NY金価格が強気相場を維持 FRBの利下げ、ドル安の進行、不穏な中東情勢を意識
ゴールド(金価格)が上昇している。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月以降、緩和サイクルへ転じる可能性が高いことに加えて、中東情勢の緊迫化も金価格の押し上げ要因となっている。調整売りをこなしながら金価格は、新たな上値を目指す展開が続くと予想する。
記事のポイント
・金価格の上昇は、FRBの利下げと米ドル安に支えられている
・中東情勢の緊迫化も金価格の下支え要因となろう
・金価格の焦点は、新たな上値水準の見極めにある
・金価格の反落局面では、2つの下値水準の攻防に注目したい
FRBの利下げと米ドル安の進行
今年末までに1%超の利下げを意識する状況に
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週23日、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した。
利下げについて、「The time has come for policy to adjust(政策を調整する時が来た)」と述べ、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、緩和サイクルへ転じることを示唆した。
パウエルFRB議長と同じ言い回しでサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁も26日、利下げの時期が来たと述べた。また、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁はインフレの上振れリスクにふれつつも、利下げの支持を表明した。
FRBが利下げ政策へ舵を切ることは、もやは既定路線である。問題はそのペースにある。
短期金融市場では、今年12月末までにパウエルFRBが政策金利を4.3%前後まで引き下げることを織り込み始めている。今年のFOMCは残すところあと3回。そして、現状の政策金利は5.25~5.50%。短期金融市場の見通しが正しいとすれば、パウエルFRBは残り3会合のいずれかで、0.5ポイントの大幅利下げを行うことになる。
今の段階で短期金融市場の織り込み状況は、行き過ぎの感が否めない。しかし、パウエルFRBが大幅利下げを行う可能性を市場が意識している点は重要である。金価格のトレンドを左右する米ドル相場の重しとなるからだ。事実、下で述べるとおりドル指数(DXY)の下落幅が拡大している。
短期金融市場が想定する政策金利の予想推移
※チャートと本文の訂正(9月3日)
短期金融市場が織り込む政策金利の水準を4.0%から4.3%へ修正しました。
米ドル安の進行
パウエルFRBは9月のFOMC以降、緩和サイクルへ転じる可能性が高い。外為市場ではこの点が早くも意識され米ドル安が進行している。
米ドル相場のトレンドを示すドル指数(DXY)は昨日、100.53レベルまで下落し、昨年12月の安値100.61レベルを一時下方ブレイクした。
7月以降、米ドル相場は上昇から下落のトレンドへ転じている。この動きに連動し、金価格の上昇幅が拡大していることが分かる(下のチャートを参照)。
パウエルFRBの利下げペース対して市場が抱く思惑は、今後発表される経済指標で変わるだろう。今後発表される重要指標で景気後退の懸念が再び高まる場合は、9月FOMCで0.5ポイント利下げを決定する可能性が浮上しよう。
いずれにせよ、利下げペースに関する市場の織り込みが揺れ動く可能性を考えるならば、米ドル相場は調整の反発を挟みながら下落トレンドを維持する公算が大きい。米ドル安の進行は金価格の下支え要因となろう。
ドル指数と金スポット価格の動向:日足 2024年5月以降
再び緊迫化する中東情勢
イスラム組織ハマスは25日、パレスチナ自治区ガザの停戦協議で仲介国が提示した調停案を拒否すると表明した。同日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル対し、数百発のロケット弾と無人機ドローンで攻撃した。イスラエル軍は約100機の戦闘機でレバノンの標的を攻撃したと発表し、10カ月以上にわたる戦闘のなかでも最大規模の衝突となった。
中東情勢が再び悪化している状況は、安全資産としての金の投資妙味を高めるだろう。事実昨日のNY金先物価格(12月物)は上で述べたFRBの利下げと中東リスクが意識され、前週末比8.9ドル高の1トロイオンス2555.2ドルと、過去最高値を更新した。
金スポット価格のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・2,565:エクステンション161.8%
・2,543:エクステンション100.0%
・2,530:8/20、8/26の高値水準
下値の水準(サポート)
・2,505:リトレースメント38.2%
・2,498:半値戻し
・2,480:サポート水準
金価格、目先の見通し
2つの上値水準
ゴールドは先物の価格だけでなく、スポットの価格(XAU)も強気相場を維持している。昨日は高値2,526ドルまで上昇する局面が見られた(IG提供の価格)。今月20日の市場では高値2,531ドルで上昇が止められた。昨日の動向も考えるならば、2,530ドルを目先のレジスタンスと想定しておきたい。
今日以降も金スポット価格が上昇トレンドを維持し、2,530ドルを完全に突破する場合は、2つのフィボナッチ・エクステンションの攻防に注目したい。
ひとつは100%水準の2,543ドル、もうひとつは161.8%水準の2,565ドルである。後者のテクニカルラインを突破する場合は、2,600ドルが視野に入ろう。
金スポット価格:日足 24年6月下旬以降
出所:TradingView
2つのサポート水準
本レポートの掲載時点で、1時間足のストキャスティクスとRSIは調整の反落の可能性を示唆している。今日の8月消費者信頼感指数などの米経済指標が景気の底堅さを示す場合は、米金利と米ドル相場の反発が予想される。このケースでは、金価格の反落相場を想定しておきたい。
金価格が反落する場合、最初の焦点は2,500ドルの維持となろう。2,505ドルはフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。2,498ドルは半値戻しの水準にあたる。テクニカルの面でも、2,500ドルを目先のサポート水準と想定しておきたい。
金価格が2,500ドルの水準を下方ブレイクしても、2,480ドルの水準が控えている(上の日足チャート、青ラインを参照)。この水準はレジスタンスからサポートのラインへの転換が確認されている。ゆえに、2,500ドル以上に金価格をサポートすることが予想される。短期サポートラインの下方ブレイクは、2,480ドルをトライするサインと想定しておきたい(下の1時間足チャートを参照)。
金スポット価格:1時間足 8月14日以降
出所:TradingView
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