【米国株 ウィークリーレポート】 今週の注目材料とナスダック100指数の見通し
米半導体大手のエヌビディアは第2四半期の売上高見通しについて、アナリストの予想を大幅に上回る強気の内容を示した。これがきっかけとなり半導体株やAI分野に関連する大手ハイテク株の上昇幅が拡大した。ハイテク株比率の高いナスダック指数、特にナスダック100指数の上昇幅が拡大している。今週の注目材料は?そしてナスダック100指数は上昇トレンドを維持することができるのか?詳細はIG米国株レポートをご覧ください。
サマリー
・債務上限問題を巡る基本合意は米国株のサポート要因に
・根強いインフレ圧力を受け6月FOMCでの追加利上げが意識される状況に
・しかし米国株、特にナスダック100指数の上昇幅が拡大している
・地合いの強さを考えるならばナスダック100指数の反落局面では押し目買いを考えたい
・今週の注目材料とナスダック100指数のテクニカルポイントについて
土壇場での交渉妥結
アメリカのバイデン大統領と連邦議会のマッカーシー下院議長は今月27日、政府債務の法定上限を引き上げることで基本合意した。
米議会の採決でもめる可能性や24年の米大統領選を意識した2年の時限措置(妥協的な合意)であり、この問題が再び意識される可能性が残る。
だが、デフォルト回避に向けた動きは米国株のサポート要因となろう。
インフレリスクと追加利上げの思惑
5月12日に5月のミシガン大学5-10年先の期待インフレ率が2011年以来の高水準となる3.2%まで上昇した。
長期の期待インフレ率の上昇が判明して以降、10年債利回りは上昇トレンドを形成し、直近では3.8%台まで上昇している。
そして、先週26日に米商務省が発表した4月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)によれば前月比で0.4%、前年比で4.4%と、前月の0.1%および4.2%からインフレの伸びが加速した。
さらに変動の大きい食料品とエネルギーを除くPCEコアデフレーターも前月比で0.4%、前年比で4.7%と、総じて前月の水準(0.3%、4.6%)を上回り、アメリカのインフレ圧力の根強さを示した。
アメリカ PCEデフレーターの推移
インフレ圧力の根強さが具体的な数値(経済指標)で確認されたことで、短期金融市場では次回の連邦公開市場委員会(FOMC、6月13-14日)で追加利上げの可能性が急速に高まっている。
この点についてFEDウォッチツールで確認すると、今朝の7時時点での利上げ確率が60%付近まで上昇している。昨日の朝7時時点では66%台まで上昇する局面が見られた。
一方、米債市場では金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが、3月10日以来となる4.6%台まで上昇する局面が見られた。
インフレ圧力の根強さが確認されるなか、下で述べる今週の雇用関連指標が総じて強い内容となれば、連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に対する株式市場の楽観的な見通し、つまり「6月の利上げ停止→年内の利下げ」という見通しが後退するだろう。
市場が抱く6月FOMCの利上げ確率
今週の注目材料はアメリカの雇用関連指標
債務上限問題の懸念が後退していることで、今週30日以降の米国株は経済指標にらみの展開が予想される。
今週は、多くの重要経済指標が発表されるが、注目すべきはやはり雇用関連の経済指標となろう。今週31日に4月の雇用動態調査(JOLTS)の求人件数、6月1日に5月のADP雇用統計と前週分の新規失業保険申請件数、そして同月2日に5月の雇用統計が発表される市場参加者の注目度が高いのが、やはり5月雇用統計である。
5月雇用統計の市場予想は以下のとおりである。4月と同じく賃金の上昇を伴う雇用の増加となれば、労働市場のタイトな状況が続いていることが短期金融市場や米債市場で強く意識されよう。ゆえに5月雇用統計が強い内容となれば、金融引き締めのリスクを高める要因となろう。
【5月雇用統計の市場予想】
・非農業部門雇用者数変化:19万人(4月25.3万人)
・失業率 :3.5%(4月3.4%)
・平均時給(前月比) :0.3%(4月0.5%)
・平均時給(前年比) :4.4%(4月4.4%)
アメリカ非農業部門雇用者数変化、失業率、平均時給の推移
5月のFOMC以降、アメリカの株式市場では「人工知能(AI)」が一大テーマとなり、関連する大手ハイテク株が買われる状況が続いている。特に、アナリスト予想を大幅に上回る第2四半期の売上高見通しで強気の内容を示したエヌビディア(NVDA)の5月上昇率は、40%を超えている。
この動向を受け、ハイテク比率の高いナスダック100指数(NDX)の上昇幅が拡大している。FOMC以降の上昇率を確認すると、10%に迫る勢いである。
