米国株を利下げ見通しが刺激　勢いづくS&P500　半導体株反発続く

アメリカの株式市場が利下げへの期待で元気を取り戻している。S&P500種株価指数の6日の終値は前週末比1.03％高で、3営業日連続での大きな伸び。長期金利（10年物米国債利回り）が約3週間ぶりに4.4％台まで下がったことが追い風になった。注目度が高い半導体株も反発が続き、NVIDIA（エヌビディア）は3月下旬以来の上場来高値に接近している。背景にあるのは、3日発表の4月雇用統計を機に息を吹き返した利下げへの楽観。ただし中東情勢をめぐってはイスラエルがパレスチナ自治区への攻勢を強めており、今後の見通しを暗くする可能性もありそうだ。

S&P500は3連騰　エヌビディアなど半導体株も好調

S&P500（SPX）の6日の終値は5180.74。2日の0.91％高、3日の1.26％高に続く高い伸びで、4月9日以来の5200台が視野に入った。4月末比での上昇率は2.88％で、3月28日につけた最高値（5254.35）にも近づいている。S&P500を勢いづかせているのは長期金利の低下だ。LSEGのデータによると、6日のニューヨーク債券市場の長期金利の終値は4.489％で、4月12日（4.499％）以来の4.4％台となった。

こうした金利水準の落ち着きは、半導体株の見通しも明るくしており、エヌビディアの株価（NVDA）は6日まで3営業日連続で3％台の上昇。6日の終値は921.40ドルとなり、3月26日（925.61ドル）以来の高さ。25日につけた上場来高値（950.02）の更新が近づいてきた。半導体株ではこのほか、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ（AMD）や半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ（アプライド・マテリアルズAMAT）も3連騰を演じている。また8日に2024年1-3月期決算を発表する英半導体大手アーム・ホールディングス（ARM）の株価も伸びている。

FRB幹部が相次いで今後の利下げ見通しを維持

株価上昇の背景にあるのは、米連邦準備制度理事会（FRB）が利下げに向かうとの見通しが生き続けていることだ。6日にはリッチモンド連銀のトム・バーキン総裁がサウス・カロライナ州での講演で、現状の政策金利は引き締め的であるとし、「次第に需要を削り、物価上昇率を目標水準に戻していく」と述べた。また、ロイター通信によると、ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は6日、カリフォルニア州でのイベント前に「最終的にはわれわれは利下げを行う」とコメントし、現在の金融政策は「非常によい状態にある」とした。

これらの発言はいずれも、物価上昇率が高止まりする中でも利上げの可能性は否定した、FRBのジェローム・パウエル議長の1日の連邦公開市場委員会（FOMC）後の記者会見に沿った内容だ。また、3日発表の4月雇用統計では非農業部門の就業者数の前月比増加幅が17.5万人まで低下するなど、労働市場の過熱感が和らいでおり、物価上昇圧力が弱まっていくとの見通しも膨らんでいる。LSEGのデータによると、投資家の動向から算出される、金融市場が見込む12月FOMC後の政策金利の水準は日本時間7日午前10時30分の段階で4.894％で、FOMC前の約5.0％から低下している。

イスラエルがラファを攻撃し、中東情勢は緊迫

ただ、今後のS&P500の見通しは中東情勢の先行きに左右されることもありそうだ。欧米メディアによると、イスラエル軍は6日夜、イスラム組織ハマスが拠点を置くパレスチナのガザ地区南端にあるラファに対する攻撃を行っていると発表。ラファには戦火を逃れた100万人以上のパレスチナ人がいるとされ、米国などがイスラエルに自制を求めていただけに緊張感が高まっている。一方、ハマスは仲介役のエジプトとカタールが提示した休戦案に応じると表明。しかしイスラエル側は合意できる内容ではないと反発している。ハマスは10月7日にイスラエルを攻撃して今回の戦闘の発端を開き、依然として百数十人のイスラエル人を人質にしているとされる。

イスラエルのラファに対する攻撃の規模は明らかではなく、イスラエルは休戦協議を継続する意思を示しているもよう。今後のラファへの攻撃の進展や休戦協議の行方で、投資家のリスク回避姿勢が強まり、S&P500を下押しすることも考えられそうだ。