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【IG米国株レポート】 今週の注目材料は雇用関連指標 / 個別ではテスラ株の動向が焦点に

5月のPCEデフレーターで、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。しかし、今週発表される各雇用関連の経済指標、特に6月の雇用統計で労働市場のタイトな状況が確認される場合は、「インフレが鈍化しない」リスクが意識されるだろう。強い雇用統計は米株高の調整要因(反落要因)となる可能性がある。一方、ナスダック100指数の上昇トレンドを支えているテスラ株にとっては上昇要因となる可能性がある。その理由は?詳細はIG米国株レポートをご覧ください。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

サマリー

・5月のPCEデフレーターで、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることが確認された
・今週の注目イベントは雇用関連指標となろう。特に6月の雇用統計の内容が注目される
・個別株では、第2四半期の納車台数が過去最高となったテスラ株の動向に注目したい
・今週のテスラ株、注目ポイントは280ドルの突破とこの水準の “サポート転換”にある


緩やかに鈍化の傾向をたどるアメリカのインフレ

米商務省が先月30日に発表した5月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、前月比と前年同月比でともに予想以下の結果となった。

また、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数の前月比は0.4%から0.3%へ、前年同月比は4.7%から4.6%へそれぞれ低下した。

連邦準備制度理事会(FRB)の物価目標「2%」からは未だ高い水準でインフレ率は高止まりしている。しかし、前年同月比のラインチャートを見ると、アメリカのインフレが緩やかな鈍化の傾向をたどっていることを示している。

アメリカPCEデフレーターの推移

アメリカPCEデフレーターの推移 米商務省とブルームバーグのデータをもとに作成 / 月次:2022年以降

今週の注目材料は雇用関連指標

アメリカのインフレは鈍化の傾向にある。しかし、今後のインフレ動向に大きな影響を与える労働市場でタイトな状況が続けば、今度は「インフレが物価目標の2%に向かって鈍化しない」リスクが米国市場で意識されるだろう。

今週は、6月のADP雇用統計、週間の新規失業保険申請件数、5月の雇用動態調査(JOLTS)そして6月の雇用統計と多くの雇用関連指標が発表される。

そのなかで最も注目されるのが、7日に発表される6月の雇用統計である。今回の市場予想は以下のとおりである(7月5日時点)。

6月雇用統計の市場予想

6月米雇用統計の市場予想 出所:ブルームバーグ(7月5日時点)

6月米雇用統計の焦点は賃金の動向

6月の米雇用統計で注目すべきは、平均時給(賃金)の動向である。前年同月比では、2年ぶりに低い伸びとなることが予想されている。

5月PCEデフレーターでインフレの鈍化傾向が確認されたタイミングで、賃金の伸びが抑制傾向にあることも確認される場合は、インフレリスクと米利上げの長期化に対する市場参加者の懸念が一時的に後退することが予想される。

非農業部門雇用者数変化と失業率の内容にもよるが、これらが予想の範囲におさまる場合は、米金利の低下と株高が予想される。

一方、賃金が予想外に伸びる場合は、非農業部門雇用者数変化と失業率が予想どおりの内容となっても、米利上げの長期化懸念で米株高の調整要因(反落要因)となる可能性がある。

賃金の伸びだけでなく、非農業部門雇用者数変化が予想以上に増加しかつ失業率が低下する場合は、米債市場で利回りの上昇幅が拡大することが予想される。このケースでは、米株高の調整圧力(反落の圧力)が最も高まることが予想される。

アメリカ雇用統計の推移

アメリカ雇用統計 過去の推移 米労働省とブルームバーグのデータをもとに作成 / 月次:2022年以降 / 緑のバーチャートと点:6月の市場予想


一方、6日に発表される週間の新規失業保険申請件数の推移を確認すると、4週間の移動平均でならしたトレンドでは、失業保険の申請者数が増加の傾向にある。

一方、5月の雇用動態調査(JOLTS)は22年以降、低下のトレンドにある。

連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ政策にもかかわらず、アメリカの雇用市場は依然として堅調である。しかし上2つの指標のトレンドを見ると、FRBによる利上げ政策の影響がジワリと効き始めていることがうかがえる。


