7月の米ドル相場の注目材料と今週のドル円の見通し
6月は米ドル安と円安が進行した1ヶ月となった。今月も米ドル安のトレンドが続くかどうか?は、経済指標次第となろう。今週はアメリカの雇用関連指標が多く発表される。特に7日の6月雇用統計に市場参加者の注目が集まろう。ドル円の展望は?注目のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※今週のユーロ円の見通しについてはこちらのレポートをご覧ください。
※次回のIG為替レポートは、7月5日(水)に配信します。
サマリー
・6月の外為市場は米ドル安と円安が同時に進行した
・7月も米ドル安のトレンドが続くかどうかは雇用と物価の指標次第となろう
・今週の注目指標はアメリカの雇用関連指標、特に6月雇用統計が焦点に
・今週のドル円の見通しおよび注目しておきたいチャートポイントについて
6月の外為市場の動向、7月の展望と注目の材料
6月は米ドル安と円安が同時に進行
6月の米ドル相場は、対円以外の主要な通貨で米ドル安が進行した。同時に円安も進行した(下のパフォーマンスチャートを参照)。
リスク選好相場で上昇しやすい資源国や新興国の通貨に対して米ドル安や円安が進行した状況を考えるならば、これらの状況が同時に発生した主因は、日米の株高進行(リスク選好相場)にあったと筆者は考えている。
7月の展望と注目の材料
そしてドル円(USDJPY)の上昇は、「弱い米ドルに対して円がさらに弱かった」という状況を示している。この主因は、日米の金融政策スタンスの差にあろう。7月27-28日に開かれる金融政策決定会合で植田日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利差、YCC)の修正に動く場合、外為市場では調整の円買い圧力が高まる展開が予想される。
だが、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げスタンスを維持する限り、金融政策スタンスの差が意識され続けよう。ゆえに7月の日銀イベントが円買い要因となっても、一時的な現象で終わる可能性を想定しておきたい。
一方、7月も米ドル安のトレンドが続くかどうかは、経済指標次第となろう。特に雇用と物価の経済指標次第で米ドル相場のトレンドが左右されると予想する。
今週は、アメリカの雇用関連指標が多く発表される。市場参加者が最も注目するのが、7日の6月雇用統計となろう。
6月の米ドル相場と円相場のパフォーマンス
今週の注目材料は6月の米雇用統計、焦点は賃金動向
5月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数を含め、総じて予想以下の結果となった。
インフレの鈍化を阻む要因として注目されているサービス価格は前年同月比で5.3%と、4月の5.5%から低下した。
アメリカのインフレは、連邦準備制度理事会(FRB)の物価目標2%を超える水準で推移し続けているが、5月のPCEデフレーターはその圧力が緩やかに後退していることを示唆する内容となった。
アメリカPCEデフレーターの推移
しかし、6月の雇用統計で労働市場のタイトな状況が確認される場合は、「インフレが鈍化しない」リスクが意識されよう。特に注目されるのが賃金(平均時給)の動向である。市場予想は前月比で0.3%、前年同月比で4.2%であり、5月に続き賃金の伸びが抑制される見通しとなっている(下チャート、前年同月比のラインチャートを参照)。
非農業部門雇用者数変化や失業率が予想の範囲内となり、賃金インフレの抑制傾向が確認される場合は、米ドル安の展開が予想される。
一方、賃金の伸びに再び上昇の圧力が高まる場合は、非農業部門雇用者数変化や失業率が予想の範囲内であっても、連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーが示した年内あと2回の追加利上げの予想に向かって、市場の予測が上方修正されることが予想される。
短期金融市場が予想する米利上げ政策の織り込み状況を確認すると、5.3%付近で張り付いていたターミナルレートが5.4%までジワリと上昇している。この状況で非農業部門雇用者数変化と平均時給が予想以上となり、かつ失業率が低下すれば、インフレ抑制のためにFRBが金融引き締め政策を長期に渡り続ける(利上げサイクル終了後も高水準で政策金利を維持する)との思惑が高まることで、米金利の上昇と米株安が同時に発生する展開が予想される。
米国市場がこの展開となれば、外為市場で米ドル高の圧力が最も高まる展開が予想される。
アメリカ雇用統計の推移
今週のドル円の見通しと注目のチャートポイント
調整の下値トライとチャートポイント
政策修正の可能性がある次回の日銀金融政策決定会合まで約1ヶ月の時間があることを考えるならば、引き続き日米中銀の金融政策スタンスの差がドル円のサポート要因となろう。
しかしいくつかの理由から、今週のドル円(USDJPY)は調整の下値トライを意識しておきたい。
その最初の理由が、通貨オプション市場の動きである。先週以降、1ヶ月のリスクリバーサルがドル・プットへ急速に傾く状況にある(ラインチャートの青ラインを参照)。
ドル円とリスクリバーサルのチャート
そしてドル円が145円台へ上昇した後、すぐに反落した先月30日の動きは、市場参加者が145円以上の水準での円買い介入を警戒していることを示唆している(現状では日本の通貨当局が円買い介入に踏み切る可能性は低い)。
テクニカルの面では、ストキャスティクスやRSIなどオシレーター指標も短期的な相場の過熱感(買われ過ぎ)を示唆する状況が続いている(日足のテクニカルチャートを参照)。そしてRSIではデッドクロスが示現しつつある。
また、13週MAとのかい離率が5%付近まで拡大すると、相場が反落する状況が見られる(下の週足チャート参照)。
経済指標では上で述べた6月雇用統計の動向や、同月のISM製造業/非製造業景況感指数など他の重要指標が米ドル売りのイベントになる可能性もある。
今週、上で述べた理由のいずれかにより「米ドル売り/円買い」の圧力が高まることでドル円が下値をトライする局面では、5日MA(今日現在144.34レベル)の攻防が目先の焦点となろう。
ドル円がこの移動平均線(10日MA)を完全に下方ブレイクする場合は、10日MA(今日現在143.51レベル)そして短期サポートラインと、重要ラインの維持に成功するかどうか?この点に注目したい(日足のテクニカルチャートを参照)。
ドル円のチャート:日足
上昇トレンドを維持する場合の焦点は?
一方、ドル円(USDJPY)が上昇トレンドを維持するか、上で述べた調整の反落相場がすぐに終息する場合は、IG為替レポートで指摘してきた最初のレジスタンスポイント145.00-20ゾーンを上方ブレイクするかどうか?この点を確認したい。
先月30日の高値145.07レベルの突破は、レジスタンスゾーンの上限145.20レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円が上のゾーン(レジスタンスの上限)を完全に突破する場合は、さらなる上値トライのシグナルとなろう。
反落の局面でドル円が145円台を維持する場合も、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。これらの状況が確認される場合、次の上値の焦点は、146円台のトライとなろう。
IG為替レポートでは、昨年の最高値151.94レベルと今年1月の安値127.22レベルのフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準146.11レベルのトライおよびブレイクアウトに注目している。
ドル円が146.11レベルをも上方ブレイクすることになれば、IG為替レポートで何度か取り上げたV計算値の水準146.35レベルが次の上値の焦点となろう。
ドル円のチャート:週足
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