外国為替と株式市場の関係
外国為替と株式市場は流動性の高い市場として知られています。多くの投資家はこの2つの市場間の相関関係を考えて、将来の価格変動を予測する傾向があります。どちらの市場がリードしているか?この点についての結論は出ていません。外国為替市場が株式市場に影響を与えるのでしょうか?それともその逆でしょうか?この記事ではその関係を探ります。
株式市場が為替レートに与える影響について
基本的に、株式市場の動向が外国為替の動向に影響を与えると考えられています。つまり、ある国の株式市場が上昇する場合、それはファンダメンタルズ面で評価が高まっていることを意味します。よって、その国の通貨も買われるということです。
上記の理論に従えば、日本の代表的な株価指数である日経平均が上昇する場合、日本の通貨円も買われるということになります。逆に日経平均が下落する場合、日本円は売られることになります。
しかし、実際の日経平均株価とドル円(USD/JPY (大口))の関係はそう単純ではありません。2008年に世界的な金融危機がグローバル市場を襲った時、日経平均の急落に円高で反応しました。その後、日経平均を含めた世界の株価指数が上昇に転じると円安へと転じました。
株式市場と外国為替の関係は、単にファンダメンタルズの状況だけでなく、政治や金融政策の方向性といった様々な要因が絡み合って相関関係が発生することを日経平均と日本円の動向は示唆しています。
外国為替が株式市場に与える影響
外国為替と株式市場の因果関係を考慮したのが「ポートフォリオ・バランス・アプローチ」です。
この理論は、企業の市場価値が国内通貨の健全性によって大きく影響されるという考えに基づいています。ある国の通貨が減価すると、その国の輸出品は国際的に競争力が高まります。このため輸出ベースで収益を得ている企業にとってはポジティブであり、利益の潜在的な増加に繋がる、ということになります。
英国の代表的な株価指数であるFTSE100と通貨ポンドの関係で考えてみましょう。多くの英国企業は海外でビジネスを展開しています。これら企業の取引通貨は通常米ドルとなります。よって、利益もドル建てで計算されます。英ポンドの価値が減価する場合、米ドルの価値が上昇することから企業の収益は上昇します(米ドル建てで取引されるため)。このため、通貨ポンドの減価とは対照的にFTSE100は上昇します。
両市場の相関関係を考える際に注視すべきは、外国為替市場が高ボラティリティという点です。高ボラティリティであるが故に、株式市場との相関関係が崩れる局面が見られます。どの市場にも言えることですが、完全に相関関係が一致する状況は稀です。よって、チャートで比較すべき市場の動向を確認し、明確な相関関係が見られるかどうか?この点を常にチェックする必要があります。
投資家が取るべき行動
外国為替市場と株式市場の相関性が見られる局面は多く見られます。この点について、現在英国が直面しているブレグジット(英国のEU離脱)問題と新興市場(EM)の動向で考えてみましょう。
ブレグジット(英国のEU離脱)とその影響
英国(UK)は2016年6月23日の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選択しました。この瞬間、英ポンドは急落しました。英ポンド安は、GlaxoSmithKline社といったグローバル規模で事業を展開する英国企業の株価を押し上げました。株価が上昇した理由は上述したとおり、グローバルでビジネスを展開する英国企業の利益は米ドル建てで計上されるからです。国民投票1週間前の同社の株価はおよそ1,387英ポンドで取引きされていました。しかし、EUからの離脱が決まると、最高値1,709ポンドまで急騰しました。
しかし、通貨の急落を背景とした株高はすぐに終息することがあります。通貨安は過度のインフレ上昇を招くからです。もしくは市場がその点を懸念するからです。インフレが過度に上昇すれば個人消費は落ち込みます。この点が英国の株式市場で意識され、2017年末までにGlaxoSmithKline社の株価はブレグジット前の水準1,380ポンドまで下落しました。
新興市場とその影響
米ドル相場の動向は、新興国市場(EM)の財政に大きな影響を及ぼします。米ドル相場とEM市場の関係を理解するためには、資本の移動がポイントとなります。例えば、新興国企業の多くは米ドル建てで融資を受けています。よって、米国の金利が上昇すると、新興国企業に対するリスクが意識され、市場はEM市場から米国市場へシフトします。この過程で、EM市場の株価と通貨には売り圧力が高まります。逆に、投資家のリスク選好ムードが高まる状況でアメリカの金利に低下圧力が高まるケースでは、EM市場へ資本が流入します。この過程でEM市場の株価と通貨は上昇します。
まとめ
長年にわたって外国為替市場と株式市場の相関関係については、多くの投資家が興味を持ち続けてきました。しかし、両市場の相関関係がすべて明らかになっているわけではありません。
外国為替市場と株式市場の相関関係をチェックすることは重要です。しかし、時間の経過とともにマーケットの状況は変化します。その過程で相関関係も変化します。このため、取引する際は複数の要因を考慮する必要があります。外国為替市場で取引する際、株式市場の動向をチェックすることは重要です。しかし、それだけでは外国為替市場の動きを正確に把握することはできません。その逆もまた同様です。
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