7月米雇用統計の焦点 / ドル円の注目ポイント
英中銀は第4四半期から来年末にかけての景気後退の可能性を示唆。米債市場では将来の景気後退を意識した動きが続いている。今晩の7月米雇用統計では賃金の動向が焦点に。10日線で戻りが止められたドル円の注目ポイントは?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
7月米雇用統計の焦点
【サマリー】
・景気後退懸念で米欧の利回りが低下
・7月米雇用統計の焦点について
・10日線で戻りが止められたドル円は再下落を警戒
・根強い景気後退懸念 米金利が再び低下
4日の金融政策委員会(MPC)でイングランド中央銀行(BoE、以下では英中銀)は、27年ぶりとなる0.5ポイントの大幅利上げを決定した(決定は8対1)。
このレポートでは、今回のMPCの焦点は利上げではなく、将来の見通しにあると指摘した。英中銀はインフレについて、今年の10~12月期に13%を上回る見通しを示した。前回の予想では、今年10月に11%を上回る見通しを示していた。一方、経済については、金融政策報告書で今年の10~12月期から景気後退(リセッション)に陥る見通しを示してきた。また、リセッションは来年末まで続くとの予想も示した。
今回の英MPCイベントを受け、英国の長期債利回りは一時1.81%台まで低下した。その後反発するもMPC前の水準を回復できずにいる。ドイツの長期債利回りも低下した。
欧州の主要金利の低下に追随し米債市場でも金利に低下の圧力が高まり、長期金利は再び2.7%を割り込んできた。米金利の低下は米ドル相場を圧迫した。
英独米の長期金利のチャート
6月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米2年債利回りの圧力も後退している。この動きも米ドル高圧力の後退要因となり得る。しかし、この動きが続くかどうか?は、今後の経済指標次第となろう。
米2年債利回りのチャート
・7月米雇用統計の焦点
今日は7月米雇用統計が発表される。雇用者数(非農業部門雇用者数)の動向は重要なファクターである。しかし、主要国の中銀が直面している喫緊の政策課題は、「インフレの抑制」である。この点を考えるならば、将来のインフレ動向に大きな影響を与える賃金の推移も米債市場のトレンドを左右する重要なファクターとなろう。
賃金(平均時給)の推移を確認すると、2020年からの平均4.72%に向かって下降トレンドにある。7月の予想(前年同月比)は4.9%。7月のデータでも下降トレンドの継続が確認される場合は、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)での0.75ポイント利上げの可能性が後退しよう。よって、米2年債利回りは低下で反応することが予想される。
問題は、賃金が予想外に上昇する場合である。このケースでは、米債市場でインフレの高止まりリスクが意識される可能性がある。賃金の上昇に加えて予想以上の雇用増も確認される場合は、0.75ポイントの大幅利上げの観測が高まることが予想される。よって、このケースでは米2年債利回りの上昇を想定しておきたい。
米国の賃金推移
米雇用統計後のドル円の展望
・ドル円は10日線がレジスタンスに
ドル円(USDJPY)のリスクリバーサル(25デルタ /1ヶ月)の推移を確認すると、ドル・コールのトレンドが急速に後退している。
このタイミングでドル円は昨日、10日線(MA)で戻りが止められた。この移動平均線は7月22日と27日にも相場の戻りを止めた経緯がある。今晩の7月雇用統計でドル円が上昇しても10日線の突破に失敗し続ける場合は、来週以降の反落リスクを警戒したい。
一方、7月雇用統計を受けてドル円が下落で反応する場合は、132.00のトライ&ブレイクを想定しておきたい。米金利の低下と米国株が同時に下落する(典型的なリスク回避相場となる)場合は、132円を完全に下方ブレイクする可能性がある。
ドル円が132円以下の攻防へシフトする場合は131.00をもブレイクし、100日線(EMA)の再トライが焦点として浮上しよう。
ドル円のリスクリバーサル
ドル円のチャート
・反発維持ならばフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目
7月雇用統計がドル円(USDJPY)の反発圧力を強める場合は、10日線(MA)の上方ブレイクを想定しておきたい。
このケースでは、直近高安の半値戻しの水準134.89レベルを突破できるかどうか?まずはこの点を確認したい。この水準の上方ブレイクは、135円台回復のシグナルと想定したい。
また、ドル円が10日線を上抜けた後、この移動平均線がレジスタンスからサポートへ転換する場合は、来週以降も反発基調が続く可能性が高まる。このケースでは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準135.95(136.00)および76.4%の水準137.26レベルのトライ&ブレイクに注目したい。
ドル円のチャート
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