アメリカの利下げ期待じわり後退 ドル高進行 経済減速リスクも拭えず
アメリカの物価上昇の根強さが利下げ期待を後退させた。一方、2月小売売上高は弱い結果で、経済減速のリスクも拭えない。
アメリカで連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待がじわりと後退している。金融市場では引き続き6月の利下げが有力視されているが、確度は低下。14日に発表された物価関連の指標が予想を超え、物価上昇懸念が材料視されたことが影響した。長期金利(10年物米国債利回り)は4.3%目前まで上昇し、ドル円相場はドル高で反応している。一方、2月の小売売上高は予想を下回る結果で、物価上昇が経済活動を下押ししている様子も感じられる。今後、FRBが根強い物価上昇と経済減速に同時に対応せねばならない難局に立たされる可能性も否定できない。
FRBの6月利下げ確率は61%まで低下
CMEグループのデータによると、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間15日午前11時30分時点で約61%。3月19、20日と、5月のFOMCでは利下げ見送りがほぼ確実視されており、6月の利下げ着手が最有力になっている形だ。
ただし6月利下げの確率は、依然よりはやや低くなった。8日段階では約73%の確率が見込まれていたことを考えれば、1週間ほどで12%分ほど利下げ期待が後退したといえる。また、LSEGのデータでは金融市場が見込む年内の利下げ回数は3回程度となっており、1か月前の4回程度から利下げペースの鈍化が予想されている。
2月PPIを受けてドル円相場は148円台までドル高に
投資家の思惑を動かしたのは物価上昇圧力への警戒感だ。米労働省が14日に発表した2月の卸売物価指数(PPI)の伸び率は前年同月比1.6%で、ロイターがまとめた事前予想の1.1%を上回った。前月比では0.6%の伸びで、やはり事前予想(0.3%)を超えている。米国の物価をめぐっては12日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)も事前予想より高くなり、FRBが目指す物価上昇率2%の達成に時間がかかる可能性が感じられていた。
こうした中、14日のニューヨーク債券市場では長期金利の終値が4.298%となり、前日から0.106%ポイント上昇した。2月13日以来の大きな上げ幅で、26日(4.299%)以来の高さとなっている。この結果、FX市場ではドル高が進行。ドル円相場(USD/JPY)の14日の終値は1ドル=148.32円で、前日比0.58円の円安ドル高だった。ドル円相場では日本銀行のマイナス金利政策解除が近いとの観測から円高傾向が出ていたが、2月CPIの発表があった12日以降はドル高に転じている。
2月の小売売上高は前月比0.5%増で予想を下回る
一方、物価上昇の根強さは米国経済に悪影響を及ぼしている可能性もありそうだ。14日に商務省が発表した2月の小売売上高は前月比0.6%増で、ロイターによる事前予想の0.8%増を下回った。自動車と自動車部品を除いたベースでは0.3%増で、こちらも事前予想(0.5%)を超えられなかった。消費の冷え込みが企業業績を悪化させ、失業率の上昇につながるなどすれば、FRBが今後、利下げでの対応を迫られる可能性が高まる。
物価上昇率が高いまま失業率が上がる状況は、FRBが目指す軟着陸(ソフトランディング)シナリオの対極。今後の雇用情勢が悪化すれば、FRBの金融政策のかじ取りがさらに難しくなり、ドル円相場などの金融市場が混乱するリスクも出てきそうだ。
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