【ドル円の週間展望】植田会見で円安再び、147円のトライか?「米ドル安vs円安」か?米経済指標にらみ
植田日銀総裁の会見を受け、再び円安のムードが高まっている。今週の米経済指標で景気懸念が後退すれば、ドル円は147円を視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい。一方、さえない米経済指標で「米ドルvs円安」の戦いとなれば、ドル円は下値をトライする展開が予想される。
記事のポイント
・植田日銀総裁の会見で再び円安のムードが高まっている
・今週の米ドル相場は、経済指標にらみの展開となろう
・強い米経済指標が続けば、ドル円は147円台が視野に入ろう
・一方、「米ドル安vs円安」の戦いとなれば、ドル円の下値トライを想定しておきたい
植田会見で追加利上げの期待が後退
日銀の植田和男総裁は先週20日の金融政策決定会合の後、定例の記者会見に臨んだ。
先週20日のIG為替レポート「米英の次は日銀会合、植田総裁が考える「賃金と物価の好循環」の“確度”に注目、ドル円の見通し」で指摘した焦点の一つ、急速な円安の修正が物価の見通しへ及ぼす影響については、「ここ最近の為替動向も踏まえると、年初以降の円安に伴う輸入物価の上昇を受けた物価上振れリスクは、相応に減少しているとみている」とし、政策判断にあたっては様々なことを確認していく時間的な余裕があるとの見方を示した。
そしてもうひとつの注目材料だった海外の景気動向については、「海外経済、特にアメリカ経済の先行きに関して、若干不透明性を高めている」と指摘し、追加利上げの時期を吟味するうえで焦点になると指摘した。
円安の修正が進行していることで物価の上振れリスクが後退していること、そして海外景気の動向、特に一番重要なアメリカ経済の先行きリスクについて言及してきたことは、年内の追加利上げの期待を後退させる要因となった。
この点については、20日の国内債券市場の動きが示唆している。金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは小幅に低下した。ドル円のトレンドに影響を与える5年債と10年債の各利回りも同じ低下した。そして後者2つの利回りは、低下のトレンドへ転じつつある(下のチャート、赤矢印を参照)。
日本の金利動向:日足 2024年7月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
また短期金融市場では、12月に予想される政策金利の水準が0.3%台で推移する状況が続いている。そして、次回の利上げの可能性を来年の半ば以降と想定している。
植田日銀総裁の会見を受け市場が抱く追加利上げの期待が後退していることを、国債利回りの動向と短期金融市場の織り込み度合いが示唆している。
日銀 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 9月20日時点の予想推移
FRB、なおも残る0.5%利下げの可能性
先週の外為市場は米ドル安優勢の展開となった。対円で2%超上昇したが、これは“ハト派”の植田会見を受けた円安の影響が大きい。
また、日本円以外で明確に米ドル高となったのは、6月の総選挙・大統領選挙以降、財政リスクが意識され主要通貨で下落トレンドにあるメキシコペソのみである。日本円とメキシコペソ以外の主要な通貨では米ドル安優勢の展開となった。
米ドル相場の騰落率:9月16~20日
ブルームバーグの為替データで筆者が作成
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、景気のソフトランディング(軟着陸)を確実に達成するために、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の倍となる50ベーシスポイント(0.5%)の利下げを決定した。
パウエルFRB議長は、「大幅利下げが新たなペースと見なすべきではない」と市場にくぎを刺した。しかし短期金融市場では、次回11月のFOMCでもパウエルFRBが0.5%の大幅利下げに踏み切る可能性を意識する状況にある。
また、今年12月末までの政策金利が4.1%台まで引き下げられる可能性についても織り込み始めている。9月に示されたFOMCの参加者が想定する政策金利の予想中央値は4.4%だった。市場はパウエルFRB以上に、利下げのペースが速まる可能性を意識していることになる。
今後発表される経済指標で景気の減速懸念を強める内容が続けば、短期金融市場が想定する連続の大幅利下げ予想にFOMCの予想が収れんされていくことを想定しておきたい。
FOMC 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 9月20日時点の予想推移
再び米経済指標にらみの相場へ
パウエルFRBのターゲットは、「インフレの抑制」から「景気のソフトランディング」にシフトしている。ゆえに、今後のアメリカ経済指標で注目すべきは、景気に関連した指標となろう。
今日は、9月の購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。9月は製造業の活動が8月の47.9 から48.6へ改善する見通しにある。
