ポンドドルとユーロドルの展望
強い米経済指標を受けても米債市場では利回りの低下基調が続いている。この動きを考えるならば、外為市場では調整の反発を挟みながら米ドル売りが続くことが予想される。特に対欧州通貨での動きに注目したい。ポンドドルとユーロドルの注目ポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
ポンドドルとユーロドルの展望
【サマリー】
・インフレリスクの後退を意識し米長期金利は低下基調を維持
・米ドル相場は売り買い交錯も対欧州通貨での下落トレンドが続く
・ポンドドルが1.20台へ上昇する場合、次の焦点は200日線のトライ
・ユーロドルは200日線の突破が焦点に
米債市場ではインフレリスクの後退を意識する状況が続く
16日の米債市場ではインフレリスクの後退を意識する状況が続いた。10年債利回り(長期金利)は10月5日以来となる3.66%台まで低下した。ドル円(USDJPY)のトレンドに影響を与えている5年債利回りは、一時3.2%台まで低下する局面が見られた。
10月の米小売売上高は予想を上回る強い内容だった(前月比1.3%増)。今回の結果は米金利の反発要因になり得たが、実際には上で述べとおり米金利が低下基調を維持した。この反応は、インフレリスクの後退が米債市場のメインテーマであることを示唆している。
ゆえに外為市場では、調整の反発を挟みながら米ドル安のトレンドが続くことが予想される。
米金利の動向
対欧州通貨での米ドル安が続く
ポンドドル(GBPUSD)
10月の英国消費者物価指数(CPI)は前年同月比で11.1%と、41年ぶりの高水準となった。
第3四半期の国内総生産(GDP)が前期比でマイナス成長(-0.2%)となったことを考えるならば、高インフレの長期化により英国経済はリセッション(景気後退)のリスクに直面している。
今年の5月以降、ポンド相場は利上げよりも景気の先行きリスクの方が材料視され続けてきた。この状況を考えるならば、10月CPIの結果はポンド売り要因となってもおかしくなかった。
しかしポンドドル(GBPUSD)は現在、短期レジスタンスラインと半値戻しの水準1.1830レベルの突破に成功し、1.20トライの展開となっている。この堅調地合いは、現在の米ドル売りの強さを示す動きと言える。
ポンドドルは昨日、半値戻しの水準(1.1831レベル)でサポートされた。米ドル安を土台とした地合いの強さを示すシグナルである。トレンドフォローを軸に考えるならば、ポンドドルの焦点はフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準1.2176レベルのすぐ上で推移している200日線(MA)をトライするかどうか?この点にあろう。
この移動平均線(200日線)は、今年の1月中旬にレジタンスラインとして相場の上値を止めた経緯がある。それ以降、ポンドドルは一度もこの移動平均線を突破することなく下落トレンドを形成してきた。ゆえに200日線の突破は、ポンドドルの下落トレンドが終焉するシグナルの一つとなり得る。
ポンドドルのチャート
ユーロドル(EURUSD)
同じ欧州通貨のユーロドル(EURUSD)も堅調地合いを維持している。
通貨オプション市場のリスクリバーサルの動きを確認すると、10月以降ユーロプットの勢いが後退すると同時に、1週間(1W)のそれは一時ユーロコールへ転じる局面が見られた。
ポンドドルと同じく、景気の後退リスクはユーロドルの重石である。しかし現在はこの懸念よりも、10月中旬以降の株式市場の反発と、11月の「インフレリスクの後退→金利の低下」による米ドル売りの方が意識される状況が続いている。上で述べたリスクリバーサルのトレンドは、米ドル売りによるところが大きい。
ユーロドルのリスクリバーサル
ユーロドルのトレンドを日足チャートで確認すると、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準(1.0360レベル)をも突破し、ポンドドルに先駆けて200日線(MA)の攻防となっている。日足ローソク足の上ヒゲでは、この移動平均線を突破する局面が見られる。
米ドル安にサポートされユーロドルがローソク足の実体ベースで200日線の突破に成功する場合は、1.06レベルまで上昇幅が拡大する可能性がある。
また、2022年を通してユーロドルは200日線より下の水準で推移し続けている。ゆえに200日線の突破は、ユーロドルの下落トレンドが終焉するシグナルの一つとなり得る。
ユーロドルのチャート
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