ユーロ圏は物価上昇加速か 再び3%台予想 ECBは利下げに距離
5日発表のユーロ圏の物価上昇率は前月よりも高くなる見通し。ECBの利下げ観測を弱め、ユーロ高要因になる可能性がある。
5日に発表されるユーロ圏の2023年12月の消費者物価指数(CPI)の速報値は物価上昇圧力の根強さが感じられそうだ。ロイターがまとめたエコノミスト調査によると、総合指数の伸び率は前年同月比3.0%になると予想されており、8か月ぶりに前月から物価上昇が加速する見通し。金融市場で根強く残っている欧州中央銀行(ECB)が春にも利下げに踏み切るとの観測が弱まる可能性がある。ユーロ円相場ではこのところ11月以降進んできたユーロ安が休止しており、12月CPIが利下げを否定するECBの立場を裏付ければ、さらなるユーロ高圧力として働きそうだ。
ユーロ圏の12月CPIは総合指数が3.0%上昇の予想
欧州連合(EU)統計局は日本時間5日午後7時に12月CPI速報値を発表する。総合指数の伸び率が予想通りであれば9月の4.3%以来の高さ。総合指数の伸び率は5月から7か月連続で前月よりも小さくなってきたが、物価上昇の根強さが感じられることになりそうだ。また食品、エネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数の伸び率は3.5%の見通し。11月(3.6%)からは低下するものの、物価上昇減速のペースは小幅になるとみられている。
一方、物価上昇抑制を目指してきたECBは2023年12月14日の理事会で、政策金利の下限にあたる中銀預金金利を4.00%で据え置くことなどを決め、2会合連続で利上げを見送った。9月まで続けた利上げが物価上昇を減速させる効果を見極めることが狙いで、金融市場ではECBが利下げに向かうとの観測が広がっている。LSEGのデータによると、2024年3月の理事会後にECBの政策金利が現状よりも低くなっていることについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間4日午後6時すぎの段階で約65%に達している。
ECBのラガルド総裁は利下げの議論を否定
しかし12月CPIで物価上昇の根強さが確認されれば、こうした早期の利下げ観測は後退する可能性がありそうだ。ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は12月理事会後の記者会見で「利下げについては全く議論していない」と明言。利上げ停止から利下げに方向転換するまでには、政策金利を高止まりさせる期間があることを強調した。また、足元ではエネルギー価格上昇による物価押し上げ効果が薄らいできているものの、「賃金上昇の強さと生産性の低下の結果として、ユーロ圏の物価上昇圧力は高いままだ」としている。
こうした中、ユーロ円相場(EUR/JPY)ではユーロ安の流れに一服感が出ている。ユーロ円相場は11月中旬には1ユーロ=164円台で取引される場面もあったが、ECBによる利上げ見送りが確実視され、日本銀行のマイナス金利解除観測が強まっていた12月中旬には153円台をつけ、10円以上の円高ユーロ安が進んだ。しかしその後は、日銀がマイナス金利解除を見送ったこともあり、ユーロ高が進行。1月4日の東京市場では一時、157円台で取引された。
ECBの利下げを期待する金融市場での観測はラガルド氏のメッセージとは明らかに温度差がある。ユーロ圏の12月CPIが物価上昇再燃の証として受け止められれば、足元で進んでいるユーロ高を後押しする筋書きも想定されそうだ。
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