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NY金、連日で最高値更新 FRBの利下げと米大統領選挙は金価格の押し上げ要因に 短期の見通し

NY金先物価格は連日で最高値を更新する状況にある。スポット価格も最高値を更新し続けている。パウエルFRBが緩和サイクルへ転じたこと、そして間近に迫るアメリカの大統領選挙はいずれも、金価格の押し上げ要因となろう。スポット金価格は2,700ドルが視野に入る。

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記事のポイント

・パウエルFRB以上に、市場参加者は利下げペースが速まると見ている
・米国の利下げと大統領選挙に関する報道は、金価格の押し上げとなろう
・最高値を更新し続けるスポット金価格、2,700ドルが視野に
・しかし今は短期的な過熱相場にある、調整売りを警戒したい


スポット金価格のチャート水準

レジスタンスポイント

・2,760:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・2,742:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・2,700:レジスタンスポイント
・2,670:9月25日高値

サポートポイント

・2,650:サポートポイント
・2,640:サポート転換の可能性がある水準
・2,606:10日線(9/26時点)
・2,600:サポートポイント、リトレースメント61.8%


FRB、ソフトランディングに自信

今月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)は通常の倍となる50ベーシスポイント(0.5%)の大幅利下げを決定した。

そして9月のドットプロット(FOMC参加者による政策金利の予想)では、今年12月末の予想中央値が4.4%だった。FOMCの参加者は、残り2回の会合で計0.5%の追加利下げを織り込んでいることが示された。

また経済成長率、失業率、そしてインフレ率の予想を確認すると、経済成長率が2.0%台で底堅く推移する一方、失業率は緩やかに上昇する見通しが示された。そしてPCEコアインフレ率は2026年に物価目標の2.0%へ低下する見通しが示された。

これらの見通しからパウエルFRBは、景気が急速に悪化することなくインフレを抑制し、かつ適度な景気の減速を実現する「ソフトランディング」に自信を持っていることが分かる。

FOMC 9月の経済見通し

FOMC 9月の経済見通し

出所:FED、Summary of Economic Projections

市場はFRB以上に緩和スタンス

しかし、短期金融市場はFOMCの参加者が想定する以上にパウエルFRBの利下げペースが速まる可能性を意識している。

OISに基づく政策金利の予想推移によれば、11月のFOMCで9月のドットプロットで示された予想中央値の水準4.4%まで政策金利が引き下げられる可能性を織り込む状況にある。そして今年12月末には4.0%までの利下げを織り込み始めている。

FOMC 政策金利の予想推移

FOMC 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 26日 7時時点の予想推移

金価格との逆相関が鮮明に

残り2回のFOMCで0.5%の大幅利下げの可能性が次第に高まっていることは、米金利の低下と米ドル安の要因である。これらの市場と金価格のトレンドを比較すると、今年の7月以降「逆相関」の関係が鮮明となっている。パウエルFRBの政策スタンスに変化が見られない限り、この関係は今後も続くことが予想される。ゆえに年後半の金価格は、さらなる上値のトライを想定しておきたい。

米長期金利、ドル指数、スポット金価格の動向:2024年4月以降

米長期金利、米ドル、スポット金価格の動向:2024年4月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 米長期金利:10年債利回り

米大統領選挙も金価格の押し上げ要因に

パウエルFRBの利下げ政策以外で金価格の押し上げ要因となり得るのが、11月5日のアメリカ大統領選挙に関する報道である。

9月20日のIG為替レポート「米英の次は日銀会合、植田総裁が考える「賃金と物価の好循環」の“確度”に注目、ドル円の見通し」で取り上げたとおり、直近では共和党のドナルド・トランプ前大統領にとって追い風となる報道が見られる。

トランプ候補は米ドル安を志向している。対中関税や減税は米ドル高の要因にもなり得るが、FRBの大幅利下げが意識されている局面で米ドル安を志向するトランプ候補有利のヘッドラインが多く流れる場合は、金価格の押し上げ要因となろう。

