自動車株明暗 トヨタは株価好調 EVのテスラやBYDは見通し不安
トヨタの株価は年初来4割高。一方、テスラは3割超安の不振ぶりで、投資家はEVメーカーの成長の見通しを修正しているようだ。
世界の自動車業界で株価の明暗が分かれている。世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車の株価は2023年末比で4割高の水準。米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)も株価は好調だ。一方、電気自動車(EV)大手の米テスラの株価は3割超安。テスラのライバルである中国BYDの株価も冴えない。世界的な普及が期待されているEVも、このところは販売の勢いが弱まっている。EV勢の予想株価収益率(PER)には依然として割高感があり、投資家が今後、株価上昇の見通しを修正していくことも考えられそうだ。
トヨタ株は2023年末比で4割高の水準に
トヨタ自動車(7203)の株価の5日の終値は3619円で、2023年末比で39.70%高。3月下旬につけた49%台の上昇率からは後退しているものの、引き続き、日経平均株価(N225)を構成する225銘柄の中で18番目の高い上昇率を維持している。またGMの米ナスダック市場での株価(GM)は5日の終値で、2023年末比23.13%高の44.23ドル。ドイツ市場に上場するVWの株価(VOWX)の5日終値は148.70ユーロで、2023年末比で25.54%値上がりしている。
これに対してEV勢の株価は勢いが失われている。2023年末比の騰落率は、テスラ(TSLA)が33.64%安。BYDの香港市場での株価(1211)は7.70%安となっている。テスラの株価下落は1月24日の2023年10-12月期決算発表に際して、2024年の販売台数の伸びが前年の実績よりも「著しく低くなる」と警告したことで拍車がかかった。BYDの株価も2月初めには20%安まで値下がりしている。
テスラやBYDの販売ペースは勢いを失う
実際、テスラが4月2日に発表した1-3月期の販売台数は前年同期比8.53%減の38万6810台と不振だった。BYDの1-3月期は13.40%増の30万0114台だったが、2023年の通年の販売台数は72.84%増だっただけに、上昇ペースは大きく鈍化している。
EVの販売は地球温暖化問題への関心の高まり背景に増加してきた。しかし生産コストの高さや充電インフラの不足といった課題は山積しており、本格的な普及には弾みがついていない。一方、中国政府はEV産業の拡大を国策と位置づけ、普及を後押ししているが、自動車業界では「政府の補助金頼みの市場拡大」との見方も多い。こうした中、株式市場ではEV以外のガソリン車やハイブリッド車にも強みを持つトヨタなど、非EV勢への再評価が進んでいるようだ。
EVメーカーの株価の見通しは明るくない?
また、高い成長が期待されてきたEV勢の株価に割高感があることは否めない。LSEGのデータによると、テスラの株価水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は約55倍。200倍を超えたこともある2021年ごろの水準からは落ち着いているが、トヨタの約11倍、GMの約4.9倍、VWの約4.5倍と比べた場合の割高感は明らかだ。BYDの予想PERは約14倍で、やはり非EV勢よりは高い。
世界各国で排出量規制強化が進む中、EV普及への期待は続いてはいるが、投資家が望んでいたほどのペースにはならない可能性もある。テスラは販売減速の理由について、モデル3とモデルYの販売拡大で始まった最初のピークと、2025年後半が見込まれている次世代車投入までの間の時期にあたるためだと説明しており、投資家はEV各社の株価上昇の見通しを修正しているとも考えられそうだ。
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