英ポンド、対米ドルで下落幅拡大 ポンド円は米経済指標にらみ、今日の見通し
9月CPIの鈍化を受け、短期金融市場では英中銀が11月と12月の金融政策委員会(MPC)で連続利下げに踏み切る可能性を意識し始めている。この観測は英ポンド売りの圧力を高めている(対米ドル)。しかしポンド円は、ドル円の次第で底堅さを維持する可能性がある。そのドル円は現在、米経済指標にらみの状況にある。
記事のポイント
・9月CPIの結果を受け、英中銀の連続利下げ期待が高まっている
・さらに下値をトライするムードが高まるポンドドル、1.29が視野に
・板挟みのポンド円、トレンドは米経済指標の内容次第
・ポンド円、注目のチャートポイントについて
英ポンド、対米ドルで下落幅が拡大
対米ドルで英ポンドの下落幅が拡大している。下の日足チャートで直近のトレンドを確認すると「上昇」→「下落」→「レンジ」と推移し、16日の市場でレンジを下方ブレイクした(下の日足チャート、赤矢印を参照)。そして9月11日の安値1.30も完全に下方ブレイクした。
10日線で相場の戻りが止められている状況も考えるならばポンドドルの地合いは弱く、1.2900を視野に下落幅が拡大する可能性が高まってきた。
再びポンド売りが強まったきっかけは、昨日発表された9月の消費者物価指数(CPI)だった。総じて市場の予想以上にインフレが鈍化したことで、11月の金融政策委員会(MPC)に続き12月の会合でも英中銀(BOE)が連続で利下げを行う可能性を短期金融市場は急速に織り込み始めている。
ポンドドルのチャート:日足 2024年8月以降
出所:TradingView
ポンド売りの影響はポンド円にも波及
ポンド売りの影響は、対円にも波及している。直近のトレンドを日足チャートで確認すると、連日の陰線引けで現在は10日線を下方ブレイクする状況にある。そして196.00レベルがレジスタンスのラインとして鮮明になってきた。
RSIはデッドクロスへ転じている(下の日足チャート、紫ラインを参照)。MACDでもデッドクロスが確認される場合、ポンド円がさらに下値を目指すサインになり得る。
ポンド円のチャート:日足 2024年8月以降
出所:TradingView
しかし、ポンド売りがポンド円の重しとなっても、下落幅は限定的となることが予想される。
通貨オプションのリスクリバーサル(1週間 / 1ヶ月)はポンド・プットへ傾く状況にあるが、今のところ大きな変動は見られない。
一方、予想変動率の動きを確認すると、1週間のそれは8%台、1ヶ月のそれは10%前後と低い水準で安定した状況にあり、こちらも今夏のリスク回避局面で見られた大きな変動は見られない。
現時点でのリスクリバーサルと予想変動率の動向を総合的に考えるならば、通貨オプション市場の参加者はポンド円の下落を意識しつつも、その幅は限定的となる可能性を意識していることがうかがえる。
ポンド円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年6月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円 150.00をロックオン
ポンド円(GBP/JPY)の下落幅が限定的となる可能性を高めるのが、ドル円(USD/JPY)の動向である。
直近のトレンドを日足チャートで確認すると、短期の10日線と中期の50日線との間でゴールデンクロスが形成され、完全に150.00をロックオンしている(下の日足チャート、赤矢印を参照)。
ソフトランディング期待の高まりでパウエルFRBの利下げペースが緩慢になるとの思惑が強まる一方、欧州中央銀行(ECB)は連続利下げに追い込まれる可能性を短期金融市場は織り込み始めている(詳細はこちらのIG為替レポートを参照)。
また、9月CPIの鈍化を受け、英中銀(BOE)も11月と12月の金融政策委員会(MPC)で連続利下げを行う可能性が高まってきた。
ECBとBOEの連続利下げ期待の高まりは、欧州通貨売りの圧力を高めるだろう。欧州通貨売りの進行は、米ドル高トレンドを下支えする要因となろう。米ドル高は、ドル円が150円台へ再上昇するきっかけとなるだろう。
ドル円が150円台の攻防へシフトする場合は、一気に151円を目指す展開を想定しておきたい。実際にこの展開となる場合、テクニカルの面では200日線(今日現在151.24レベル、下の日足チャート 黄色ラインを参照)とフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準151.53レベルの攻防が焦点に浮上しよう。
ドル円のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
米経済指標にらみのポンド円
ドル円(USD/JPY)のトレンドを左右する米債市場は現在、経済指標にらみの状況にある。ゆえに、ポンド円(GBP/JPY)も米経済指標にらみの状況にあると言えるだろう。
今日は9月の米小売売上高と週間の新規失業保険申請件数が発表される(詳細はこちらのIG為替レポートを参照)。小売売上高で個人消費の拡大が確認され、新規失業保険申請件数で労働市場の堅調さが確認される場合は、米国経済のソフトランディング期待がさらに高まるだろう。
強い経済指標が続けば、米金利と米ドルは上昇で反応することが予想される。ドル円は150円台への攻防シフトを想定しておきたい。ドル円の上昇は、ポンド円の押し上げ要因となろう。
ポンド円が上値をトライする局面では、10日線の突破と196.00のトライを想定しておきたい。直近の高値195.70レベルの突破は、196.00をトライするサインと捉えたい。
ポンド円が196円台へしっかりと上昇する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準197.41レベルのトライが次の焦点に浮上しよう。
再掲 ポンド円のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
ポンド円のサポートポイント
一方、今日の米経済指標が総じて市場予想を下回る場合は、米ドル売りによるドル円(USD/JPY)の下落を想定しておきたい。
このケースでのポンド円は、21日線の維持が焦点となろう。この移動平均線は今日現在、193.20レベルで推移している。10月4日の東京時間の安値を起点とした半値戻しの水準193.72レベル(下の1時間足チャート、緑矢印を参照)の下方ブレイクは、21日線をトライするサインと捉えたい。
ポンド円(GBP/JPY)が21日線を下方ブレイクする場合は、192円の維持が焦点に浮上しよう。テクニカルの面では、9月30日の欧州時間の安値を起点としたもうひとつの半値戻し192.60台の攻防に注目したい(下の1時間足チャート、黒ラインを参照)。
時間足(本レポートでは1時間足を採用)のMACDとRSIでポンド円のトレンドと短期的な相場の過熱感を常にチェックしたい。MACDとRSIがゴールデンクロスへ転じ場合、特に上で述べたサポート水準をポンド円がトライする局面でその状況が確認される場合は、反発相場を意識したい。
ポンド円のチャート:1時間足 9月26日以降
出所:TradingView
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