米地銀に続く試練 KBW株価指数が2か月で3割下落 乱高下の銘柄も
シリコンバレーバンクの経営破綻から約2か月で地銀株は3割下落した。FRBの利上げを背景とした地銀経営の苦境は当面続きそうだ。
シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻から約2か月が経つ中、米国の地銀株に試練が続いている。3月10日のSVBの経営破綻前との比較では、地銀株の値動きを示す株価指数は約3割下落。米当局は5月1日のファースト・リパブリック銀行の経営破綻処理で不安の鎮静化を狙ったが、投資家の信頼は完全には戻っていない。地銀経営の逆風になってきた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが打ち止めになるかどうかはいまだ見通せず、当面は地銀株の先行きは晴れそうにない。
地銀株連動のETFも大幅下落
地銀株の下落はSVBが巨額損失を発表した3月8日から加速した。地銀株の値動きを示すKBW地銀株指数の5月9日の終値は79.48で、巨額発表前日からの下落率は29.0%。米国の主要な地銀株で構成されるiシェアーズ米国地方銀行ETF(チャート)も同じ期間で34.4%下落している。
米当局はファースト・リパブリック銀の経営破綻で、全預金をJPモルガン・チェースが引き継ぐプランをまとめ、不安解消を図った。しかしKBW地銀株指数は1日以降の7営業日中6営業日で前日比マイナスを記録。4月28日から5月9日にかけての下落率は11.2%となっている。
半値の後に1.8倍になる地銀株も
こうした中、投資家から経営を不安視されている地銀の株価は乱高下している。地銀持ち株会社のパックウェスト・バンコープ(チャート)やウェスタン・アライアンス・バンコーポレーション(チャート)は3日から4日にかけて事業売却を検討していると報じられ、パックウェストの株価は4日に約5割、ウェスタン・アラインアンスは約4割下落した。しかし5日には大きく買い戻され、株価はそれぞれ前日の1.8倍、1.5倍に跳ね上がっている。
地銀の経営が不安視される背景にはFRBの利上げがある。SVBの巨額損失発表は市場金利の上昇で保有している債券の価値が下落したことなどが理由だ。またファースト・リパブリック銀の経営破綻に際しては、FRBの利上げに伴って米国債など安定資産の利回りも上がる中、預金者がより高い金利を求めて資金を移動させている実態も注目された。
CMEグループのデータによると、6月13、14日のFOMC(連邦公開市場委員会)での0.25%利上げについて、投資家の動きから算出される確率はファースト・リパブリック銀が破綻した1日に0%まで低下した。しかし、その後はじわじわと利上げ観測も戻ってきており、日本時間10日午後1時時点では21.5%と、4月28日の水準までほぼ戻っている。
FRBの利上げ継続は経営が不安視されている地銀にとって苦境が深まることを意味する。米国の物価上昇が収束し、FRBの利上げ打ち止めが明確になるまでは、地銀の厳しい経営環境が続くことになりそうだ。
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