ユーロ圏物価上昇は大幅減速予想 10月CPI予想 ユーロ安圧力も
ユーロ圏の物価上昇が減速すればECBの利上げ打ち止め観測が強まる。ユーロ円相場ではユーロ安圧力として働きそうだ。
欧州連合(EU)統計局が31日に発表するユーロ圏の10月の消費者物価指数(CPI)の速報値は物価上昇の大幅な減速が見込まれている。欧州中央銀行(ECB)は26日の理事会で、物価上昇圧力の弱まりなどを理由に11会合ぶりの利上げ見送りを決定済み。10月のCPIが予想通りとなれば、ECBが当面の間は政策金利を据え置くとの見方が強まりそうだ。外国為替市場ではユーロが買われにくくなっており、CPIの結果はユーロ安圧力として働く可能性がある。
ユーロ圏の10月のCPIは総合で3.2%上昇の予想
EU統計局は日本時間の31日午後7時に10月のCPI(速報値)を発表する。ロイター通信のエコノミスト調査によると、総合指数の伸び率は前年同月比3.2%の予想で、9月の4.3%から大幅に低下する見込み。また、食品とエネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数は4.2%の見通しで、こちらも9月(4.5%)から低下しそうだ。予想通りになれば、総合指数は2021年8月(3.0%)以来、コア指数は2022年7月(4.0%)以来の低水準となる。
ECBのラガルド総裁は物価上昇の弱まりに言及
こうした物価上昇の減速はECBの見立てとも一致しているようだ。物価上昇抑制を狙って2022年7月から10回連続で利上げを決めてきたECBは26日、政策金利の下限にあたる中銀預金金利を4.00%で据え置くなど、利上げ見送りを決めた。クリスティーヌ・ラガルド総裁は記者会見で「基調的な物価上昇に関するほとんどの指標が弱まり続けている」と述べた。
またラガルド氏は「ユーロ圏経済は弱いままだ」と言及。これまでの利上げが経済を冷やす効果が予想以上に大きくなれば「成長はさらに弱くなる可能性がある」とした。長期化するロシアによるウクライナ侵攻後の戦争やイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘激化についても重要な地政学リスクだとしている。
こうした中、金融市場ではECBが次回(12月14日)の理事会でも利上げを見送るとの予想が支配的。金融情報会社リフィニティブのデータによると、12月の利上げ見送りについて投資家の動向から算出される確率はすでに約96%に達している。また、2023年春ごろにはECBが利下げに動くとの見方も強い。一方、ラガルド氏は26日の記者会見で利上げが打ち止めになったわけではないと述べ、さらに今後の利下げについては「理事会では全く議論されていない」と強調しているが、金融市場の利上げ打ち止め観測は根強いようだ。
ユーロ円相場では27日に円高ユーロ安が進行
ECBの金融政策に関するこうした思惑は、ユーロ円相場(EUR/JPY)で続いてきた円安ユーロ高に歯止めをかけている。27日のニューヨーク外国為替では、一時は5%台に達した米国の長期金利(10年物米国債利回り)が4.8%台で推移したことを背景に、ドルに対して円が買われた。一方、ユーロの対ドルでの上昇は限定的となり、結果としてユーロ円相場は前日比で0.73円の円高ユーロ安にあたる1ドル=158.10円で取引を終えた。23日に米国で長期金利が下がった際はユーロが大きく買われて円安ユーロ高が進んだが、今回は逆の動きが出た形だ。
ユーロ円相場は30日に発表されるドイツの10月CPIや、31日に発表されるユーロ圏の2023年7-9月期GDPの速報値、日本銀行の金融政策決定会合の結果などでも大きく動く可能性がある。
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