短期間で上昇幅が拡大していること、そして一部の大手ハイテク株のみが上昇相場のけん引役となっている状況を考えるならば、5月雇用統計で金融引き締めのリスクが高まる場合は、ナスダック100指数の調整要因(反落要因)となる可能性がある。
だが、下述べるとおりナスダック100指数の地合いは強い。それゆえ5月雇用統計が反落要因となる場合は、短期的な押し目買いを考えたい。
アメリカ株価指数のパフォーマンス
今の上昇相場には金利上昇の悪影響を跳ね除ける強さがある
筆者がナスダック100指数(NDX)の押し目買いを考える理由は、金利上昇の悪影響を跳ね除ける強さが今の上昇相場にあるからだ。
米金利と米国株の関係を考える上で重要となるのが、インフレの動向を考慮した実質金利との関係である。実質金利の上昇は、基本的に株式の下落要因である。特にハイテク株に代表されるグロース株(高PERの株式)にとって金利の上昇は下落要因となる。
では、アメリカの実質金利とハイテク株比率の高いナスダック指数のトレンドをチャートで確認してみよう。
下のラインチャートを見ると、今年の4月までは「実質金利の上昇/ナスダック指数の下落または横ばい」(チャート赤ゾーン)、「実質金利の低下/ナスダック指数の上昇」(チャート緑ゾーン)という関係にあることが分かる。
注目すべきは、今年の4月以降の動きである。アメリカの実質金利は米債利回りの上昇トレンドに連動して上昇幅が拡大している(チャート青ゾーン)。しかし、ナスダック指数も同時に上昇幅が拡大している(チャート青ゾーン)。この動向は、現在のナスダック指数には金利の上昇圧力を跳ね除ける強さがあることを示している。
しかも現在は、6月のFOMCで追加の利上げ観測が意識される状況にある。それでもナスダック100指数は上昇トレンドを維持している。
さらにテクニカルの面でも上値トライのシグナルが点灯していることを考えるならば、ナスダック100指数の下落局面では、短期的な押し目買いを考えておきたい。
ナスダック指数とアメリカ実質金利のチャート
ナスダック100指数のテクニカルポイントについて
テクニカルの面でもナスダック100指数(NDX)の上値トライのシグナルが点灯している、と指摘した。この点を週足チャートで確認してみよう。
下の週足チャートをみると、ナスダック100指数の下落トレンドは21年11月下旬から始まったことが分かる。何度か調整の反発は見られたが、22年10月に10,440レベルで底を打つまで下落が続いた。
しかし、23年に入ると状況が一変していることが分かる。13週MAがサポートラインとなり、22年8月の戻り高値13,720レベルを難なく突破。その勢いを維持し、21年11月からの下落トレンドを象徴するレジスタンスラインをも大陽線での上方ブレイクに成功した。
ナスダック100指数のチャート
そして日足チャートで直近のトレンドを確認すると、短期サポートラインを形成しながら上昇幅が拡大している。MACDも上昇相場の強さが増していることを示すトレンドにある。
ナスダック100指数のチャート
押し目買いのチャートポイント
ナスダック100指数(NDX)が反落する場合、どの水準で押し目買いのタイミングをはかるべきか?この点について下の日足チャートを確認すると、いくつかのポイントが見えてくる。
ひとつは、節目の14,000ポイントである。先週25日と26日の動きから、この水準では”サポート転換”の兆しが見られる。
ナスダック100指数が14,000ポイント以下の攻防となる場合は、22年8月の戻り高値13,720ポイントがサポートへ転換するかどうか?この点を確認したい。この水準の上には現在、10日MA(26日時点で13,743レベル)が推移している。また、先週26日に付けた高値14,329ポイントを基準に考える場合、13,707ポイントの水準がフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準にあたる。これらテクニカルの動向も重要する場合、13,720ポイント前後を重要なサポートポイントと想定しておきたい。
ナスダック100指数が13,720ポイントを完全に下抜ける場合は、13,700割れを警戒したい。実際に13,700下抜ける場合は、短期サポートラインの攻防が焦点として浮上しよう。現在、このラインに沿って21日MA(26日時点で13,470レベル)が推移している。
ナスダック100指数のチャート
なお、ナスダック100指数が14,000ポイント以上の攻防を維持する場合は、下の1時間足チャートで示したフィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防に注目したい。23.6%戻しの水準では”サポート転換”の兆しが見られる。
ナスダック100指数のチャート
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