FXのプライスアクションとは?そのパターンや取引方法を解説
FXにおいて、プライスアクションはプロも使う有効な分析方法として知られています。プライスアクションとは何か、他のテクニカル分析との違いや代表的なチャートパターン、具体的な手法などについて解説します。
FXのプライスアクションとは?
FXのプライスアクションとは、ローソク足から相場のトレンドの方向や転換点を見極めるテクニカル分析の一つです。ローソク足にはトレーダーの心理が反映されると考えられており、プライスアクションではその心理を読み取って値動きの予想に役立てていきます。
例えば、移動平均線やボリンジャーバンド、MACDなどのテクニカル指標は価格の動きを基にして表示されますが、プライスアクションは価格の動きそのものを分析することになります。そのため、プライスアクションを使うことで、トレーダーは相場の方向性を最も早く判断できるのです。
プライスアクションと酒田五法の違い
酒田五法とは、ローソク足の特定の動きをパターン化し、今後の相場の動向を予測する手法です。「三山」や「三川」、「三空」などが代表的なパターンとして知られています。
酒田五法もローソク足に注目した相場分析方法であるため、プライスアクションと似ていますが、プライスアクションは海外、酒田五法は日本発祥という違いがあります。プライスアクションと酒田五法を組み合わせると、より正確に相場を分析することが可能です。
ただし、酒田五法は株式投資を前提に作られた手法であるため、24時間相場が動くFXのチャートとは相性が悪いパターンがあることに注意しましょう。
FXで使えるプライスアクション
プライスアクションでは、いくつかの要素を組み合わせて値動きを予測します。相場を観察する際のポイントを詳しく見ていきましょう。
1. トレンド
トレンドとその強さを示す指標は数多くありますが、単純な価格の観点からトレンドを定義すると、市場がより高い高値とより高い安値を更新している状態(上昇トレンド)と、より低い安値とより低い高値を更新している状態(下降トレンド)に分かれます。あるいは、高値と安値の更新がなく、レンジ相場を形成している場合もあります。
トレンドは全ての時間軸で発生しますが、経験則として、長期間の時間軸の方が短期間の時間軸よりも優先されます。FXの場合、例えば日足と4時間足を組み合わせることで、包括的な全体像を得ることが可能です。
4時間足(短期間)で上昇トレンドが発生していても、一方で日足(長期間)では下降トレンドが展開していることがあります。この場合、日足チャートのトレンドを重視し、ある時点で短期的なトレンドが長期的なトレンドに飲み込まれる可能性を考慮する必要があるのです。
上昇トレンドの例(4時間足)
出所:TradingViewでチャート作成
下降トレンドの例(日足)
出所:TradingViewでチャート作成
2. サポートライン・レジスタンスライン
プライスアクションを予測する上で、次に重要なのはサポートラインとレジスタンスライン(価格水準)です。
サポートラインとは、需要(買い手)が価格を支えるポイントであり、レジスタンスラインとは、供給(売り手)が上昇を抑えるポイントです。フィボナッチレベルや移動平均線など、有効なサポートラインとレジスタンスラインを特定する方法は数多くありますが、今回は水平線のサポートラインとレジスタンスラインだけでなく、斜線となるトレンドラインにも注目してみましょう。
さまざまな角度のサポートラインとレジスタンスラインが重なると、より強固で信頼性の高い水準となることは取引において重要なポイントです。例えば、斜線のトレンドラインと交差する水平方向のサポートラインやレジスタンスラインがある場合、より強固なシグナルとなります。
サポートライン・レジスタンスラインの例
出所:TradingViewでチャート作成
サポートライン・レジスタンスラインとトレンドラインの重なりの例
出所:TradingViewでチャート作成
3. 市場の反応
値動きを予測するための3つ目のポイントとして、トレンドの中で価格水準に対する市場の反応を考慮することが挙げられます。つまり、市場で見られるトレンドが継続しているのか、または反転しているのかに注目するということです。この要素は、取引の意思決定を下す上で最重要と言っても過言ではありません。
