データ主導経済がもたらす雇用の変化とは?
米国ウィークリー 2019年9月10日号
- データ主導経済下の企業の競争力強化に伴う動きがマクロ経済を変質させているのだろうか?9/3週の米国株式市場は、9/3発表のISM製造業景況感指数(8月)が3年ぶりに50を割り込んだことを受けて9/3にNYダウで25,978ドルまで下落したが、9/4以降に立て続けに現われた好材料に後押しされて9/6にNYダウで26,860ドルと8/1以来の高値を付ける強い動きとなった。9/4発表の財新中国非製造業PMI(8月)が50を上回ったこと、香港政府による「逃亡犯条例」の改正案撤回、および英国の「合意なき離脱」回避の可能性の高まりなどの好材料が集中した。更に9/5発表のISM非製造業景況指数(8月)が56.4と市場予想を大きく上回り、9/6発表の8月雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったものの同日のパウエル議長発言と併せて0.25%ポイントの利下げ期待を高めるものと捉えられ、株価上昇を後押しした。米10年国債と2年国債利回りの「逆イールド」も解消されるなど市場に安堵感が拡がっている状態と言えよう。
- ISM製造業景況感指数(8月)およびISM非製造業景況感指数(8月)の個別項目である「雇用」は、製造業が前月比4.3ポイント低下の47.4、非製造業が前月比3.1ポイント低下の53.1と大幅低下が目立つ。8月雇用統計では製造業の2019/1-8の就業者数増加幅(月平均)が前年同期の2万2千人から6千人に減少し、小売業もネット通販台頭から2019/1-8で合計8万人縮小するなど楽観視できない状況と言える。しかしながら、データ主導経済において企業がプラットフォームに大量かつ多様なデータを収集してAIや機械学習・深層学習などを駆使し、ビジネス効率化によって競争力を高めていけば、雇用者数は増加しにくいのが道理であろう。プラットフォーマーとしての地位を確立した企業は生産性を高め、賃金上昇の余地も生まれる。雇用統計における平均時給伸び率の高さと製造業や小売業の就業者数伸び悩みが両立する背景には、このような企業の競争力強化に伴う大きな構造変化があるものと考えられる。
- 9/6にNY州など複数の州と地区がフェイスブック(FB)を反トラスト法違反で調査すると発表するなど、巨大プラットフォーマーとして覇権を握ってきた「GAFA」への逆風の兆しが見える。その一方、IBM(IBM)のようにRed Hatの買収によりオープンソース技術を通じて世界のプラットフォーム総取りを狙う「ポストGAFA」の動きも出始めている。企業間競争の行き着く先は、一部の企業への富の集中とビジネス効率化の代償としての雇用減少なのかも知れない。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(9/6現在)
■主な企業決算の予定
●9月12日(木):クローガー、ブロードコム、オラクル
■主要イベントの予定
●9月10日(火)
・アップル・イベント開催(カリフォルニア州クパチーノ)
・フランクフルト国際自動車ショーのプレスデー(11日まで、一般公開は14-22日)、英失業率(5-7月)
・求人件数(7月)
・中国CPI(8月)、中国PPI(8月)、中国アリババの馬雲会長が引退
●9月11日(水)
・「一帯一路」香港サミット(12日まで)
・PPI(8月)、卸売在庫(7月)
・OPEC月報
●9月12日(木)
・欧州中央銀行(ECB)政策金利発表・ドラギ総裁記者会見、ユーロ圏鉱工業生産(7月)、独CPI(8月)
・トルコ中銀政策金利発表、マレーシア中銀政策金利発表
・OPEC+会合(WECの一環)、国際エネルギー機関(IEA)月報
・2020年大統領選挙に向けた民主党候補者討論会(ヒューストン)
・CPI(8月)、新規失業保険申請件数(9月7日終了週)、財政収支(8月)
●9月13日(金)
・中国市場は祝日のため休場
・ユーロ圏財務相会合
・輸入物価指数(8月)、小売売上高(8月)、ミシガン大学消費者マインド指数(9月)、企業在庫
(7月)
●9月16日(月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(9月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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