米国経済の見通しに不安 金利低下でもS&P500小幅高 景況感悪化
アメリカの製造業の景況感悪化は金利低下を招きつつ、S&P500の足を引っ張った。今後の経済指標も株安につながる可能性がある。
アメリカ経済の見通しへの不安が株式相場を冷やした。3日のS&P500種株価指数の終値は前週末比0.11%高。相場の重荷となってきた長期金利(10年物米国債利回り)が大きく低下したにも関わらず、上昇は小幅に終わっている。背景にあるのは長期金利低下の理由が米国経済の先行きへの懸念でもたらされたという事情。3日に発表された製造業の景況感指数が市場予想を下回り、投資家心理を暗くしたようだ。米国では4日以降も経済活動の強さのバロメーターとされる経済指標が相次いで発表される予定で、悪い数字が続けばS&P500の下落につながることも想定される。
アメリカのS&P500は小幅に上昇 長期金利は大幅低下
S&P500(SPX)の3日の終値は続伸し、前週末比0.11%高の5283.40。個別株では半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)が4.90%高の1150ドルをつけ、上場来高値を更新。SNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)も4営業日ぶり反発の2.28%高となった。
また、3日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.402%で、前週末から0.110%ポイント低下。1日の値下がり幅としては米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げの方向性を示した2023年12月13日(0.173%ポイント低下)以来の大きさだ。CMEグループによると、9月までの利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間4日午前11時現在で約62%になっており、前日の52%程度から大きく上昇している。
5月の製造業の景況感の悪化が投資家心理を冷やす
ただ、3日のS&P500は長期金利の大幅低下と利上げ見通しの強まりがあった割には小幅な上昇だったともいえる。実際、前週末比での騰落率は取引終了直前の上昇でプラス圏に入ったが、取引時間の多くはマイナス圏で推移する値動きだった。
背景にあるのは3日に発表された製造業の景況感を示すデータの悪化だ。米サプライマネジメント協会(ISM)によると、5月の製造業景況感指数は48.7となり、4月の49.2から低下。ロイターがまとめた事前予想の49.6も大きく下回っている。ISMは「現在の金融政策やその他の条件の中で、企業は投資に後ろ向きになっている」と指摘。発表文の中では企業側からの「小規模な経済の減速が始まっているようだ」という声も紹介されている。
S&P500の今後の見通しは景況感や雇用関連のデータが左右
ISMの製造業景況感指数は3月のデータが発表された際、製造業の拡大を示す50を超える水準に達したことが、FRBの利下げ期待を後退させ、S&P500の下落につながった。しかし今回は製造業の弱さが示され、利下げ見通しが高まったにも関わらず、S&P500は勢いに欠ける結果。株式相場には、金利低下を望みつつも、景気悪化を伴うならば元も子もないという思いがあるようだ。
米国経済をめぐっては、4日に4月の雇用動態調査(JOLTS)、5日にISMの5月サービス業の景況感指数、7日に5月雇用統計が発表される。これらの経済指標で求人件数の弱さや、景況感の弱まり、失業率の増加といった米国経済の今後の見通しを不安にさせる結果が出た場合にはS&P500の下落要因として働く可能性がありそうだ。
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