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2019年の米ドル相場を振り返る①

2019年もあとわずか。各市場も膠着状態となっています。そこで今日以降のレポートでは、今年の米ドル相場について振り返ります。まずは、FEDの連続利下げにもかかわらずなぜ米ドル安圧力が高まらなかったのか?今回はこの点にフォーカスしました。詳細はマーケットレポートにて。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

・焦点は7月以降の米ドル高と10月以降の米ドル安

2019年も残すところあと1週間。今年のIGマーケットレポートも27日(金)が最後となる。そこで残りのレポートでは、今年の米ドル相場について考えてみたい。
筆者は、2019年の米ドル安を予想していた。その理由は、米国経済の下振れリスクの高まりとそれを回避するためにFEDが緩和スタンスへ転じると考えたからだ。米国経済を語る上でまず重要となるのは指標データである。これらは強弱まちまちながらも、製造業を中心に米国経済が減速し始めていることを確認できた1年となった。そしてもうひとつ重要な指標があった。それがイールドカーブである。今年8月に10年債利回りと2年債利回りのイールドカーブが逆転した。この状況が発生すると、1年から1年半のタイムラグを経て米国経済は景気後退局面に陥るというのが過去繰り返してきたパターンである。もちろんFEDもこのことは重々承知している。だからこそ予防的に3回連続の利下げに踏み切った。FEDの緩和スタンス転向により米長期金利(以下米金利)は一時1.4%台まで低下する局面が見られた。しかし、おおまかな米ドル相場の方向性を示すドルインデックスの動向を確認すると、今年7月以降の利下げ局面ではむしろ米ドル高となっている。そして利下げサイクルが終息した10月以降、ようやく米ドル安優勢へと転じた。この7月以降の上昇と10月以降の下落は、2019年の米ドル相場のトレンドを語る上で、そして2020年の外為市場のトレンドを見極める上で非常に重要な動きであったと考えている。

【ドルインデックス】

DXY Dollar index ドルインデックス

・7月上昇の背景

7月から10月にかけての米ドル相場のパフォーマンスを確認すると、対先進国通貨ではオセアニア通貨での米ドル高が目立つ。そして主要な新興国通貨に対しても総じて米ドル高となっている。これらのパフォーマンスが示唆することは、「米中対立リスク=米ドル買い」ということである。このリスクが3月もしくは6月までに妥協的な合意でひとまず終息すると当初は予想されていた。しかし6月に大阪で開催されたG20後も協議の具体的な進展は見られず、8月にはトランプ米政権が対中関税をさらに強化した。米中の長期戦ムードが意識され、中国経済の動向に敏感なオセアニア通貨やリスク性の高い新興国通貨に売り圧力が高まり、米ドル相場をサポートしたというわだ。また、もうひとつ注視すべき点がある。それは、この期間(7月~10月)に欧州通貨安が最も進行したということである。英ポンドはブレグジットリスク、ユーロはファンダメンタルズリスクに直面し、それぞれ1.1957(ポンドドル、9/3安値)、1.0877(ユーロドル、10/1安値)まで下落した。予想外の長期戦となった米中対立、予想外の混乱に陥った英国政治、そして予想外に長引いた欧州経済の不振が重なったことで、FEDの利下げインパクトがかき消された。これが7月から10月の米ドル相場上昇の背景だった。

次回のレポートでは10月以降の米ドル安について考えてみたい。

【米ドル相場 2019年のパフォーマンス:対先進国通貨】

米ドル パフォーマンス 騰落率


【米ドル相場 2019年のパフォーマンス:対新興国通貨】

米ドル相場 新興国通貨 騰落率 パフォーマンス

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