米国株、上昇停止 S&P500に金利高の影 エヌビディア独り勝ちか
アメリカのS&P500は21日に小幅安。約3か月ぶりの高さになった長期金利が悪材料となった。エヌビディアを除けば、半導体株も不振だ。
アメリカの株式市場の上昇にブレーキがかかった。S&P500種株価指数の21日の終値は前週末比で小幅安となり、2営業日連続の最高値更新はならず。長期金利(10年物米国債利回り)が7月下旬以来約3か月ぶりの高さとなったことが重荷となり、中小型株の値下がりも続いている。米国の株式市場は経済の堅調さを受けて上昇を続けてきたが、割高感の高まりもあって、上値を追うことへの警戒も出てきているようだ。一方、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)の株価は21日に4%超上昇しており、人工知能(AI)ブームへの期待は続いている。ただ、エヌビディア以外の株価には力強さが欠けており、AIブームがS&P500の今後の見通しを明るくする度合いが小さくなっている可能性もある。
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アメリカのS&P500は最高値から後退 長期金利は約3か月ぶり高水準
S&P500(SPX)の21日の終値は前週末比0.18%安の5853.98で、18日につけた最高値(5864.67)から後退した。長期金利が21日のニューヨーク債券市場の終値で4.182%まで上昇し、7月26日(4.200%)以来の高さになったことが投資家心理を暗くした。
長期金利の上昇は中小型株の不振としても現れている。中小型株の代表的な株価指数のラッセル2000(RUT)の21日の終値は前週末比1.60%安の2239.71で、3営業日続落となった。ラッセル2000は18日までの1週間では1.87%高となり、S&P500の0.85%高をしのぐ勢いだったが、長期金利上昇の逆風をより強く受けた形だ。中小型株企業は大企業に比べて変動金利による借り入れが多く、金利上昇で業績の見通しが悪くなりやすいとされる。
FRBの利下げ見通し後退 S&P500の割高感は3年5か月ぶり高さ
長期金利上昇の背景にあるのは米国経済の堅調さが米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースの鈍化につながるとの見方だ。ロイターによると、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は21日のウィスコンシン州での経済イベントで、今後の数四半期の利下げが「緩やかになる」との見通しを示した。CMEグループのデータによると、FRBが11月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で合計0.5%幅の利下げを決めることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間22日午前11時段階で64%程度。前日朝の76%程度から低下している。
米国経済の堅調さは株高要因だが、金利水準が高止まりすれば株式の投資先としての魅力を相対的に低くする効果も生む。しかもS&P500では割高感も強まっており、投資家にとっては見通しが悪い状況が生まれていることも確かだ。LSEGによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は17日以降は21.94倍となっており、2021年5月5日(21.98倍)以来の高さとなっている。
半導体株はエヌビディアの独り勝ちか 5営業日ぶりに最高値更新
一方、決算発表シーズンが始まる中、エヌビディアの株価(NVDA)は21日に前週末比4.14%高と大きく伸び、5営業日ぶりに最高値を更新した。15日に伝わったオランダ半導体製造装置大手ASMLホールディング(ASML)の2024年7-9月期決算発表が半導体株を揺らしたダメージを感じさせていない。AI開発やサービス展開に不可欠な高性能半導体を供給するエヌビディアに対する投資家の期待は強いままのようだ。
ただ、エヌビディア以外の半導体株の21日の値動きは冴えなかった。クアルコム(QCOM)は5営業日続落の前週末比1.12%安。ASMLと同業のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も1.02%安となり、18日の1.70%高から失速した。さらにS&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手のアーム・ホールディングス(ARM)も0.44%安となり、2営業日続落となっている。
米国の株式市場では23日に電気自動車(EV)大手テスラの7-9月期決算発表を控えており、投資家心理が改めて揺らぐ可能性がある。テスラ自身の株価(TSLA)は21日の終値で3営業日続落となっており、投資家の期待は高まっていない。AIブームの期待を一身に受けるエヌビディアの値上がりだけではS&P500全体の今後の見通しが明るくならない可能性もありそうだ。
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