米国株に立ちはだかる「FRBの壁」、エヌビディア決算が株高維持の鍵に、焦点は業績見通し
パウエルFRB議長は14日の講演で「利下げを急ぐ必要はない」と述べた。パウエル議長の発言を受け、12月の追加利下げシナリオの修正が進み、米金利が高止まりする可能性が高まっている。突如として立ちはだかる「FRBの壁」。この壁を突き破り、米国株は年末に向けて株高を維持できるのか?今週その鍵を握るのが、20日のエヌビディア決算となろう。
記事のポイント
・米国株に立ちはだかる「FRBの壁」
・低迷するマグニフィセントセブンと主力の半導体株
・株高維持の鍵を握るエヌビディアの決算、業績見通しが焦点に
・エヌビディアの株価見通し
米国株に立ちはだかる「FRBの壁」
年末高に向かって順調に進んでいた米国株に先週、突如として株高の進行を止める「FRBの壁」が立ちはだかった。その壁とは、米利下げパスの不透明感である。きっかけは、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言だった。以下にその影響をまとめた。
・先週の主要なアメリカ株価指数は下落して終えた。特に15日のきつい下げの主因となったのが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言だった
・経済が堅調さを維持するなかパウエルFRB議長は14日の講演で、今後の利下げについて慎重な姿勢を示した。議長の発言を受け、短期金融市場では追加の利下げシナリオが急速に修正され、12月の利下げ確率が40%台まで急低下している。一方、米債市場では金利が高止まりしている
・ハイテク株比率の高いナスダック指数が最も下落した状況は、米利下げパスの不透明感とそれに伴う米金利の高止まりの可能性を意識した動きと考えることができる
アメリカ株価指数の週間騰落率:11月11日~15日の週
ブルームバーグのデータで筆者が作成
低迷するマグニフィセントセブンと主力の半導体株
これまでの米株高をけん引してきたのが、大手ハイテク銘柄が中心のマグニフィセントセブンと主力の半導体株だった。しかし米国の選挙以降、これら主力株のパフォーマンスはさえない。主力株の低調なパフォーマンスからも、米金利が高止まりするリスクが株式市場で意識され始めていることを示唆している。
・アメリカの大統領選挙と議会選挙以降、「トランプトレード」の恩恵を受けているのは、共和党のトランプ候補を支持したイーロン・マスク氏率いるテスラ(TSLA)のみである。エヌビディア(NVDA)を含め他のマグニフィセントセブン銘柄の上昇は抑制されている
マグニフィセントセブンと株価指数の騰落率:11月6日~15日までの動向
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ブルームバーグのデータで筆者が作成
株高維持の鍵を握るエヌビディアの決算、業績見通しが焦点に
パウエルFRB議長の発言をきっかけに株高の進行を止めた「FRBの壁」。米国株は、この壁を突き破ることができるのかどうか?今週その鍵を握るのが、20日に発表されるエヌビディア(NVDA)の決算となろう。焦点を以下にまとめた。
第3四半期の見通し
今週20日に生成AI(人工知能)ブームをけん引しているエヌビディアが24年8〜10月期(第3四半期)の決算を発表する。ブルームバーグがまとめたコンセンサス予想では、売上高が前年同期比で83.3%増の332億ドル、1株利益(EPS)は前年同期の0.40ドルから0.74ドルに増加する見通しにある。主力のデータセンター部門の売上高は291億ドルと、前年同期比で約2倍の伸びが見込まれている。
エヌビディアの決算:24年3Q以降のコンセンサス予想
ブルームバーグのデータで筆者が作成
※青の棒グラフ:3Qコンセンサス、赤棒グラフ:4Qコンセンサス
焦点は第4四半期の業績見通し
決算の焦点が業績見通し(ガイダンス)にあることは、第1四半期(24年11月-25年1月期)の売上高見通しがコンセンサス予想を下回ったアプライド・マテリアルズの株価下落が示唆している(上の半導体株の騰落率チャートを参照)。
エヌビディアのデータセンター向けGPU「Hopper」 の堅調な需要が第3四半期の増収増益に貢献することが見込まれている。また、堅調なHopperの需要は、第4四半期(24年11月-25年1月期)のガイダンスを引き上げる可能性につながるとの見方もある。
ブルームバーグがまとめた第4四半期のコンセンサス予想では、売上高が前年同期比で67.6%増の約370.5億ドル、営業利益が同比61.6%増の238.4億ドルと増収増益の予想にある(上の赤棒グラフを参照)。
今回のガイダンスでは、第4四半期の出荷が見込まれている次世代GPU「ブラックウェル」の需要見通しも焦点となろう。エヌビディアによれば、2024年の第4四半期に数十億ドル規模の出荷を予定しているという。
日経新聞は18日、米ネットメディアのジ・インフォメーションの記事を引用し、ブラックウェルの内部で過熱する問題が発生し納入に遅延の懸念が出ていると報じた。詳細は不明だが、ブラックウェルの生産と需要の動向は、今後のエヌビディアの収益に大きな影響を与える。ゆえに、決算説明会ではブラックウェルの生産の進捗状況と需要の見通しが焦点の一つとなろう。ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)がこれらの点についてどのような見解を示すのか?この点も株価に影響を与えるだろう。
エヌビディアの株価見通し
エヌビディア(NVDA)の株価は現在、右肩上がりのトレンドチャネル内で推移している。この状況で市場の期待に応えるガイダンス、特にブラックウェルに関する強気の需要見通しが示される場合は、株価の上昇に弾みがつこう。
焦点は、レジスタンスラインとして相場の上昇を止めている150.00ドルの突破である。11月8日の高値149.77ドルの突破は150ドル台へ上昇するサインと捉えたい。株価が150ドル台へ上昇する場合は、この水準がサポートラインへ転換するかどうか?を確認したい。150ドルがサポート転換すれば、新たな上値レンジでの攻防が予想される。
日足のMACDはデッドクロスへ転じている。モメンタムも強気相場の勢いが後退していることを示唆している(いずれも下の日足チャート、黒矢印を参照)。第3四半期の決算がコンセンサス予想を上回っても、ガイダンスの内容が投資家を失望させる場合、株価は下落することが予想される。
決算が株安の要因となれば、131ドルの攻防に注目したい。131.12ドルはフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。また、先週15日時点で50日線が130.97ドルまで上昇している(下の日足チャート、青ラインを参照)。テクニカルの面で131ドルを重要なサポートラインと想定しておきたい。
株価が131ドルを難なく下方ブレイクすれば、75日線を視野に下落幅の拡大を警戒したい(下の日足チャート、赤ラインを参照)。この移動平均線は15日時点で125.87ドルまで上昇している。
エヌビディアの株価チャート:日足 24年7月以降
出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。