ドル円の週間展望、米雇用統計でドル安進行、米CPI次第ではさらなるドル売りも
先週の外為市場では米ドル安が進行した。ドル円(USD/JPY)は米ドル安が円安の相殺要因となり、調整の反落ムードにある。市場参加者の関心は、11日の米消費者物価指数(CPI)に集まっている。雇用統計と同じくCPIも米金利の低下要因となれば、ドル円の調整相場がもう一段進行する可能性があろう。
この記事のポイント
・雇用統計など先週の重要指標は米金利の低下要因となった
・米金利の低下はドル安の圧力を高め、ドル円の上昇を抑制している
・今週は、米CPIでドル安がさらに進行するか?この点に注目したい
・ドル円、今週の見通しと注目のサポート水準について
ドル円、今週の見通しとサポート水準
新たな下値水準の見極め
直近のドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、162.00レベルがレジスタンスとなり、先週後半に2日連続で陰線引けとなった(日足チャート、赤矢印を参照)。その過程で10日線を下方ブレイクした。RSIはデッドクロスの状況にある。また、MACDの上昇トレンドが一服し、RSIと同じくデッドクロスを形成するムードにある(ともに日足チャート、赤矢印を参照)。
これらテクニカルの動向を考えるならば、今週のドル円は、新たな下値の水準を見極めることが焦点の一つとなろう。
ドル円のチャート:日足 今年4月以降
出所:TradingView
注目のサポート水準
今週のドル円(USD/JPY)が調整の反落相場となる場合は、3つの点に注目したい。
まずは、心理的節目である160.00レベルの維持である。この水準がサポートラインへ転換すれば、地合いの強さを市場参加者に印象付け、162円を目指すトレンドが続くだろう。
一方、ドル円が160円を完全に下方ブレイクする場合は、21日線の攻防を予想する。この移動平均線は今日現在、159.32レベルで推移している。
ドル円が21日線をも難なく下方ブレイクする場合は、158円台の攻防を意識したい。158.00は「サポート転換」を意識する水準である。
上で述べた3つのサポート水準をドル円がトライするシグナルとして、下の1時間足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。
23.6%の水準160.47レベルは、ローソク足の実体ベースで相場をサポートしている。ドル円が160.47レベルを下方ブレイクした後、この水準が相場の反発を止める場合は、160.00のトライそして下方ブレイクを想定したい。
ドル円が21日線をトライするシグナルとして、154.50レベルを起点とした短期サポートラインの攻防に注目したい。このラインは今週、159円台で推移する。
ドル円が21日線だけでなく、半値戻しの水準158.82レベルをも下方ブレイクする場合は、158.00をトライする可能性が高まろう。
158.08レベルはフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。「サポート転換」だけでなくテクニカルの面でも、「158.00」を重要なサポート水準と想定しておきたい。
ドル円のチャート:1時間足 6月以降
出所:TradingView
上値の焦点は162円台の維持
上で述べたとおり、今週のドル円(USD/JPY)は下値のトライを警戒したい。しかし、円安トレンドの根強さを考えるならば、ドル円の下落は「調整の反落相場」になると予想する。
ドル円が上昇トレンドを維持する場合は、162.00の上方ブレイクが最初の焦点となろう。
162円の攻防では、もうひとつ注目すべきことがある。それが「162.00のサポート転換」である。レジスタンスとして一度意識された水準がサポートラインへ転換すれば、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
162円を上方ブレイクした勢いを保ちながらドル円が163円台へ上昇する場合は、昨年の重要な高安で算出されるフィボナッチ・エクステンション100%「165.00」の水準を視野に上昇幅が拡大する展開を予想する。
ドル円のチャート:週足 昨年11月以降
出所:TradingView
米ドル安が進行、先週は対円でも下落
米ドル安の進行
ドル円(USD/JPY)の反落要因として注目したいのが、米ドル相場の動きである。
先週の外為市場では、対主要通貨で米ドル安が進行した。根強い売り圧力に直面する日本円でも、米ドルは小幅に下落した。
米ドル相場の動向:先週のパフォーマンス(7月1日~5日)
50日線をブレイクしたドル指数、次の焦点は100日線の攻防
米ドル相場の大まかなトレンドを示すドル指数(DXY)は、7月に入ると下落幅が拡大し50日線を完全に下方ブレイクしている。
日足のMACDはデッドクロスの状況にある。RSIでも同じ状況にあることを考えるならば、今の米ドル相場は弱気地合いに転じている。今週、ドル指数が100日線をも下方ブレイクすれば、その地合いがさらに進行するだろう。
104.76レベルで推移している100日線をドル指数が完全に下方ブレイクする場合は、今年の3月下旬以降、米ドル安を止め続けている重要なサポートライン「104.00」をトライする可能性が高まろう。
ドル指数のチャート:日足 今年3月以降
出所:TradingView
焦点は米消費者物価指数(CPI)
さえない経済指標で米金利が低下
米ドル安の要因は、アメリカの10年債利回り(以下では米金利)の動きにある。7月以降の動きを確認すると、米金利は4.5%手前まで上昇した後、再び低下へ転じている。
注目すべきは7月3日以降、米金利の低下幅が拡大していることである(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。
アメリカ10年債利回りのチャート:1時間足 6月28日以降
出所:TradingView
今月3日に発表された6月のADP雇用統計とISM非製造業景気指数はともに市場予想を下回った。特に後者のISM非製造業景気指数は48.8と前月の53.8から低下し、景気判断の分かれ目である「50」を下回った。
そして5日の6月雇用統計では、4月と5月の非農業部門雇用者数が下方修正された(合計で11万1000人の下方修正)。さらに失業率は4.1%まで上昇した。後者の失業率は、サーム・ルール※の経験則に従うならば、景気後退の可能性を意識する状況に向かっている。
市場予想を下回った重要指標と米金利が低下基調へ転じたタイミングが一致している状況は、米債市場が経済指標にらみの状況にあることを示唆している。この動きに連動し米ドル安が進行した状況も考えるならば、今週も経済指標が米ドル相場のトレンドを左右するだろう。
※サーム・ルール:直近3ヶ月の平均失業率が、過去12ヶ月の最低値から0.5ポイント上昇したとき、景気後退の可能性が高いという経験則
サームルール景気後退指標の動向:23年以降
6月の米CPIに注目が集まる
今週、米金利が低下のトレンドを維持するのかどうか?この点を見極めるうえで、重要となるのが11日に発表される6月の消費者物価指数(CPI)となろう。注目はコア指数の動向である。現時点での市場予想は、前月比と前年同月比でともに5月から横ばいの見通しにある。
コア指数だけでなく、FRBが注視する「スーパーコア」のインフレ率(住居費を除いたサービス価格)でもインフレの粘着性が示される場合は、米金利に再び上昇の圧力が高まることが予想される。外為市場では、米ドルのショートカバー(買戻し)が予想される。
現在、短期金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が9月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを行う可能性を意識する状況にある。6月CPIのコア指数とスーパーコアでインフレが鈍化の傾向にあることが確認される場合は、年2回の利下げに対する思惑がより強まることで米金利の低下が予想される。
米金利の低下は、米ドル安の進行を促すだろう。そして米ドル安が円安の相殺要因となることで、ドル円(USD/JPY)の調整相場(反落)を想定しておきたい。
アメリカ消費者物価指数(CPI)の動向:23年6月以降
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