プライスアクションを評価する方法としては、ローソク足パターンを利用することが大変効果的です。例えば、明確な拒否反応を示すローソク足の種類は、反転を示唆するローソク足である「流れ星」や「ハンマー」、「包み足」などの強力なローソク足パターンです。
ローソク足パターンについては、「ローソク足パターン」で詳しく知ることができます。
これらのローソク足パターンは、サポートラインまたはレジスタンスラインでの反発を示しており、市場に参加すべきかどうかを判断するための重要な指標である値動きの勢いが変化したことを表します。
サポートラインやレジスタンスラインから反転すると、買いポジションの場合は安値、売りポジションの場合は高値を利用して、損切りの逆指値注文の位置を決定することができます。この時、その水準の上下のわずかな誤差によって損切りにならないように、その水準を少し超えた位置に逆指値注文を置くのが最善です。
さらに、リスクに対して十分なリターンを得られるように目標を設定しましょう(一般的なルールとして、リスクリワード比率は1:2以上)。目標も逆指値注文と同様に分析に基づいたものである必要があり、自分が狙いたいリターンの金額でランダムに決定されるべきではありません。
リスクリワードレシオについては、「FXのリスクリワードとは 計算方法や勝率の関係を解説」で詳しく知ることができます。
レジスタンスライン付近での強力な反転の例
出所:TradingViewでチャート作成
FX初心者でもわかる7つのプライスアクション(チャートパターン)
プライスアクションには多くの種類がありますが、中でも特にトレーダーに人気のある代表的なチャートパターンがいくつかあります。初心者でも分かりやすく、トレーダーによく使われるパターンは以下の7つです。
1. スラストアップ・スラストダウン
スラストアップとスラストダウンは、トレンドの方向を確認する時に便利なローソク足パターンです。
スラストアップとは、1本前のローソク足の高値よりも現在のローソク足の終値が高くなるパターンであり、相場が上昇傾向にあることを表しています。一方、スラストダウンとは、1本前のローソク足の安値より現在のローソク足の終値が低くなるパターンで、相場が下落傾向にあることを表します。
加えて、スラストアップやスラストダウンの連続した発生は、より強いトレンドを示すサインです。視覚的に分かりやすく基本的なパターンですが、スラストアップとスラストダウンはトレンドの方向を把握するためには非常に有効になります。
2. ランウェイアップ・ランウェイダウン
ランウェイアップとランウェイダウンは、トレンドの発生中に現れるローソク足パターンです。トレンドが継続していることを判断できます。
上昇トレンドを表すランウェイアップを形成する条件は、以下の2つです。
- ローソク足の高値が、過去n本の高値を越えている
- 次のn本のローソク足の安値が、起点とするローソク足の安値を下回っていない
下降トレンドのサインとなるランウェイダウンの条件は、ランウェイアップの逆になります。
- ローソク足の安値が、過去n本の安値を下回っている
- 次のn本のローソク足の高値が、起点とするローソク足の高値を上回っていない
例えば、ランウェイアップが現れた場合、買いの勢いが強く、現在のトレンドが継続すると判断できます。一般的には過去5本のローソク足を使い、ランウェイアップとランウェイダウンが発生したかどうかを見極めていきます。
3. ピンバー
ピンバーは、強いトレンド転換を示すローソク足です。長いヒゲが特徴であり、ローソク足における実体部分の約3倍以上の長さを持つヒゲが出ている状態がピンバーと呼ばれます。
ローソク足の実体が短く、ヒゲが極端に長いということは、一度ヒゲの方向に向けてレートが大きく伸びたものの、勢いを維持できなかったことを意味しています。特にピンバーが何度も発生している場合は、トレンド転換、もしくは相場が停滞していると判断して、ポジションの決済を考えるタイミングになります。
また、特に上昇トレンドの天井圏で売りのピンバーが現れる形は「スパイクハイ」と呼ばれ、下降トレンドへの転換を示唆します。
一方、下降トレンドの底値圏で買いのピンバーが現れると「スパイクロー」と呼ばれ、上昇トレンドへの転換のサインです。
4. リバーサルハイ・リバーサルロー
リバーサルハイとリバーサルローは、トレンド転換を示唆するローソク足パターンです。単に「リバーサル」と呼ばれることもあります。
