ドル円、円高進行を警戒も米国発の材料が反発要因となるか 今週の見通し
日銀の利上げ期待と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が交錯し、ドル円は149円台へ下落している。今週は日米の経済指標と、FRB高官の言動がドル円の変動要因となろう。米国発の材料次第ではドル円の反発が予想される。今週の見通しについて。
まずは週明けの円相場を注視
今年は日銀の金融政策決定会合が近づくと、メディアから市場の反応を探るかのような記事が配信される状況が繰り返し見られる。今年最後の日銀会合(12月18~19日)が近づくなか、日本経済新聞社は先月30日、日銀の植田和男総裁のインタビュー記事を配信した。以下に要点と注目ポイントをまとめた。
・追加利上げのタイミングについて植田総裁は、経済データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいているとする一方、米国の経済政策の先行きを見極める必要性にも言及した
・円相場と金融政策の運営については、物価・経済見通しに為替レートがどういう影響を与えるかという点で考え、そこをポイントに政策運営すると指摘した。また、インフレ率が2%を超え始めているときに一段の円安になれば、それは中央銀行にとってはリスクが大きい動きとし、場合によっては対応しないといけなくなると述べた
・植田総裁のインタビュー記事に対する週明けの円相場の反応を確認したい。無反応ならば、追加利上げの可能性に影響を与える新たな材料が出るまで、ひとまず円高が一服する可能性がある。その材料として今週注目したいのが、6日に発表される10月の毎月勤労統計調査の実質賃金と同月家計調査の消費支出である
・一方、週明けからさらに円高が進行すれば、12月の追加利上げを意識した流れが今週も続く可能性があろう。このケースでは、「今週の見通しと注目のテクニカルライン」で取り上げているサポートラインのトライを想定しておきたい
利上げ期待で高止まりの国内金利、縮小傾向の日米利回り格差
国内の短期金融市場と債券市場では、12月の金融政策決定会合で日銀が追加の利上げに踏み切る可能性を強く意識する状況にある。注目ポイントを以下にまとめた。
・短期金融市場では、12月会合で日銀が追加の利上げに踏み切る確率を66%前後まで織り込み始めている(OISに基づく予想確率、11月29日時点)
・国内の債券市場では、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが先週、2008年12月以来となる0.59%台まで上昇、0.6%を視野に高止まりしている。一方、10年債利回りは先週、米金利の低下基調と日銀のオペで上昇が抑制された。しかし低下幅は限定的で、節目の1.0%を上回る状況が続いている
国内金利の動向:日足24年9月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月29日時点
・国内市場の動きを受け、日米の利回り格差が縮小の傾向にある。この動きに連動し、ドル円(USD/JPY)は149円台へ下落している。上で取り上げた国内の経済指標が12月会合での利上げ期待をさらに高める場合は、国内金利に上昇の圧力がかかり続けよう。米金利は低下基調にある。日銀のオペをこなしながら国内金利がじわりと上昇し続ければ、「日米利回り格差のさらなる縮小→ドル円のさらなる下落」を促す要因となろう
日米の利回り格差とドル円の動き:日足24年5月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月29日時点
米FRBの要人による言動が日米利回り格差の縮小を止めるか?
今週は何人かの米連邦準備制度理事会(FRB)高官が講演や討論会に出席する。市場参加者の利下げ期待をいさめるタカ派の内容が続けば、日米利回り格差の縮小がひとまず止まることが予想される。注目ポイントを以下にまとめた。
・今週7日から、米FRBの高官らが金融政策についての発言を禁じるブラックアウト期間に入る。ゆえに各市場の参加者は、今後の利下げペースを見極めようと、今週予定されているFRBの要人らの講演に注目するだろう。特にウォラー理事とパウエル議長の発言内容は、米金利と米ドルを大きく動かす可能性があろう
・ウォラー理事は2日、米国経済研究所(AIER)で経済見通しについて講演を行う。ウォラー氏は先月28日のアメリカン・エンタープライズ・インスティテュートの講演で、第4四半期にインフレが一段と低下する見通しを示しながらも水準は依然として高く、最近の進展が持続可能だと完全に確信するには時期尚早と述べた
・パウエルFRB議長は4日、米紙ニューヨーク・タイムズの討論会に登壇する。データ重視で慎重に利下げペースを判断していく姿勢を貫くと思われる
・トランプ次期アメリカ大統領が、財務長官にスコット・ベッセント氏を指名すると発表して以降、米債市場では米国債の買い戻しが続いている(米金利は低下している)。しかし、米債市場のトレンドは金融政策と経済の状況によって決まる。さらなる利下げに対し慎重とされるボウマンFRB理事も含め、FRBの要人発言がタカ派よりと捉えられる場合は、米金利の反発と日米の利回り格差の縮小を止める展開を想定しておきたい
米FRBの要人による主な講演等の日程と概要
ブルームバーグのデータで筆者が作成
米ドルは経済指標にらみの1週間に、注目の米雇用統計
