米国株失速も エヌビディアの見通しに弱さ S&P500最高値に不安
アメリカのS&P500はエヌビディア決算が逆風になる見通し。週次の失業保険関連統計や7月PCE物価指数の結果も注目される。
アメリカの株式市場に下落圧力がかかった。S&P500種株価指数は28日の終値で最高値まで1.3%の水準。しかし取引時間終了後に半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が公表した2024年8-10月期の見通しは弱く、時間外取引で半導体株がそろって下落している。エヌビディアは人工知能(AI)ブームの勢いを象徴する銘柄として株式市場を引っ張ってきただけに今後の失速が懸念される。米国経済をめぐっては労働市場の健全性と物価上昇の鎮静化の両立が難しくなる可能性もくすぶっており、投資家の間で今後の見通しが悪くなることも考えられそうだ。
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アメリカのS&P500は最高値更新の決め手欠く
S&P500(SPX)の28日の終値は前日比0.60%安の5592.18。7月16日につけた最高値(5667.20)まであと1.32%の上昇で到達する水準だ。ただ、S&P500は8月20日以降、前日比での値下がりと値上がりを繰り返す、見通しがつきにくい展開となっており、最高値更新に向けた決め手にかけていた。
こうした中、注目が集まっていたエヌビディアの2024年5-7月期決算は総収入や1株当たり利益(EPS)が市場予想を超える好決算だった。しかし8-10月期の見通しは総収入の前期比での伸び率が一桁にとどまるなど、AIブームを背景にした半導体需要の急成長の維持に不安を残す内容だった。
エヌビディアの決算を受けて半導体株はそろって下落
エヌビィデアの発表をうけた28日の時間外取引ではエヌビディアの株価(NVDA)が一時、115ドル台をつけ、28日終値から8%超の下落となった。このほかブロードコム(AVGO)や半導体製造装置のアプライド・マテリアリズ(AMAT)の株価も下落。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価も一時、120ドルを割り込み、28日終値(125.32ドル)から4%超の値下がりとなった。これらの半導体株はエヌビディア決算への期待もあって8月中旬から値上がり傾向が出ていたが、その後は失速気味だった。
半導体株の勢い喪失はS&P500全体を下押しする可能性がある。半導体株は7月17日、ドナルド・トランプ前大統領が半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)が拠点を置く台湾の防衛に懐疑的な発言をしたとして急落。また、TSMCが4月18日に半導体市場の2024年の見通しを下方修正した際も、半導体株の下落につながった。いずれのケースでも半導体株をめぐる投資家の不安がS&P500の値下がりを招いている。
労働市場や物価関連の指標がS&P500の見通しを左右か
またS&P500には米国経済の先行き不安もつきまとう。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は23日のワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で9月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを事実上予告。同時に労働市場の冷え込みに対しても警戒感を強めている。
このため、29日午前8時30分(日本時間29日午後9時30分)に発表される18-24日週の新規失業保険申請件数は労働市場の不安を高める可能性がある。ロイターがまとめた事前予想は前週と同じ23.2万件で、労働市場の弱さが感じられればS&P500にとって逆風となりそうだ。
また30日午前8時30分(日本時間30日午後9時30分)発表の7月の個人消費支出(PCE)物価指数も米国経済の見通しを左右する。事前予想では総合指数の伸び率が前年同月比2.6%、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が2.7%となり、いずれも前月から伸び率が大きくなる見通しだ。PCE物価指数の結果が予想よりも上振れ、米国の物価上昇の根強さがFRBの利下げを難しくし、結果として失業率上昇などにつながるというシナリオが投資家心理を暗くすれば、やはりS&P500の今後の見通しを悪くする材料になる可能性がある。
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