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米国株、上昇控えめ S&P500最高値に届かず 雇用見通しに不安

S&P500は21日に反発。長期金利が1年1か月ぶりの低さとなったことが好感された。ただ、就業者数の下方修正で雇用情勢への不安も続く。

米国株、上昇控えめ S&P500最高値に届かず 雇用見通しに不安 出所:Adobe Images

アメリカの株式市場の上昇が最高値を前に足踏みしている。21日のS&P500種株価指数の終値は前日比0.42%高となり、前日の小幅安から反発。しかし7月中旬の最高値には届かなかった。21日に発表された7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨は利下げ見通しを強めて株価の上昇要因となったが、就業者数の年次改定は大幅な下方修正となり、投資家心理が悪化したようだ。22日には週次の失業保険関連統計が発表される予定で、市場予想よりも悪い結果となれば、S&P500の上昇ムードに水がさされる可能性がある。

【関連記事】米国株に上昇期待 S&P500最高値目前 FRB利下げ確実見通し(2024年8月24日)

アメリカのS&P500は上昇 最高値には届かず

S&P500(SPX)の21日の終値は5620.85。前日は0.20%安で9連騰には失敗していたが、この日は0.42%の反発で取引を終えた。21日は長期金利(10年物米国債利回り)のニューヨーク債券市場での終値が3.776%となり、2023年7月19日(3.742%)以来、1年1か月ぶりの低さとなったことが好材料となった。ただしS&P500は、2024年7月16日につけた最高値(5667.20)には届かなかった。

S&P500とアメリカの長期金利のグラフ

FOMC議事要旨で利下げ見通し強まる

長期金利低下の要因となったのは7月30、31日のFOMC議事要旨だ。大多数の参加者が「今後の経済指標が想定に沿った内容だった場合、次回会合での金融緩和が適切になるだろう」と考えていたことが分かった。9月17、18日のFOMCでの利下げ見通しを強める内容といえ、米国金利の先安観につながった。

CMEグループのデータによると、9月FOMCでの利下げが0.5%幅になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間22日午前11時段階で33%。0.25%利下げの確率(68%)よりは低いものの、前日午前11時の29%から上昇している。

就業者数の年次改定は81.8万人の下方修正 雇用不安拡大

一方、21日は雇用面での見通し不安というS&P500への逆風も吹いた。労働省が発表した就業者数の年次改定の速報値では、3月の非農業部門の就業者数が81.8万人の下方修正になった。ロイター通信によると、この数字が2025年2月発表予定の確定値まで維持されれば、2009年3月分の下方修正(90.2万人)以来の大きさになるという。

すでに発表済みの雇用統計では3月までの1年間で就業者数は290万人増加したとみられているが、速報値での下方修正を踏まえれば増加幅は208.2万人にとどまっている可能性がある。月平均でみれば、毎月24.2万人の増加が、17.4万人の増加に見直される形だ。

大手ハイテク株には値下がりも エヌビディアは反発

こうした雇用情勢への不安の結果、米国の株式市場は長期金利低下にも沸き立たなかった。S&P500の上昇を引っ張ってきた大手ハイテク株では、アルファベット(GOOGL)が前日比0.80%安となったほか、マイクロソフト(MSFT)やアップル(AAPL)も値を下げた。28日に2024年5-7月期決算発表を控える半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)は0.98%高だったが、前日に2.12%安を記録した後としては控えめにも映る。

アルファベット、アップル、マイクロソフト、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、テスラの株価の推移

また、「ウォール街の恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の値動きからも投資家の相場の見通しへの不安が感じられる。シカゴ・オプション取引所(CBOE)によると、VIXの21日の終値は16.27で、前日の15.88から上昇。7月雇用統計での失業率悪化後の円高が悪材料となってS&P500が急落した5日の数字(38.57)からは大きく改善しているが、7月中旬までつけていた12台への回復は進んでいない。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が高いほど投資家の価格変動への不安が大きいとされる。

S&P500とVIXの推移のグラフ

米国の雇用情勢をめぐっては22日午前8時30分(日本時間22日午後9時30分)に8月11-17日週の新規失業保険申請件数が発表される。ロイターがまとめた市場予想では23.0万件となり、前週の22.7万件から増加する見通しだ。実際の結果が予想よりも大きくなった場合は、雇用情勢の見通し悪化が材料視されてS&P500が下押しされるおそれもありそうだ。またFRBのジェローム・パウエル議長は日本時間の23日午後11時から、ワイオミング州ジャクソン・ホールで公演する予定で、発言内容が注目されており、こちらも相場を動かす材料になる可能性がある。

アメリカの新規失業保険申請件数と失業率の推移のグラフ

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