ドル円今週の見通し:円安進行で高まる日銀の追加利上げ観測、強気相場に潜む「不意打ちの円高」を警戒
トリプルレッドとパウエルFRBの慎重姿勢は米ドル高のトレンドを支えるだろう。先週15日のドル円は3円近く下落した。きつい下げとなったが、米ドル高に支えられドル円は強気地合いを維持する公算が大きい。しかし今週以降は、強気相場に潜む「不意打ちの円高」を警戒したい。
記事のポイント
・パウエル発言で不透明感増すFRBの利下げパス、米ドル高のサポート要因に
・円安進行で高まる日銀の12月追加利上げ観測、不意打ちの円高を警戒
・ドル円、今週の見通しとテクニカル分析
パウエル発言で不透明感増すFRBの利下げパス、米ドル高のサポート要因に
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエルFRB議長は先週14日の講演で経済の強さに言及し、「利下げを急ぐ必要はない」と述べた。パウエル発言が与えた影響と米ドル相場の展望について以下にまとめた。
・パウエルFRB議長は14日の講演で、アメリカ経済の強さが今後の利下げペースに与える影響について、「The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates(経済はFRBが急いで利下げをする必要があるというシグナルを送っていない)」と述べた
・パウエル発言を受け、短期金融市場では12月の利下げ確率が40%台へ急低下している。13日時点では60%台後半の確率で利下げを織り込んでいた。今後発表される経済指標でアメリカ経済の強さが示される場合は、12月のみならず来年の利下げパスの不透明感もさらに高まるだろう
・12月の利下げ期待が後退していることで、米債市場では金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが4.3%台で高止まりする状況にある。また、10月の小売売上高で個人消費の底堅さが確認された。景気の先行きを織り込んで動く10年債利回りも4.4%台で高止まりしている
・高まる米利下げパスの不透明感、堅調なアメリカ経済そして米金利の高止まりはいずれも、米ドル高のトレンドを支える要因となろう
米FRB 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月15日までの動向
円安進行で高まる日銀の12月追加利上げの観測、不意打ちの円高を警戒
パウエルFRBの慎重姿勢に加えて、アメリカ議会の「トリプルレッド」も米ドル高のトレンドを支えるだろう。米ドル高はドル円(USD/JPY)の強気相場をけん引するだろう。しかし、今週以降のドル円は「不意打ちの円高」を警戒したい、その理由を以下にまとめた。
・米金利は高止まりしている。しかし、同時に国内金利の上昇幅も拡大している。10年債利回りは1%台の水準へしっかりと上昇してきた
・国内金利の上昇を受け、日米利回り格差の拡大が一服している。特にドル円のトレンドに影響を与える5年債と10年債の各利回りでその傾向が見られる(下のチャート、赤ゾーンを参照)
日米利回り格差の動向:24年5月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月15日までの動向
・国内金利の上昇は、12月の日銀金融政策決定会合で追加利上げが決定される可能性を意識した動きと考えることができる。短期金融市場では12月会合で日銀が追加利上げを決定する確率を50%台まで織り込む状況にある。アメリカ大統領選挙が行われる前の利上げ確率は30%前後で推移していた
・12月の利上げ確率を急速に押し上げているのが、円安の進行だろう。ドル円は5日のアメリカ大統領選挙以降、最大で5円上昇した(5日終値151.61、15日高値156.74)
日銀 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想、11月15日時点
ドル円、今週の見通しとテクニカル分析
不意打ちの円高と151円のトライ
今週のドル円(USD/JPY)は、強気相場のなかに潜む「不意打ちの円高」を警戒したい。通貨オプション市場でも、ドル円の下落を警戒する動きが見られる。注目のサポートラインを以下にまとめた。
・通貨オプション市場では、1週間と1ヶ月のリスクリバーサルがにわかにドルプットへ傾き始めている。対照的に予想変動率はじわりと上昇基調にある。現状、大きな変動は見られない。しかし直近の動きは、ドル円の下落を市場参加者が警戒し始めていることを示唆している
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率の動向:日足 24年7月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月15日までの動向
・ドル円の動向を日足チャートで確認すると、先週15日にフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準156.52レベルの突破に失敗し大陰線の急落となった(下の日足チャート、緑矢印を参照)。MACDはデッドクロスへ転じている。モメンタムも強気地合いの勢いがじわりと後退している状況を示唆している
・15日の急落を止めた10日線を完全に下方ブレイクする場合は、10月23日以降、相場をサポートしている151円のトライを想定しておきたい
・ドル円が151円を目指すシグナルとして、以下のサポートラインの攻防に注目したい。なお、151.00はフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる(下の日足チャートを参照)
サポートライン
・154.03:10日線
・153.15前後:21日線:153.13、フィボナッチ・リトレースメント23.6%戻し:153.18
・150.98:フィボナッチ・リトレースメント38.2%戻し
ドル円のチャート:日足 24年7月以降
出所:TradingView
強気相場の維持なら156円台の攻防が焦点に
米ドルは調整の反落を挟みながら、年内は上昇トレンドを維持する公算が大きい。ドル円(USD/JPY)は米ドル高に支えられ強気相場を維持することが予想される。ドル円の上昇局面では、以下で取り上げているレジスタンスラインの攻防に注目したい。
・今週もドル円が強気相場を維持する場合は、156円の再上昇が目先の焦点となろう。156.06レベルはフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる
・ドル円が156円を目指すサインとして、以下で取り上げているサポートラインの攻防に注目したい。注目は、レジスタンスラインへ転換する可能性のある155.20レベルと155.60-80レベルである。155.60はレジスタンスラインへ転換し、155.80はその可能性を意識する局面にある。ゆえに155.60-80をレジスタンスゾーンと想定しておきたい
・ドル円が156円台へしっかりと上昇する場合は、レジスタンスの水準として鮮明となってきた156.50-75ゾーンのトライと上方ブレイクを意識したい。レンジの上限(15日の高値)156.75レベルを完全に突破する場合は、157円をトライするサインと捉えたい
レジスタンスライン
・156.50-75:レジスタンスゾーン
・156.06:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・155.60-80:レジスタンスゾーン
・155.20:レジスタンス転換の可能性あり
・154.96:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
ドル円のチャート:15分足 11月13日以降
出所:TradingView
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