リバーサルハイとリバーサルローは共に、陽線と陰線の2つのローソク足の値動きを一つにまとめると、ピンバーとなってトレンドの反転を示すのが特徴です。
例えば、15分足でリバーサルが現れた場合、30分足ではピンバーが表示されます。リバーサルが上昇トレンドの高値圏で現れると、リバーサルハイと呼ばれる上昇トレンドから下降トレンドへの転換を示唆するパターンになります。
一方、リバーサルが下降トレンドの底値圏で出現するのが、下降トレンドから上昇トレンドへの転換を示唆するリバーサルローというパターンです。
天井圏や底値圏では、2種類のリバーサルパターンに注目してみましょう。
5. インサイドバー・アウトサイドバー
インサイドバーとアウトサイドバーは、トレンドが発生する直前に形成されるローソク足パターンです。
インサイドバーでは、前のローソク足に収まるように後のローソク足が形成されます。インサイドバーが現れるということは、値動きが徐々に小さくなっており、保ち合い状態が続いているということです。ローソク足の高値または安値をブレイクすると、その方向に向かって大きくレートが動く傾向があります。
アウトサイドバーとは、前のローソク足を包み込むように、後のローソク足が拡大して形成されるパターンであり、買いと売りが拮抗している状態を表します。アウトサイドバーもインサイドバーと同様、高値または安値をブレイクするとその方向に向けて大きくレートが変動しやすくなります。
そのため、インサイドバーとアウトサイドバーが現れた場合、高値または安値をブレイクするまで待ってからエントリーをするのが基本です。
6. フェイクセットアップ
フェイクセットアップは、レンジ相場のブレイクに失敗したときに発生するローソク足パターンです。
一般的なレンジ相場では、ローソク足がレンジの高値や安値をブレイクすると、その方向にレートが大きく動く傾向があります。しかし、フェイクセットアップではレンジ相場を1度ブレイクしたにもかかわらず、価格が反転してブレイクとは逆方向にレートが動いていきます。
フェイクセットアップのようなプライスアクションは、FXでは「ダマシ」と呼ばれます。フェイクセットアップでは、同時に長いヒゲやインサイドバー・アウトサイドバーが現れることも多く、複数の根拠が重なって逆方向への動きが加速するケースが多いパターンです。
7. フォールスブレイクアウト
フォールスブレイクアウトは、サポートラインやレジスタンスラインのブレイクを失敗した際に発生するローソク足パターンです。フォールスブレイクアウトでは、過去の安値または高値を一時的に更新したものの、ヒゲをつけてブレイクが失敗に終わり、ローソク足が逆方向に動いていきます。
フォールスブレイクアウトも前述したフェイクセットアップと同様に、ダマシと呼ばれるプライスアクションの1つです。長いヒゲやインサイドバー・アウトサイドバーもよく現れ、複数の根拠が重なることで逆方向への動きが加速するケースが頻繁に見られます。
プライスアクションとテクニカル指標を組み合わせたFXの手法
プライスアクションをテクニカル指標やファンダメンタルズ分析と組み合わせることで、より分析の精度を高めることができます。プライスアクションとテクニカル指標を組み合わせた手法にする場合、以下のような手順が有効です。
- テクニカル指標でトレンドの方向を見極める
- トレンドの方向が確認できたら、トレンドの方向のエントリーポイントを探す
- トレンドの方向に合ったプライスアクションの発生でエントリーをする
まずは、トレンドの方向を見極めましょう。トレンドを把握するために利用できるのが、トレンドラインやトレンド系のテクニカル指標です。トレンド系のテクニカル指標には、例えば移動平均線やボリンジャーバンド、MACDなどがあります。
トレンドラインやテクニカル指標でトレンドが確認できたら、トレンドの方向へのエントリーシグナルを探します。目星をつけたエントリーポイントでトレンド方向に合ったプライスアクションが現れたことを確認して、実際にエントリーを行いましょう。
ドル/南アフリカランド(USD/ZAR)プライスアクションの例
上の図は、ドル/南アフリカランド(USD/ZAR)のチャートです。
トレンドの押し目を結んだ上昇トレンドライン(青の線)が、サポートラインとして機能していることが分かります。また20日、50日、200日の移動平均線を追加してみると、全ての移動平均線の上側にローソク足があることからも、上昇トレンドであると確認できます。
