原油価格上昇 サウジが大規模減産表明 OPECプラスの足並みはそろわず
サウジが単独で大規模減産を表明し、原油価格が上昇している。しかしOPECプラスとしての取り組みには至らず、迫力は欠ける。
原油価格に上昇圧力がかかっている。石油輸出国機構(OPEC)を率いるサウジアラビアが4日、日量100万バレルの追加減産を単独で行うと表明したためだ。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油価格は日本時間5日午後の時点で、先週末の水準よりも1%超高い水準で推移している。しかしサウジの単独減産は、OPECとロシアなど非加盟国で作るグループ「OPECプラス」で協調的な追加減産を合意できなかった結果ともいえ、産油国の足並みの乱れも感じさせる。
サウジアラビアが日量100バレルの追加削減
サウジアラビアのエネルギー省は4日、「日量100万バレルの追加的な原油生産量削減を自主的に行う」と発表した。期間は7月のみだが、延長する可能性があるという。7月の生産量は日量900万バレルとなる。
また、OPECプラスは4日にウィーンで閣僚級会合を開き、生産規模を日量4046万バレルとすることで合意した。4月に発表された各国の自主削減分を考慮した生産規模(約4020万バレル)とほぼ同じ水準だ。
原油価格の指標のひとつであるNYMEXでのWTI先物価格(翌月渡し)の価格は日本時間5日午後2時30分ごろの時点で1バレル=72.76ドルで取引されている。前週末の71.74ドルよりも1.4%値上がりしている。
OPECプラスでの追加減産には至らず
ただ、サウジ単独での減産は、OPECプラスによる協調減産が実現しなかった結果でもある。サウジは5月の段階で原油価格を値上がりさせる意図を示唆。ロイター通信などは閣僚会合直前、100万バレルの追加削減が議論されると報じていた。サウジはOPECプラスで合意できなかった減産を単独で実行した形だ。
サウジが減産にこだわる背景には、これまでの減産にも関わらず原油価格の低下傾向が続いているという事情がある。OPECプラスは2022年10月に、同年8月の要求生産水準から日量200万バレルの減産を行うことで合意。また、ロシアは西側による制裁への対抗措置として、2023年2月に日量50万バレルの単独減産を表明した。さらに4月2日にはサウジなど参加8か国が合計日量116万バレルの自主的な減産を行うと発表している。
しかしいずれのケースでもWTIを押し上げる効果は短期間で終わっている。2022年10月に日量200万バレルの減産が発表された後、WTIは1バレル=92ドル台まで上昇したが、約2か月後の12月半ばには70ドル台前半まで落ち込んだ。その後もWTIは上下に動いてはいるが、80ドル台前半で頭を抑えられている。
サウジは原油価格の下落を見込んで取引をする投機筋の存在が価格下落の要因だとみているようだ。単独での減産実施には、産油国として価格を下げないという強い意志を示し、投機筋を牽制しようという狙いがうかがえる。しかし原油価格下落の背景には、政策金利引き上げを続けてきた米欧の景気がいずれは減速してくと見込まれることや、中国経済復活の勢い不足が感じられているという事情もあり、サウジの思惑通りに原油価格が上昇基調をたどるかは不透明だ。
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