FOMCでS&P500動揺 米国半導体株下落 雇用統計堅調見通し
アメリカの株式市場はFRBの中立的な情報発信を受けて乱高下。ただ、半導体株の値下がりは悪材料で、雇用統計前に見通しが悪化している。
アメリカの株式市場でS&P500種株価指数が乱高下した。1日のS&P500は連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明発表を受けて、一時、前日終値比1.2%高の水準まで急騰。しかしジェローム・パウエル議長の会見中には再び値を下げ、終値では0.34%安となった。FRBの情報発信は物価上昇の根強さを警戒しつつ、利上げの可能性は否定しており、中立的といえる内容。声明の中でFRBの保有資産縮小ペースを緩めるとの言及があったことも株式相場の反応を複雑にしたようだ。ただ、1日の取引では主要な半導体株が下落しており、3日発表の4月雇用統計で堅調な結果が予想される中でも、見通しは悪くなっている。
アメリカのS&P500は乱高下の末に0.34%安
S&P500(SPX)の1日の終値は5018.39。前日終値の5035.69からは下落しているが、取引時間中には約5100まで値上がりする場面もあった。
こうした値動きは金融市場の注目が集まったFOMCの結果を反映したものだ。FRBは事前予想通りに6会合連続で政策金利を維持。しかし声明文には「この数か月は、FRBが目標とする物価上昇率2%の達成に向けた、さらなる進展が失われている」との文言が盛り込まれ、物価上昇への警戒感を示した。3月の個人消費支出(PCE)物価指数は食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が前年同月比2.8%で、12月に2%台に到達してから減速がみられない。
FRBパウエル議長はFOMC後会見で「利上げ」を否定
一方、パウエル氏は記者会見で物価上昇の沈静化を忍耐強く待つとの立場を強調した。物価上昇率が2%に戻るとの確信を得るまでには「より長い時間がかかりそうだ」としつつも、現在5.25-5.50%に設定されている政策金利は「引き締め的だ」と繰り返した。そのうえで「次の金融政策変更が利上げになることはないだろう」と述べ、物価上昇沈静化のために利上げに踏み切るとの観測を否定した。
また、声明文ではFRBが保有する米国債の月間償還上限額を6月から600億ドルから250億ドルに引き下げることも公表された。FRBの保有資産が減少するペースが緩やかになることを意味するが、パウエル氏はFRBのバランスシート縮小を滑らかにするための決定だと説明。「金融政策の主要な手段は政策金利だ」として、上限額の変更に金融政策としての意味はないことを強調した。
アメリカの半導体株は1日に急落
ただ、こうしたFRBの中立的な情報発信の裏側で、1日の株式市場では半導体株が大幅に下落している。前日の取引時間終了後に2024年1-3月期決算を発表したアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は前日比8.91%安。2024年の人工知能(AI)向け半導体の販売見通しが投資家の期待に応えられなかったことが悪材料となった。また、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)も前日比3.89%安、ブロードコム(AVGO)は4.42%安となった。半導体株は大手ハイテク企業の積極的なAI投資姿勢を受けて復調していたが、再び見通しが悪くなった形だ。
4月雇用統計は就業者数が24.3万人増の見通し
S&P500の今後の見通しは3日発表の4月雇用統計の結果に左右されそうだ。LSEGがまとめた市場予想では、非農業部門の就業者数は前月比24.3万人増の見通し。3月の30.3万人増からは過熱感が治まるとみられている。また失業率は2月と同じ3.8%、平均時給の伸び率は4.0%が見込まれている。いずれも堅調といえる結果で、予想通りになれば投資家からは歓迎されそうだ。
ただ、雇用統計で再び労働市場の過熱感が感じられた場合には物価上昇圧力の高まりとして受け止められ、S&P500の下落につながる可能性がある。また失業率の増加がみられた場合も経済の先行き不安を高め、株式相場の逆風になることが考えられそうだ。
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