したがって、上昇トレンドラインや移動平均線付近での押し目買いを狙うことができ、ここでプライスアクションを使います。先ほど見つけたエントリーポイントで、リバーサルローや下ヒゲのピンバーなどの強力な買いサインのプライスアクションを確認した後、買いでエントリーを行います。
また、このチャートの下に表示されているのはストキャスティクスです。ストキャスティクスが売られ過ぎゾーンにほぼ入っていることからも、買いエントリーが成功しやすいと判断することができます。
デモ口座でプライスアクションを使った取引のシミュレーションをしてみよう
FX初心者がプライスアクションをすぐに理解し、タイミングを見極めた上で取引することは難しいため、まずはデモ口座でシミュレーションしてみましょう。IG証券の無料デモ口座では、仮想の資金を利用して、本番さながらの環境で取引の練習を行うことができます。
仮想の資金を利用するため、予想通りの取引結果にならなかったとしても自分の資金が減ってしまうことはありません。そのため、デモ口座で十分にシミュレーションをし、プライスアクションを使ってスムーズに取引できるようにするとよいでしょう。
プライスアクションで勝てない理由3選
プライスアクションは有効な分析手法ですが、プライスアクションの通りにエントリーをしたからといって必ず勝てるわけではありません。プライスアクションを使っても勝てない場合は、以下の点に注意してみてください。
1. ダマシが発生することがある
プライスアクションに限った話ではありませんが、どんなに詳細に分析をしてもダマシを100%避けることはできません。つまり、プライスアクションを用いて分析をしてエントリーを行っても、想定した方向と違う値動きが起きることもあるのです。
例えば、「流れ星」でトレンドの転換を期待してエントリーをしても、現在のトレンドが続いてしまうことは珍しくありません。そのため、ダマシが発生することを考慮し、しっかりと損切りの逆指値注文を入れて損失を限定することが大切です。
2. 長期のトレンドに逆らっている
「FXで使えるプライスアクション:1. トレンド」の項目で解説した通り、長期的な相場の流れを把握していないと、プライスアクションを使っても勝つのは難しくなります。というのも、短期的なトレンドはいずれ長期的なトレンドに飲み込まれる傾向があるからです。
例えば、4時間足で上昇トレンドへの転換のサインが出ても、日足で下降トレンドが発生している場合は、買いポジションの保有を見送るのが賢明です。長期足のトレンドをチェックし、長期的なトレンドの方向にのみ取引をするようにしましょう。
3. プライスアクションのみしか使っていない
プライスアクションは有効な分析手法ですが、他の分析方法と組み合わせることで勝率が上がりやすくなります。つまり、複数の根拠を持って取引をした方がよいということです。
例えば、移動平均線やRSIなどのテクニカル指標や、ファンダメンタルズ分析と組み合わせるとよいでしょう。プライスアクションを用いる際は、単体で使うのではなく、他の分析手法と併用して使ってみてください。
まとめ
プライスアクションは、トレンドの把握、サポートラインとレジスタンスラインの確認、マーケットの反応の評価、という3つの要素から成り立っています。これにより、トレーダーはマーケットの動向を読み解き、より有効な取引戦略を立てることが可能になります。
トレンドは長期的な視点が重要であり、サポートラインやレジスタンスラインといった価格水準が、取引のタイミングや方向性を特定する上で決定的な役割を果たします。また、ローソク足パターンを使って市場の反応を読み取ることが、適切なエントリーやエグジットのタイミングを見極め、リスク管理を効果的に行う鍵となります。
さらに、プライスアクションは幅広い時間足や銘柄でも使えるため、取引の幅が広がり、取引機会を増やすことも可能です。慣れてきたら、さまざまなテクニカル指標やファンダメンタルズ分析と組み合わせ、高精度の分析ができるように取り組んでみましょう。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
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