テスラ、値下げ戦術に痛みも 19日決算発表 販売台数と利益率の両立課題
EV大手のテスラが19日に2023年1-3月期決算を発表する。販売台数増の中で利益率は落ち始めており、値下げ戦術の是非が問われる。
電気自動車(EV)大手のテスラが19日に発表する2023年1-3月期決算は増収減益が見込まれている。テスラの販売台数は新型コロナウイルス感染拡大による生産体制の混乱の影響を受けながらもほぼ右肩上がりで成長。一方、価格が高い上位モデルの割合は低下を続けており、利益率は下がってきた。価格戦略はテスラにとって難題で、2023年に入ってすぐに打ち出した値下げは株価反転のきっかけになったが、その後の値下げでは株価の反応は鈍くなっている。株価上昇を実現するには、値下げで販売台数を増やしつつ、収益性も維持できる実績を示す必要がある。
1株当たり利益は2割減少の予想
金融情報会社リフィニティブのデータによると、テスラの1-3月期決算に関する市場予想は総収入が前年同期比24.3%増の約233億ドル、NON-GAAPベースでの1株当たり利益は20.2%減の0.86ドルと見込まれている。テスラは過去3年間12回の四半期決算のうち2回で、総収入が事前の市場予想を下回った。またnon-GAAPベースでの1株当たり利益では1回、市場予想をクリアできなかった。
テスラ(チャート)の株価はEV普及への期待を背景に値上がりを続け、2021年11月4日には409.97ドルの上場来高値を付けた。しかし2022年は一貫して値下がりし、2023年1月3日には108.10ドルまで落ち込んだ。下落率は約74%という大きさだ。その後、株価は反転し、3月以降は190ドルをはさんだ値動きを続けている。
リフィニティブによると、直近の株価と予想年間収益から算出される株価収益率(PER)は43.1倍で、自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM、チャート)の5.7倍と比べると大きく割高な水準。また中国EV大手のBYD(比亜迪、チャート)の26.2倍や、EV用電池を手掛けるサムスン電子の27.3倍と比べても高くなっている。アナリストが提示する目標株価の平均は198.7ドル。42人のうち9人が強い買い、13人が買いを推奨する一方、16人は維持を勧めている。売り推奨も2人、強い売りも2人いる。
テスラの総収入は好調を維持
テスラは一時は株価が4分の1まで下落したものの、成長性が失われていたわけではない。総収入が市場予想をクリアできなかった2022年4-6月期と7-9月期は中国での新型コロナ感染拡大の影響で上海工場が停止した時期。それでも総収入はそれぞれ前年同期比41.6%増、55.9%増を記録しており、右肩上がりのトレンドは崩れていない。
ただし、粗利益率に関しては減少傾向が出始めている。2022年1-3月に29.1%あった粗利益率はその後、3四半期連続で減少。19日発表の2023年1-3月期決算では22.3%になると見込まれている。背景にあるのは高価格帯のモデルSとモデルXの販売台数が伸び悩む一方で、比較的価格が安いモデル3とモデルYが好調だという事情だ。かつては14%近くあった高価格帯モデルの比率は、決算に先駆けて4月2日に発表された2023年1-3月期の生産・販売実績では2.5%まで低下した。
テスラにとって価格戦略は悩ましい課題だ。2023年に入って株価が反転したきっかけは1月に発表した値下げで、3月1日の投資家向けイベントで安い価格の新型車発表がなかった際は「悪材料」とみなされて株価が下落した。この意味では投資家は低価格路線を期待しているようにもみえる。しかしテスラはその後、3月と4月にも値下げを公表しているが、株価は下落で反応した。単なる値下げを繰り返すだけの戦略は投資家には歓迎されていないようだ。
世界的な普及加速が期待されるEV市場を切り開いてきたテスラに対する投資家の期待は極めて大きい。それだけに、成長性と収益性を両立させる道を示し続けなければ、投資家に背中を向けられるリスクにも直面しているといえる。
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