日経平均に下落圧力も 日銀YCC修正 国内金利上昇、円高どこまで
日銀のYCC修正は日経平均を下押ししそうだ。ただし日本経済の前向きな動きや米国経済の軟着陸への期待という好材料もある。
上半期に大幅な上昇を記録した日経平均株価への下押し圧力が強まる可能性が出てきた。日本銀行が28日に大規模金融緩和の柱であるイールド・カーブ・コントロール(YCC)を修正し、将来的に国内金利が上昇しやすい状況になったためだ。今後はドル円相場も円高ドル安に動きやすくなるとみられ、海外投資家の日本株買いが弱まる筋書きも考えられる。ただし日銀のYCC修正の背景には、賃上げを伴う物価上昇で日本経済が健全化に向かう兆しががあることも事実。今後、金利や為替相場が急変しない場合には、日本株への前向きな期待が強まる展開もありそうだ。
YCC修正で日経平均の安心材料が薄れる
28日の日経平均株価(N225)の終値は3万2758.20円。1週間前と比べて454.98円(1.4%)高となった。また米国のS&P500種株価指数(SPX)も1週間で1.0%上昇。米国では2023年4-6月期の実質成長率が前期比年率2.4%となると同時に6月の個人消費支出(PCE)物価指数にも落ち着きがみられ、深刻な景気後退を招くことなく物価上昇を抑え込むことができる「軟着陸(ソフトランディング)」の可能性が高まっている。
ただし日経平均の上半期27%上昇を支えた安心材料は失われてきた。日銀が28日にYCCを修正し、日本の超低金利に変化の兆しが出たためだ。YCC修正でこれまで0.5%が上限となってきた10年物国債の利回り(長期金利)は1.0%まで上がる余地が生まれた。金融情報会社リフィニティブのデータによると、28日の日本の長期金利は0.573%となった。長期金利が上がれば企業や個人の経済活動にはマイナスになるほか、株式の投資先としての魅力も相対的に薄れることになり、株価には下押し圧力がかかりやすくなる。
また、日本の金利が上がるという見方が強まれば、外国為替相場での円高圧力となり、日本株の下落要因となりかねない。これまでのドル円相場(USD/JPY)は円安ドル高傾向が続いてきた。2022年3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに着手すると、超低金利が続く日本との金利差が広がるとの観測から、ドルが買われやすくなったためだ。強いドルを保有している海外投資家の日本株買いは日経平均上昇の理由のひとつとされてきた。こうした構図は日本の金利が上昇すれば弱まることになる。FRBや欧州中央銀行(ECB)が利上げ停止を視野に入れていることも円高材料だ。
植田総裁「変化の芽を育てることが重要」
ただし日銀がYCCを修正した理由には日本経済が健全化に向かう可能性がわずかながらでも高まっていることがある。日本経済の伸び悩みの要因とされてきた鈍い賃金上昇をめぐっては、基本給にあたる所定内給与が5月の確報値で前年同月比1.7%増となり、1997年6月(1.7%)以来25年11か月ぶりの高い伸びを示した。一方、日銀の植田和男総裁は28日の記者会見で、賃金上昇が消費活性化につながり、物価上昇率が持続的に2%を超える好循環の達成にはまだ距離があるとしたが、「少し前進した」とも指摘。企業の賃金・価格設定行動には変化の兆しが見えていると述べ、「変化の芽を大事に育てていくことが重要だ」としている。
このため、今後の金融市場で急激な金利上昇や円高進行がなければ、日本経済の明るい側面が投資家心理を安心させる可能性もある。米国経済の軟着陸期待の高まりという好条件にもあるだけに、日経平均の値動きに注目が集まりそうだ。
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