今週の米債市場と米ドルは、米連邦準備制度理事会(FRB)高官の言動だけではなく、経済指標でも上下に大きく動くことが予想される。注目ポイントを以下にまとめた。
・11月のISM製造業景気指数(2日)を皮切りに、今週は重要な米経済指標が多く発表される。最も注目度が高いのが雇用関連の指標である。なかでも6日に発表される11月の雇用統計は、米金利と米ドルを大きく動かす可能性がある
・ブルームバーグがまとめた予想では、11月の非農業部門雇用者数変化は20万人増、失業率は4.1%と、アメリカの労働市場が依然として底堅さを維持する見込みにある(12月2日時点の予想)。雇用統計で労働市場の堅調さが確認される場合は、米金利の反発を促す要因になり得る
・一方、11月の米雇用統計で労働市場の軟化が示される場合は、12月のみならず来年1月の連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ観測にも影響を与える可能性がある。現状、短期金融市場では12月の利下げについては60%の確率で織り込んでいる。一方、来年1月FOMCの利下げ確率は24%前後にあり、現時点では米FRBが利下げを見送る可能性が意識されている。米雇用統計が来年1月の利下げ期待も高める要因となれば、米金利の低下と日米利回り格差のさらなる縮小を促す要因になり得る
米国の雇用統計 各項目の動向:月次 23年11月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円、今週の見通しとテクニカルライン
今週のサポートライン
今週も日米利回り格差の縮小が続く場合、ドル円(USD/JPY)は新たな下値を模索する状況が続くだろう。注目のサポートラインを以下にまとめた。
・ドル円は現在、日足ローソク足の実体ベースで50日線とフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準150.19レベルを完全に下方ブレイクしている。MACDはデッドクロスへ転じゼロラインを目指している。モメンタムはゼロラインを下回る水準にある。これらテクニカルラインの動向は、ドル円が弱気相場にあることを示唆している
・今週、ドル円がさらに下値をトライする場合は、148円の維持が焦点に浮上しよう。テクニカルの面では、75日線と半値戻しの水準148.16レベルで反発するか?この点が重要な焦点となろう
・円高の圧力が高まる状況で、FRB高官の言動と雇用統計をはじめとした経済指標が米金利の低下要因となれば、ドル円の下落幅が拡大することが予想される。今週、円高と米ドル安が重なる局面が多く見られる場合は148円を下方ブレイクし、146円台まで下落する展開を想定しておきたい。このケースでは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準146.14レベルの攻防が焦点となろう。
サポートライン
・148.37:75日線(11月29日時点、日足赤ラインを参照)
・148.16:半値戻しの水準(日足)
・146.14:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(日足)
今週のレジスタンスライン
米国発の材料がきっかけとなり、今週ドル円(USD/JPY)が反発する場合は、以下で取り上げているレジスタンスラインの攻防に注目したい
・日足のモメンタムはゼロラインを下回っているが、下げ止まってもいる。一方、1時間足のMACDとRSIはゴールデンクロスへ転じつつある。これらテクニカルラインが上向けば、反発の兆候と捉えたい。ドル円が反発する場合、まずは150円台への再上昇とこの水準を維持できるかどうか?を確認したい
・ドル円が150円台へしっかりと上昇する場合は、フィボナッチ・リトレースメントの攻防が焦点となろう。38.2%戻し150.41レベルは、先月29日の反発を止めた水準である。61.8%戻しは151円台へ上昇するかどうか?を見極めるテクニカルラインである
・レジスタンスラインへ転換する可能性のある150.60をドル円が突破する場合は、151.00を目指すサインと捉えたい(1時間足、緑ラインを参照)
レジスタンスライン
・151.00:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(1時間足)
・150.60:レジスタンス転換の可能性あり(1時間足)
・150.41:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(1時間足)
・150.00:節目の水準(1時間足)
ドル円のチャート
日足:24年6月以降
出所:TradingView
1時間足:11月27日以降
出所:TradingView
※テクニカルラインの水準:11月29日時点
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
IG証券のFXトレード
- 英国No.1 FXプロバイダー*
- 約100種類の通貨ペアをご用意
* 英国内でのCFDまたはレバレッジ・デリバティブ取引(英国でのみ提供)での取引実績において、FX各社をメイン口座、セカンダリー口座として使用している顧客の割合でIGがトップ(Investment Trends UKレバレッジ取引レポート 2022年6月)
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。