円安急進 日銀の物価見通し上方修正も効果なし 米国物価上昇の過熱懸念
ドル円相場は26日に1ドル=156円台で取引された。日銀の植田和男総裁は利上げに慎重姿勢を示し、円売りの材料を提供した。
ドル円相場で円安が急進している。26日の東京市場では1ドル=156円台後半をつけ、25日終値から1円以上の円安が進んだ。日本銀行は26日に示した経済見通しの中で、2024年度の物価上昇率を2%台後半まで引き上げる一方、植田和男総裁は金融政策決定会合後の記者会見で利上げに慎重な立場を強調。ドル円相場に円売りの材料を提供した。また25日に発表されたアメリカの2024年1-3月期の物価指標では物価上昇率が予想を上回り、長期金利(10年物米国債利回り)の上昇を招いている。日米の金利差拡大が意識されやすい状況で、今後も円安圧力が強まることが想定される。
ドル円相場は156円台後半まで円安が進行
26日の東京市場のドル円相場(USD/JPY)は1ドル=155円台半ばで取引開始。正午すぎに日銀が決定会合で金融政策維持を決めたと伝わると、156円台まで円安が進行した。また午後3時30分からの植田氏の記者会見中にも円安が加速し、一時、156.82円をつけた。25日のニューヨーク市場の終値(155.65円)から、1.17円の円安ドル高が進んだ形だ。午後5時をすぎた直後に円を買う流れが強まり、瞬間的に154.96円を付ける場面もあったが、約30分後には156円台半ばまで売り戻された。
一方、日銀の発表内容には物価上昇見通しの強まりも感じられた。決定会合後に発表された「経済・物価情勢の展望」では2024年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の上昇率の見通しが2.8%とされ、1月時点の見通し(2.4%)から上方修正。2025年度と2026年度については1.9%とされた。植田氏は記者会見で、見通しに沿って物価が推移すれば「持続的・安定的な2%の物価上昇の実現にかなり限りなく近づく」と述べた。LSEGのデータでは、日本の長期金利は26日に一時0.935%まで上昇した。
日銀は物価見通しを引き上げも、植田総裁は利上げに慎重
ただ、植田氏は今後の物価動向を慎重に判断する姿勢も崩さなかった。見通しの引き上げは足元の原油価格上昇の影響が大きいと説明し、こうした一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率は2%に達していないと言及。円安による輸入物価の上昇に関しては、国内物価への波及の有無や、物価上昇が今後の賃上げ気運につながり、その賃上げコストが価格に上乗せされるかどうかといった経路について検討を続けるという。また、足元の輸入物価については、2021年から2022年にかけての動向と比べれば、「当時の急上昇というほどのものではない」とも述べている。
また植田氏は実際に利上げに踏み切る際には、「多様な影響を考慮する」必要性も指摘。住宅ローン金利などを通じて消費に影響が及んだり、金融機関が保有する有価証券の価値の低下が金融システムに影響を及ぼしたりする可能性を例示した。3月にマイナス金利政策などの大規模金融緩和策を終了させた日銀が、次の段階である利上げに踏み切るには時間がかかると感じさせる内容だった。
アメリカの1-3月期の物価上昇は予想を超える強さ
円安急進には米国経済の情勢も影響している。25日に発表された1-3月期の個人消費支出(PCE)物価指数では、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が前期比年率3.7%となり、7-9月期、10-12月期と続いた2.0%という低水準から急激に伸びた。LSEGがまとめた市場予想の3.4%も超えており、米国の物価上昇の根強さが米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを遅らせるシナリオが意識されている。25日の長期金利の終値は4.706%で、11月1日(4.791%)以来の高水準となった。
これに対して同時に発表された1-3月期GDPでは実質成長率が前期比年率換算1.6%となり、10-12月期の3.4%から大幅に減速。ただし個人消費は2.5%増と大きくは崩れておらず、輸入の増加や在庫調整が成長率を押し下げた側面が強かった。やはり米国経済の底堅さが物価上昇を招くとの見通しを強めたようだ。
日米ともに物価上昇の可能性が高まる中でも、長年にわたって物価上昇率の低迷に直面してきた日銀は利上げへのハードルが高い。日米の金利差は3.8%ポイント程度で3.5%ポイント程度だった3月末から拡大しており、今後も円安圧力として働く可能性がある。
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