しかし、民主党の候補ハリス副大統領も猛烈な巻き返しを図っており、米大手メディアのCNN、FOX NewsそしてNBC Newsの世論調査ではいずれもトランプ候補を上回る支持を獲得している。

ハリス候補有利の報道も金価格の押し上げ要因となろう。そう考える最大の理由が、同候補が掲げる法人税率の引き上げにある。ハリス候補は政策綱領に法人税率を現行の21%から28%へ引き上げることを明示した。利益が10億ドル超の企業には「公平な負担をさせることが目的という。また、米国を拠点とする多国籍企業が海外で上げた収益にかかる税率も、現在の倍の21%にするとした。

増税は財政リスクの軽減につながる。しかしこれは中長期の視点であり、短期的には増税による企業収益の悪化懸念でアメリカの株式市場(リスク資産)から投資資金が流出する要因となろう。

ゆえにトランプ候補とハリス候補、どちらが優勢となっても、両候補の政策は安全資産である金価格の投資需要をさらに増幅させるだろう。

金価格の見通し、2,700ドルが視野に

NY金の先物価格(12月物)は6日続伸し、前日比7.7ドル(0.3%)高の1トロイオンス2684.7ドルで25日の取引を終えた。一時2694.9ドルまで上昇し、中心限月として連日で過去最高値を更新した。

先物価格に追随し、スポットの金価格(以下では金価格)も連日で最高値を更新している。昨日は2,670ドルまで上昇する局面が見られた(IGレート)。

日足チャートで直近のトレンドを確認すると、昨日の市場で2つのフィボナッチ・エクステンション100%の水準を大陽線で一気にブレイクアウトした。10日線(短期)、50日線(中期)そして200日線(長期)はパーフェクトオーダーの状況にある。さらにMACDの上昇基調も考えるならば、テクニカルの面でも金価格が強気相場にあることが分かる。

今日以降も最高値を更新する状況が続く場合は、2,700ドルの攻防が焦点として浮上しよう。この水準をも突破する場合は、さらなる上値トライのシグナルと捉えたい。

金価格がしっかりと2,700ドル台へ上昇する場合は、2つのフィボナッチ・エクステンション161.8%の水準2,742レベル(8月5日起点)および2,760レベル(7月25日起点)の攻防を意識したい。

スポット金価格のチャート:日足 2024年7月以降

スポット金価格のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

短期的な過熱相場にある金価格、注目の下値水準は?

しかし、上の日足チャートにプロットしたRSIは買われ過ぎの水準へ到達し、短期的な相場の過熱感を示唆している。下の1時間足チャートにプロットしたMACDがゼロラインを下回り、かつデッドクロスへ転じたRSIが売られ過ぎの水準を目指す場合は、短期的な過熱相場を意識した調整売りを想定したい。

金価格の反落局面で注目したいのが、2,600ドルの維持である。この水準には10日線が浮上している(2,614ドル付近、上の日足チャート 青ラインを参照)。また、9月FOMC以降の高安で算出されるフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(2,594)でもある。

金価格が2,600ドルを目指すシグナルとして注目したいのが、昨日相場をサポートした2,650ドルとサポートラインへ転換する可能性のある2,640ドルである。後者の水準は、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準(2,641)にあたる。

スポット金価格のチャート:1時間足 9月18日以降

スポット金価格のチャート:1時間足 9月18日以降

出所:TradingView


再掲:スポット金価格のチャート水準

レジスタンスポイント

・2,760:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・2,742:フィボナッチ・エクステンション161.8%
・2,700:レジスタンスポイント
・2,670:9月25日高値

サポートポイント

・2,650:サポートポイント
・2,640:サポート転換の可能性がある水準
・2,606:10日線(9/26時点)
・2,600:サポートポイント、リトレースメント61.8%



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