米株高のけん引役が交代

今年前半はAIが一大テーマとなり、これに関連した一部の主力株が米国株の上昇トレンドをけん引している。しかし、6月はその主力株の立場に変化が見られた。

6月は、これまで米株高をけん引してきた半導体大手のエヌビディア(NVDA)やメタ(META)が失速した。その代わりにテスラ(TSLA)がエヌビディアの上昇率を、時価総額で初の3兆円に達したアップル(AAPL)がメタのそれを上回っている。

一方、ナスダック100指数(NDX)のパフォーマンスを下回っているのは、マイクロソフト(MSFT)とグーグルの親会社でアルファベット(GOOGL)である。アルファベットに至っては、AI競争で後塵を拝していることが嫌気され、6月のパフォーマンスはマイナスとなった。

将来の成長性に疑問符が付けば、アルファベットのような大手ハイテク企業であっても株安に直面する厳しい現実を、下のパフォーマンスチャートは示唆している。

主力株とナスダック100指数のパフォーマンスチャート:6月の動向

主力株とナスダック100指数のパフォーマンスチャート:6月の動向 基準日:5月31日(6月の騰落率)

テスラ株の動向に注目

テスラ、第2四半期の納車台数は過去最高に

4日の米国株式市場は独立記念日で休場だった。よって、今週の米国株は5日以降、上下に大きく振れる展開が予想される。

6月以降のIG米国株レポートでは、上昇幅が拡大し続けているナスダック100指数(NDX)に注目してきた。今週、そのナスダック100指数のトレンドに大きな影響を与える可能性のある銘柄として、テスラ株(TSLA)の動向に注目したい。

そのテスラは今月2日、第2・四半期(4-6月期)の納車台数が前期比で10.2%増、前年同期比では83%増の46万6,140台だったと発表した。アナリスト予想の44万5,000台を上回り、かつ過去最高となった納車台数の伸びが好感され、3日の米株市場で同社の株価は6.9%上昇した。

また、中国乗用車協会(CPCA)が4日に発表したデータによれば、テスラの第2・四半期における中国製EV販売台数は24万7,217台で過去最高となった。


テスラ株、今週の注目ポイントは?

下の日足チャートをみると、5月以降、テスラ株の上昇幅が拡大していることが分かる。

240ドルでの “サポート転換” を経て、現在は280ドルの攻防となっている。

ストキャスティクスでは、短期的な相場の過熱感(買われ過ぎ)の状況がうかがえる。しかし、予想を上回る納車台数の伸びが確認されたタイミングで、下で詳述する今週の雇用関連指標で景気の先行き不安が後退する場合、テスラの株価は280ドル以上の攻防へシフトすることが予想される。

テスラ株のチャート

テスラ株のチャート IGチャートの日足:23年4月以降


米国の実質金利とテスラ株の動き

6月の米雇用統計を含めて、今週発表されるアメリカの各雇用関連指標で労働市場のタイトな状況が確認される場合は、米長期金利の押し上げ要因となろう。

米長期金利の上昇幅が拡大すれば、米国株全体にとって調整売りの材料になり得る。

しかし米長期金利の上昇は、テスラ株(TSLA)にとって必ずしも売り要因とはならないだろう。

この点について、5月以降の実質金利とテスラ株のトレンドを下のラインチャートで確認すると、実質金利が上昇基調へ転じても、テスラ株はその影響を跳ね除け、むしろ上昇幅が拡大していることが分かる(上の日足チャートも参照)。

この状況(依然として一部の主力株に資金が集まりやすい状況が続いていること)を考えるならば、今週の各雇用関連指標で労働市場のタイトな状況が確認される場合、現在のテスラ株は連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ政策が長引くリスクよりも、景気不安の後退の方が強く意識される公算が大きい。

現在のテスラ株は、ナスダック100指数(NDX)の上昇をけん引する役割を担っている。ゆえに同社の株価が今週、レジスタンスである280ドルを完全に突破し、かつこの水準が “サポート転換” となる場合は、他の主力株が総崩れとならない限りナスダック100指数の上昇トレンドを支えることになると予想する。

米国の実質金利とテスラ株のチャート

米実質金利とテスラ株のチャート ブルームバーグのデータをもとに作成 / 日足:年初来

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