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米インフレ鈍化と高まる9月利下げの観測、それでも弱気相場のNY金、目先の展望は?

5月のアメリカ物価指数は、インフレが鈍化の傾向にあることを示唆した。米債市場では長期金利が低下し、短期金融市場では9月利下げの観測が再び高まっている。しかし、NY金価格の上値は重い。今は弱気相場を意識する状況にある。注目しておきたいチャート水準は?

Source:Getty Images Source:Getty Images

サマリー

・5月の物価指数は、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることを示唆した
・9月の利下げ期待が再び高まり、米長期金利は低下の基調へ転じている
・しかしNY金価格の上値は重く、今は短期的な弱気相場の地合いにある
・金価格の下落局面で注目しておきたい3つのチャート水準


鈍化するアメリカのインフレ

12日に発表された5月の消費者物価指数(CPI)と13日に発表された同月の生産者物価指数(PPI)はともに、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることを示唆する内容となった(下のチャート、赤の棒グラフとドットを参照)。

アメリカ物価指数の動向:23年5月以降

アメリカ物価指数の動向:23年5月以降 ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:5月の結果

後追いのドットプロット

米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が予想する24年12月末の政策金利の予想(ドットプロット)は中央値で5.1%と、3月時点の4.6%から大幅に上方修正された。この予想が正しければ、今年の利下げは1回にとどまる。

しかし、短期金融市場での見方は違う。現時点で9月利下げの可能性を60%まで織り込む状況にある。12月の利下げの可能性も意識されている。

FOMC参加者と市場の予想が食い違っている要因は、上で述べた物価指数にあると思われる。リアルタイムでインフレの鈍化を織り込んでいる市場とは違い、ドットプロットは5月CPIの鈍化を考慮していない可能性が高い(日程的にPPIの鈍化は織り込むことができなかった)。

つまり、短期金融市場との間にある”予想の差異”は、刻々と変化する情勢を反映していないドットプロットの状況を示唆していると考えることができる。

米国 政策金利の予想推移

米国 政策金利の予想推移 ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成

それでも上値の重いNY金価格

しかし、スポットのNY金価格(XAU、以下金価格)の上値は重い。直近の動向を日足チャートで確認すると、21日線すらトライできずにいる。

それどころか2,325レベルがサポートからレジスタンスの水準へ転換するムードにある。そして日足のMACDは低下のトレンドにあり、ゼロラインを下回ってきた。

9月の米利下げ観測が再び高まり、一時4.7%台まで上昇していたアメリカの長期金利が4.2%台へ低下しても反発が限定的となっている今の状況は、金価格が短期的な弱気相場にあることを示唆している。

金価格のチャート:日足 今年3月以降

金価格のチャート:日足 今年3月以降 TradingView提供のチャートで作成

米経済指標にらみの状況が続く

今日は、消費者マインドを表す経済指標、米ミシガン大学消費者態度指数(6月、速報値)が発表される。

市場予想は72.0と、5月の69.1から改善の見込みである。先行景況感の予想も同じく72.0と、5月の68.8から改善する予想にある。

期待インフレ率の動向も材料視されるだろう。1年先の市場予想は3.2%と、5月の3.3%から鈍化する見込みである。一方、5-10年先の予想は3.0%で前月から横ばいの予想となっている。

米ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率の動向:23年5月以降

米国 ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率の動向:23年5月以降 ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成 / 赤のドット:6月の市場予想

焦点は75日線、2,285、2,275の攻防

5月のCPIとPPIで、アメリカのインフレが鈍化の傾向にあることが確認された。しかし、ミシガン大学消費者態度指数の内容が予想どおりで、将来の物価動向に影響を与える消費者のインフレ期待が予想外に上昇する場合は、インフレ鈍化の期待が後退することで米金利は反発することが予想される。6月の内容が総じて予想以上の結果となれば、米金利の反発の幅が拡大する可能性がある。

いずれにせよ、強い米国の経済指標は、金価格(XAU)の下落要因として警戒しておきたい。

本日、金価格が下値をトライする場合、目先は3つのチャート水準の攻防に注目したい。

一つは、IGコモディティレポートで何度か取り上げている75日線である。この移動平均線は今日現在、2,294レベルで推移している。

二つ目の水準は2,285レベルである。この水準は、6月7日と10日に相場をサポートした経緯がある。

そして最後に注目したい水準が2,275レベルである。この水準は4月の上旬から5月の上旬にかけて相場を下支えした経緯がある。ゆえに、最も重要なサポート水準と想定しておきたい。

これらサポートの水準で反発が確認される場合は、短期の押し目買いを考えたい。

金価格のチャート:日足 今年3月以降

金価格のチャート:日足 今年3月以降 TradingView提供のチャートで作成

反発の局面では戻り売りを意識

一方、米経済指標が予想以下となれば、米金利の低下と米ドル安が予想される。金価格(XAU)は反発相場を想定しておきたい。

しかし、弱気相場にある今の状況を考えるならば、上で述べた2,325レベルで反発が止められる展開を想定しておきたい。金価格が2,325の水準を突破しても、21日線の手前で戻りが止められるケースを想定しておきたい。

いずれにせよ、弱気相場にあるなかでの反発局面では、戻り売りを意識しておきたい。

【再掲】金価格のチャート:日足 今年3月以降

金価格のチャート:日足 今年3月以降 TradingView提供のチャートで作成

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