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中国の利下げ効果は限定的か 不動産バブル再燃警戒 豪ドル円は下落

中国人民銀行が利下げに踏み切った。しかし景気刺激効果は弱いともみられ、中国経済との関連が強い豪ドル円相場は下落した。

出所:ブルームバーグ

中国政府が経済活性化に動き出した。中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は20日、政策金利と位置付けられる最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を10か月ぶりに引き下げると発表。経済活動の失速が指摘される中、利下げで消費を促す狙いがあるとみられている。ただし利下げ幅は市場の想定よりも小さいともいえ、中国当局の不動産バブル再燃への警戒感がにじむ。今回の利下げは結果として不十分な景気刺激策になる可能性もあり、中国経済の動向との関連が強い豪ドルの対円相場が下落するといった反応も出ている。

中国人民銀行が政策金利を引き下げ

人民銀行は20日、期間1年のLPRを0.1%引き下げて3.55%にすると発表。同時に期間5年超のLPRについても、これまでよりも0.1%低い4.20%にすると発表した。LPRは銀行融資の基準となる金利で、1年物は短期の融資金利、5年物は住宅ローン金利への影響が大きいとされる。人民銀行がLPRを引き下げるのは2022年8月以来だ。

中国政府は2022年11月以降、新型コロナウイルス感染拡大防止策としての「ゼロコロナ政策」を段階的に解除。2023年1-3月の実質成長率は前年同期比4.5%という1年ぶりの高い数字となった。

中国の実質GDP成長率の推移

しかし4、5月の鉱工業生産指数の前年同月比伸び率はいずれも市場予想を下回る結果。また、5月の貿易収支統計では、輸出と輸入がそろって前年同月から落ち込み、製造業が不振に陥っているとみられている。今回の人民銀行による利下げは、経済活動を下支えする狙いがある。

事前のエコノミスト調査では0.15%利上げの予想も

ただ、ロイター通信が事前に行ったエコノミスト調査では、32人中16人が5年物LPRは4.15%ま下げられると予想していた。引き下げ幅が見込みよりも小さくなったのは、中国政府が不動産市況におけるバブル発生を警戒しているからだともみられている。

こうした思い切りの悪い利下げは、中国当局が狙う景気刺激を不十分にする可能性がある。第一生命経済研究所の西浜徹氏は19日付のレポートで、中国当局が不動産バブルを警戒する結果、「不動産セクターをめぐる不透明感が投資活動の足かせとなり、景気の重石となる展開が続くと予想される」としていた。

豪ドルは対円で1円の下落

こうした見方を背景に、20日の外国為替市場では豪ドルの対円相場(チャート)が下落した。オーストラリアは中国との経済的な結びつきが強く、中国経済の減速はオーストラリア経済にも悪影響を与える可能性があるからだ。20日午後7時前の段階では1豪ドル=96.1円程度で推移しており、朝方の水準から1円程度の円高豪ドル安となっている。

中国経済の失速は日米欧の経済の先行きにも影響を与える可能性がある。中国政府は2023年の実質成長率目標を5.0%前後としており、中国政府が今後、どのようなテコ入れ策を打ち出すかも金融市場を動かす材料となりそうだ。


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