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米国株、最悪の展開警戒 S&P500週次反落 相互関税や雇用統計不安

S&P500は週次1.53%安。景気後退と物価上昇の同時進行への警戒が強まった。米国株の割高感は緩和しているが、見通しへの不安は多い。

米国株、最悪の展開警戒 S&P500週次反落 相互関税や雇用統計不安 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場に緊張感が増している。S&P500種株価指数の28日の終値は1週間前比1.53%安で、2週ぶりの反落。28日に発表された2月の個人消費支出(PCE)物価指数が予想よりも上振れ、物価上昇と景気後退が同時に進む最悪のシナリオが意識されたことが下落を後押しした。ドナルド・トランプ大統領の高関税政策への懸念は投資家の不安をかきたてており、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)など大手ハイテク株も下落が止まらない。一方、米国株の値下がりは割高感の緩和につながっており、S&P500の今後の見通しに希望がないわけではない。ただ、トランプ氏が4月2日に発動させる相互関税の内容や、4日に発表される3月雇用統計の結果次第で、S&P500への下落圧力がさらに強まる可能性もありそうだ。

アメリカのS&P500は週次1.53%安 28日の下落率は2025年で2番目

S&P500(SPX)の28日の終値は前日比では1.97%安の5580.94。トランプ氏のインタビューでの発言が投資家心理を冷やした10日(2.70%安)以来、2025年に入って2番目の下落率だった。週次での下落は4週続落だった10-14日週(2.27%安)以来2週ぶり。2月19日の最高値(6144.15)からの下落率は9.17%安となっている。S&P500は24日、トランプ氏が相互関税をめぐる強硬姿勢を軟化させたことで見通しに光が差す場面もあったが、再び暗雲が立ち込めている。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

2月PCE物価指数はコア指数が予想超え 物価上昇と景気後退の同時進行懸念

28日のS&P500の足を引っ張ったのは物価上昇への警戒感だ。朝に発表された2月のPCE物価指数の伸び率は、食品とエネルギーを除いたコア指数で前年同月比2.8%となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の2.7%を上回った。トランプ氏の高関税政策が経済の見通しを悪くする中、物価上昇が市場の想定以上に強かったことは、物価上昇と景気後退が同時に進む最悪の展開を連想させる材料となった。総合指数の伸び率は2.5%で市場予想通りだったが、投資家は悪材料に反応しやすくなっているようだ。

アメリカのPCE物価指数の伸び率の推移のグラフ

投資家の不安の高さはウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の値動きにも表れている。シカゴ・オプション取引所によると、VIX指数の28日の終値は前日比15.84%高の21.65。8営業日ぶりに20台まで上昇した。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが激しくなることへの警戒感が強いことを示す。

VIX指数とS&P500の推移のグラフ

エヌビディアの株価は週次6.82%安 アマゾン・コムは8週続落

こうした中、大手ハイテク株の値動きも冴えない。株式市場での人工知能(AI)ブームを象徴する銘柄であるエヌビディアの株価(NVDA)は28日までの週次で6.82%安となり、2週続落。中国政府がエヌビディア製の半導体が省電力基準を満たしていないことを理由に新規データセンターなどで使用しないよう求めているとの報道が悪材料になっている。このほか、アルファベット(GOOGL)も週次5.89%安、メタ・プラットフォームズ(META)も週次3.27%安。アマゾン・コム(AMZN)は週次1.78%安で8週続落だ。一方、電気自動車(EV)大手のテスラは週次5.97%高と反発したが、前週までの9週続落で株価が半減する場面もあっただけに、見通しの暗さは続いている。

エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、アルファベット、アップル、テスラ、マイクロソフトの株価の推移のグラフ

またエヌビディア以外の半導体株も不振が続く。ブロードコム(AVGO)は28日までの週次で11.76%安。半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も週次4.64%安で、5週続落となった。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価も週次9.47%安となっている。

エヌビディア、ブロードコム、アームホールディングスなどの株価の推移のグラフ

S&P500の割高感は緩和 予想PERは20.8倍で2020年以降の平均と同程度

一方、S&P500の下落は割高感を和らげる効果も生んでいる。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は28日段階で20.8倍程度で、2020年以降の平均値(約20.7倍)と同水準だ。S&P500自体は2月19日の最高値から9%超値下がりしているが、予想1株当たり利益(EPS)は同じ期間で4%程度上昇。経済全体への不安は強まっているものの、企業業績への悪影響が明らかになっているわけではない、ともいえそうだ。

S&P500と予想株価収益率の推移のグラフ

トランプ氏の高関税は経済や企業業績に悪影響も S&P500の見通しを下押しか

ただ、トランプ氏は26日に輸入自動車に対する25%関税の4月3日発動を決めたうえ、2日には米国製品に関税をかけている国や地域からの輸入品を対象とした相互関税を発動させる考え。景気悪化に対する不安が消費の後退につながり、企業業績が悪化するとの不安が、4月以降の2025年1-3月期決算発表や業績見通しの中で強まっていく可能性もある。

さらに米国株式市場には4月4日の3月雇用統計の発表も控える。3月27日に発表された16-22日週の新規失業保険申請件数は22.4万件で、ブルームバーグがまとめた市場予想(22.5万件)を下回ってはいるが、今後のS&P500の見通しにとっては、雇用情勢への不安も大きな下押し材料となりえそうだ。

アメリカの新規失業保険申請件数と失業率の推移のグラフ

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