米国株に大幅利下げ期待 S&P500最高値接近 軟着陸の見通しは?
アメリカの株式市場はFRBの大幅利下げへの期待で6連騰。中小型株の上昇にもつながっているが、経済の軟着陸の難易度は低くない。
アメリカの株式市場で米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利下げへの期待が強まっている。S&P500種株価指数は16日に6営業日続伸。7月中旬につけた最高値まで0.6%まで接近した。金融市場では17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅が0.5%になるとの見通しが強まっており、金利水準低下への期待は中小型株への追い風にもなっている。ただし米国経済をめぐっては労働市場悪化の懸念が続いており、FRBが利下げ着手に出遅れている可能性は拭えない。過去の例をみれば、物価上昇鎮静化と労働市場悪化の回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)の難易度の高さも感じられ、FOMC前後のS&P500は神経質な値動きになることも想定される。
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アメリカのS&P500は6営業日続伸 最高値まで0.6%
S&P500(SPX)の16日の終値は前週末比0.13%高。9月9日から6営業日続伸で、この間の上昇率は4.15%に達した。7月16日につけた最高値(5667.20)までは、あと0.60%の水準だ。長期金利(10年物米国債利回り)は16日のニューヨーク市場の終値で3.621%まで下がっており、2023年6月1日(3.608%)以来の低水準。株式の投資先としての相対的な魅力を高めている。
FRBの0.5%利下げの予想強まる 中小型株にも追い風
長期金利低下の背景にあるのはFRBが18日までのFOMCで0.5%幅の利下げに踏み切るとの見通しだ。CMEグループのデータによると、0.5%利下げについて投資家の動向から算出される確率は日本時間17日午前11時30分現在で67%。14日朝の45%程度から大きく上昇した。また、LSEGのデータによると、金融市場では12月FOMC後の政策金利の水準は4.13%程度と見積もられており、現状の水準(5.25-5.50%)から1%幅以上の利下げが想定されている。
こうした金利の先安観は中小型株の見通しも明るくしているようだ。中小型株で構成される株価指数のラッセル2000(RUT)の16日の終値は前週末比0.31%高の2189.17で、S&P500の上昇率を上回った。13日もラッセル2000は2.49%高となり、S&P500の0.54%高をしのいでいる。中小型株企業は変動金利での借り入れが多く、金利低下の恩恵を受けやすいとされる。また、S&P500は最高値が節目として意識されて伸び率が小さくなる一方、ラッセル2000は7月16日につけた直近の高値(2263.67)まで3.4%ほどの余裕があることが好条件になっているとみられる。
物価上昇率は低下 労働市場の悪化見通しも浮上
FRBの利下げが確実視される背景には、米国の物価上昇が低下していくとの見通しがある。7月の個人消費支出(PCE)物価指数は食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が前年同月比2.6%で、2022年2月の5.6%をピークとしてFRBが目標とする2%へと向かう道筋が感じられる。
一方、米国経済をめぐっては労働市場への悪化への懸念も浮上してきた。8月の失業率は4.2%で、2023年1月の3.4%を底とした上昇傾向にある。FRBのジェローム・パウエル議長は9月利下げを事実上予告した、8月23日のワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で、労働市場について「これ以上の冷え込みは求めていない」と述べた。FRBが利下げを決断すれば、経済活動を刺激して労働市場の悪化を食い止める効果が期待され、FRBの警戒の対象が物価上昇から労働市場悪化に移ってきたことがはっきりしそうだ。
経済の軟着陸の難易度は高い側面も
ただ、過去の利下げ局面をみると、物価上昇の抑制と労働市場の健全性の維持の難易度は高いともいえそうだ。2007年からの利下げ局面や、2019年からの利下げ局面では、物価上昇率は低下していったが、失業率は上昇している。金融危機や新型コロナウイルスの感染拡大といった特殊要因の影響が大きいとはいえ、利下げを間近に控えた株式市場にとっては嫌なジンクスにも映る。
こうした中で、FRBが18日に公表する利下げ幅が0.25%にとどまったり、経済見通しで示される利下げペースが市場予想ほど速くなかった場合には、FRBが利下げで出遅れ、労働市場の悪化を食い止められないとの不安がふくらむおそれは拭えない。同時に金利低下の見通しが弱くなり、S&P500に下押し圧力がかかる可能性がある。
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