総合指数のチャート
一方、ナスダック100指数(NDX)も、目先の焦点は短期レジスタンスラインの突破となろう。
これを達成する場合は、サポートからレジスタンスへの転換が確認されている12,000レベルのトライおよびブレイクが次の焦点として浮上しよう。この水準は、22年の8月高値と最安値の半値戻しの水準となる12,080レベルにあたる。すぐ上まで200日線(MA)が迫っている状況も考えるならば、テクニカルの面で12,000レベルはナスダック100指数のトレンドを左右する重要ポイントと考えておきたい。
ナスダック100指数が12,000レベルを完全に突破する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準12,467レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する。
逆にナスダック100指数が12,000レベルで反落する場合は、50日線(MA)がサポートラインとなるかどうか?この点に注目したい。
ナスダック100指数のチャート
弱い経済指標は“悪い”ニュースに
先週に続き米国株は、短期買いにサポートされる展開を予想する。この予測を崩す要因として今週以降注目したいのが、四半期決算と経済指標の内容である。
今後、米国の株式市場ではインフレリスクから景気リスクへ焦点がシフトするだろう。それゆえ四半期決算で業績悪化のリスクが意識される場合は、米株安の要因となろう。
また、経済指標の重要性もさらに増すだろう。
今後、米国の経済指標をみる上で重要なポイントが2つある。
ひとつは、インフレ関連の経済指標で引き続きインフレの鈍化傾向が確認されるかどうか?である。もうひとつは、個人消費や景気の先行きに関連する経済指標で強い内容が続くのか?それとも市場予想をことごとく下回る内容が続くのか?である。
今年は「景気リスク」が米株式市場のメインテーマとなるだろう。このことを考えるならば、今後個人消費や景気の動向に関連した経済指標の強い内容は、素直に株高要因となるだろう。逆に市場予想を下回る内容が続けば、投資家に景気後退のリスクを強く意識させるだろう。
インフレリスクが焦点である間は、「悪いニュースは、“良い”ニュース」と言わんばかりに、弱い経済指標が株高を促してきた。
しかし、これからは「悪いニュース(弱い経済指標)は、“悪い”ニュース(株安要因)」になることを意識しておきたい。逆に「良いニュースは、“良い”ニュース」として捉えられるだろう。
今週も米国の重要経済指標が発表される。インフレ関連の経済指標では、12月生産者物価指数(PPI、18日)の内容に市場参加者の関心が集まろう。インフレの鈍化を示す内容が続けば、米株高の要因となろう。
一方、個人消費の状況を知る上で重要な12月小売売上(18日)や企業活動の動向を示す1月NY連銀製造業景気指数、同月フィラデルフィア連銀製造業景気指数への注目度も高い。上で述べたとおり、これらの経済指標は「良いニュースは、良いニュース」、「悪いニュースは、悪いニュース」として意識されることが予想される。
今週 注目しておきたい米経済指標
まとめ
今月に入り発表されたインフレ関連の経済指標は、いずれも米国のインフレがピークアウトしたことを示した。このため米国の株式市場では、インフレのリスクと金融引き締めの長期化に対する懸念が急速に後退している。投資家のリスクセンチメントも改善の傾向にある。よって、今週の米国株も短期の買いにサポートされる展開が予想される。
しかし、株安要因にも注意しておきたい。今後、市場のメインテーマは「景気リスク」にシフトするだろう。このため四半期毎の企業決算で業績悪化のリスクが意識される場合は、株安要因となろう。また、個人消費や景気の先行きを示す経済指標がことごとく市場予想を下回る場合も株安要因となろう。今年の市場テーマが「景気リスク」へシフトするからだ。よって今年の米株式市場は「良いニュース(強い経済指標)は、“良い”ニュース(株高の要因)」、「悪いニュース(弱い経済指標)は、“悪い”ニュース(株安の要因)」と素直に受け止めるだろう。
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