騰勢強める英ポンド、7月CPIと追加利下げ期待、ポンド円の見通し
英ポンドが対米ドルで騰勢ムードにある。13日はILO失業率が予想外に低下したことで英国経済の底堅さがポンド相場の下支え要因となった。今日は7月の消費者物価指数(CPI)が発表される。年後半の利下げ期待に大きな影響を与えるだろう。CPI後のポンド円の展望は?注目のチャート水準は?
記事のポイント
・4-6月の英失業率が4.2%へ低下、景気の底堅さを示唆
・今日は7月の消費者物価指数(CPI)がポンド相場の変動要因に
・ポンド円はポンド買いと株高による円安で上値トライのムード
・ポンド円、目先注目しておきたいチャート水準について
底堅い英国経済
失業率が予想外に低下
英政府統計局(ONS)が13日に発表した4~6月の失業率(ILO基準)は4.2%と、市場予想の4.5%を下回った。
失業率が低下の基調へ転じた状況は、高インフレのなかでも英国経済が底堅さを維持していることを市場参加者に印象付けた。
英国 ILO失業率:2019年以降
近年、企業活動の動向を考えるうえで重要性が増している購買担当者景気指数(PMI)も英国経済の強さを示唆している。
23年8月を底に製造業の改善が続いている。23年11月以降、サービス業は景気判断の分かれ目である「50」を上回り続けている。これらの動きに連動し直近の総合指数は52.8と、サービス業と同じく23年11月以降、景気判断の分かれ目である「50」を上回り続けている。
英国 購買担当者景気指数(PMI):2021年7月以降
7月の消費者物価指数(CPI)
英国経済の底堅さが意識されるなか、今日は7月の消費者物価指数(CPI)が発表される。前年同月比では、今年初めてインフレが加速する予想にある。
より重要なのは、英中銀が重要視しているサービス価格である。市場予想では、6月の5.7%から5.5%へ鈍化する見通しにある(前年同月比)。
現状、短期金融市場では9月の利下げ確率が30%台まで低下している。一方、11月の利下げ確率は80%台まで織り込む状況にある。
前回の金融政策委員会(MPC)では、5対4の僅差で4年5カ月ぶりの利下げが決定された。それだけに7月のCPI、特にサービス価格でインフレの粘着性が確認される場合は、11月の利下げ期待を後退させる要因となろう。
堅調な経済が意識される状況で7月CPIが予想以上となる場合は、ポンド買いを想定しておきたい。
英国 消費者物価指数(CPI):23年7月以降(過去1年間)
ポンド円の見通しとチャート分析
対米ドルで騰勢ムードのポンド
13日の市場では失業率の低下が好感され、ポンドドル(GBP/USD)が上昇した。テクニカルの面では、50日線と21日線だけでなく、直近高安の半値戻しの水準1.2855レベルをも完全に突破した(下のチャート、緑矢印を参照)。
日足のRSIはゴールデンクロスへ転じ、強気モメンタムに勢いがあることを示唆している。一方、MACDもゴールデンクロスへ転じつつある。ゼロラインも上回りつつある。
この状況で、7月CPIが今年後半の利下げ期待を後退させる場合、ポンドドルは1.29台の攻防へシフトする展開を予想する。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準1.2900、そして76.4%水準1.2955の攻防が焦点として浮上しよう。
ポンドドル:日足 今年4月以降
出所:TradingView
円キャリーの解消と再燃
米国商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、7月上旬に18万枚超まで積み上がった非商業部門の円ネットショートのポジションが、直近で1.1万まで激減している。投機筋の円キャリー解消が具体的なデータで確認された。
今後注目すべきは、円キャリーの再燃である。
短期金融市場では、今夏の株安とその理由となった米国経済の先行き不安が意識され、「日銀は年内の追加利上げを見送る」との見方が強まっている。この状況は、円キャリーが再燃する可能性につながろう。
事実、円キャリー解消にともなう株安が一服して以降(8月5日以降)、株高と円安が同時に発生する状況にある。
非商業部門のポジション動向:円ネットショート
新たな上値水準の見極めが焦点に
景気の底堅さを意識した対米ドルのポンド高と、「株高→円安」を背景に円キャリーが再燃する可能性が示唆されている状況を考えるならば、目先のポンド円(GBP/JPY)は新たな上値の水準を見極める局面にある。
ポンド円は7月の中旬以降、レジスタンスのラインとして意識されてきた10日線を完全に突破している(下のチャート、青ラインを参照)。この状況で7月CPIがポンド買いの要因となれば、ポンド円は190円台を回復すると予想する。
上昇局面で注目したいチャート水準
今日以降、ポンド円(GBP/JPY)が190円の攻防へシフトする場合は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準190.80レベルの攻防に注目したい。このテクニカルポイントを難なく突破する場合は、明日以降200日線を視野に上昇幅の拡大を予想する(下のチャート、オレンジラインを参照、191.80前後)。
ポンド円が200日線を突破する場合、今月後半は194円台までの反発を想定しておきたい。テクニカルの面では、半値戻しの水準194.11レベルのトライが焦点となろう。短期レジスタンスラインと21日線の上方ブレイクは、ポンド円が194円を目指すシグナルと想定しておきたい(21日線は下のチャート緑ラインを参照、193.60台)。
ポンド円:日足 今年7月以降
出所:TradingView
反落の局面で注目したいチャート水準
一方、7月CPIでインフレの鈍化傾向が確認される場合は、ポンド売りを予想する。ポンド売りを受け、ポンド円(GBP/JPY)は10日線のトライと維持が焦点となろう(上のチャート、青ラインを参照)。この移動平均線は今日現在、187.20前後で推移している。
1時間足チャートにプロットした短期サポートラインとフィボナッチ・リトレースメント23.6%水準187.95の下方ブレイクは、ポンド円が10日線をトライするシグナルと想定しておきたい。
ポンド円が10日線をも完全に下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメントの攻防を中心にサポート水準を見極めることになろう。8月7日以降の高安で算出されるフィボナッチ・リトレースメント38.2%水準の攻防では、187円の維持が焦点となろう。
ポンド円が上のテクニカルポイントまで下落する場合は、2円以上下落したことになる。今日の下落局面では、187円の維持が下値の焦点となろう。
明日以降、ポンド円が186円台の攻防となる場合は、「サポート転換」を意識する半値戻し186.20レベルのトライが焦点として浮上しよう。
1時間足のストキャスティクスは買われ過ぎの水準へ到達し、デッドクロスへ転じている(下のチャート、赤矢印を参照)。RSIでも同じ状況が確認される場合は、短期サポートラインのトライを意識したい。
ポンド円:1時間足 今月7日以降
出所:TradingView
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