しかし、アメリカはサービス業の国である。サービス部門の予想は55.3と、8月の55.7から縮小の見通しにある。このため総合指数の予想は54.7と、8月の54.6からほぼ横ばいの見通しとなっている。サービス部門が予想以上の落ち込みとなれば、総合指数の減速につながるだろう。PMI速報値の落ち込みは、市場が抱く大幅利下げの期待を高める要因となろう。このケースでは、米ドル安の展開を想定しておきたい。
一方、9月のPMI速報値が予想外に上昇する場合は、景気懸念が後退しよう。強い経済指標は米ドル高の要因となろう。
また今週は、24日に9月の消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)、そして26日に週間の新規失業保険申請件数が発表される。PMI速報値と同じく、市場が抱く大幅利下げの思惑に影響を与える可能性がある。
米国 購買担当者景気指数(PMI):21年9月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円の週間展望、147円台が視野に
植田日銀総裁の会見を受け、ドル円(USD/JPY)は上値をトライする可能性が高まっている。
この点については、通貨オプション市場の参加者も意識している。ドル円のリスクリバーサル(1週間 / 1ヶ月)はドルコールへ傾いている。一方、予想変動率は低下基調へ転じている。これらの動きは、短期的なドル円の上昇相場を通貨オプション市場の参加者が意識していることを示唆している。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年7月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
また、日足のRSIとMACDの動きをみると、ともにゴールデンクロスへ転じ、ドル円の地合いが強まる可能性を示唆している(下のチャート、緑矢印を参照)。
今週、ドル円の上昇幅が拡大する場合、目先の焦点はIG為替レポートで注目している144.00レベルのブレイクとサポート転換となろう(下のチャート、赤矢印を参照)。日足ローソク足の実体ベースでドル円が144円台へしっかりと上昇すれば、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準145.65レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する。
しかし、目先の上限として真に注目すべきは、145円台ではなく147円台である。147.00レベルは、8月下旬の反発相場を止めた経緯がある。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準(147.08)にあたる。また、今日現在で50日線が147.20台まで低下している。
再び円安の圧力が高まるなかで、強い米経済指標の内容が続けば、今週のドル円は147円台までの反発を想定しておきたい。
147円突破なら次の焦点は?
筆者の予想を超えてドル円が147円台へしっかりと上昇してくる場合は、149円台を視野に上昇幅が拡大する可能性が高まろう。全戻しの水準149.40レベルの攻防は、ダブルトップ形成か?それとも150円を目指すのか?を見極める重要なチャート水準である。
ドル円のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
「米ドル安vs円安」の戦いなら下値トライ
一方、今週の米経済指標で景気懸念を強める内容が続けば、米ドル安の要因となろう。「米ドルvs円安」の戦いとなれば、ドル円(USD/JPY)の下値トライを予想する。
ドル円の下落局面では、今日現在143.40前後で推移している21日線の「サポート転換」が最初の焦点となろう。だが、さえない米経済指標が続けば、ドル円は21日線をあっさりと下方ブレイクするだろう。
ドル円が21日線以下の攻防となる場合は、以下の15分足チャートにプロットした2つのフィボナッチ・リトレースメントの攻防注目したい。
筆者が注目しているのが、142.40レベルと142.00レベルの攻防である。前者の水準142.40を挟んで半値戻しの水準(142.46)と76.4%の水準(142.38)が展開している。サポート転換の可能性がある142.00レベルは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(141.98)にあたる。
ドル円の上昇幅が拡大すれば、リトレースメントの水準も切り上がる。その都度、新たな水準と過去の攻防を確認しながら重要な水準を見極めたい。
また、分足(本レポートでは15分足を採用)のRSIとストキャスティクスで相場の過熱感を確認しながら反発と反落のタイミングをはかりたい。
ドル円のチャート:15分足 9月18日以降
出所:TradingView
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