米国株、AIに熱狂 S&P500再浮上 日経平均の史上最高値誘発
アメリカのS&P500の上昇はマグニフィセント・セブン頼みの側面も。7社への期待が冷めれば米国経済への不安が材料視されかねない。
アメリカの株式相場が人工知能(AI)ブームに沸いている。S&P500種株価指数の23日の終値は1週間前比で1.66%高となり、2週ぶりに週次での値上がりに復帰。AI開発向け半導体部門が急成長しているNVIDIA(エヌビディア)の好決算を受けた22日には、S&P500の上昇率が約1年1か月ぶりの高さとなった。AIをめぐる期待は日本市場にも波及し、日経平均株価の34年ぶりの史上最高値更新を誘発している。ただ、S&P500の高値は一部の巨大ハイテク企業頼みの側面があるほか、米国の長期金利(10年物米国債利回り)の高さといった不安も拭えず、脆さも潜んでいそうだ。
S&P500が1週間で1.66%上昇し、史上最高値を再び更新
S&P500(SPX)の23日の終値は前日比0.03%高の5088.08で、2日連続で史上最高値を更新。1週間前比での伸び率は1月8-12日週(1.84%)以来の大きさとなった。最大の要因はエヌビディアが21日の取引時間終了後に発表した2023年11月-2024年1月期決算が予想を大きく超えたこと。翌日のエヌビディアの株価(NVDA)は16.40%高となり、S&P500も2.11%高となった。S&P500の伸び率は2023年1月6日(2.28%高)以来の大きさだ。
エヌビディア決算の余波は日本市場にも波及。22日の日経平均(N225)の終値は3万9098.68円となり、1989年12月29日の3万8915.87円を上回る史上最高値となった。前週末比では611.44円の値上がりで、2024年に入ってからの8週間で約5600円も上昇する驚異的なペースだ。エヌビディアの好決算が日本の半導体企業に対する期待も高めたことが22日の日経平均の記録更新に向けた最後の一押しとなった。
アメリカのマグフィニセント・セブンはAI投資に注力
ただ、日米の株価上昇は、米国のAIブームへの期待に支えられている感が強い。米国の株式相場を引っ張ってきたエヌビディアを含む「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社はいずれもAI関連投資に積極的だ。マイクロソフト(MSFT)やアマゾン・コム(AMZN)、アルファベット(GOOGL)は自社のクラウドを通じたAIサービスの拡充に注力しているほか、メタ・プラットフォームズ(META)も独自のAIモデルを公開している。テスラ(TSLA)やアップル(AAPL)も自社の製品開発にAIを活用している。
この7社の時価総額がS&P500構成銘柄全体の時価総額に占める割合は23日終値時点で28.5%。2022年末段階の19.5%から大きく上昇している。米国株式市場では株価上昇の7社以外への広がりが期待されてきたが、依然として高止まりの状況が続いている。
また、米国の巨大ハイテク企業の業績は密接にからみあっている実態もありそうだ。エヌビディアのコレット・クレスCFOは21日の決算会見で、AI開発向け半導体が含まれるデータセンター部門の11-1月期の収入について「大規模なクラウドサービス事業者からの収入が半分以上を占めた」と述べた。クラウド事業者の詳細は明かされていないが、マイクロソフトやアマゾン、アルファベット向けが多くを占めているとみられる。またエヌビディアの11-1月期の総収入(221.08億ドル)の約55%は米国で稼ぎ出されており、やはり米国の巨大ハイテク企業の存在感がうかがえる。
FOMCの議事要旨ではFRBの利下げへの慎重姿勢も
一方、米国の株式市場が待ち望む米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げは徐々に遠のいている。21日に公開された1月30、31日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、FOMC参加者の利下げへの慎重姿勢が鮮明になった。「ほとんどの参加者は金融政策の状態を急激に緩和させることのリスクに注意を払っている」などとされ、物価上昇率の低下傾向が反転することへの懸念は強いようだ。LSEGのデータによると、21日の長期金利は4.323%まで上昇し、11月30日(4.35%)以来の高さとなった。長期金利の高さは企業の資金調達負担を高めるほか、企業が将来に生み出す価値への評価も低くし、株式の投資先としての魅力を下げる要因となる。
物価上昇の根強さという米国経済の懸念が消えない中、長期金利の高止まりや経済の失速というリスクは拭えない。AIブームの中でS&P500をめぐるムードは明るいものの、熱狂が冷めるリスクも残っていそうだ。
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