【IG米国株レポート】 今週の注目材料とS&P500指数の見通し、チャートポイントについて
主要な米株価指数の一つであるS&P500種株価指数は現在、強気相場のムードにある。今週は10月の消費者物価指数と小売売上高、そしてFEDスピーカーの言動で米金利のトレンドが左右されるだろう。そして米金利の動向が、S&P500種株価指数のトレンドに大きな影響を与えるだろう。注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG米国株レポートをご覧ください。
サマリー
・S&P500指数は現在、短期レジスタンスラインの攻防となっている
・強気ムードが漂うS&P500指数だが、完全にベアトレンドから脱却したわけではない
・今週の注目材料は10月CPI、小売売上高そしてFEDスピーカーの言動となろう
・上の注目材料で今週の米金利と米国株のトレンドが左右されるだろう
S&P500指数、今週の見通しとチャートポイント
多くの機関投資家が運用のベンチマークとするS&P500種株価指数(SPX、以下S&P500指数)は、21日線(4,288レベル)と50日線(4,336レベル)を難なく突破した。そしてこれら移動平均線でサポートされ、現在は4,400ポイント台での攻防となっている。
次の焦点は、7月高値を起点とした短期レジスタンスラインの突破となろう。このラインを完全に上方ブレイクする場合は、4,500ポイント台を視野に上昇幅が拡大することが予想される。
日足のストキャスティクスでは、短期的な相場の過熱感を示唆する状況にある。ゆえに短期レジスタンスラインで一度反落する展開を警戒しておきたい。
だが、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(4,113レベル)を維持してのテクニカルラインを突破し続けた状況は、米国株の地合いの強さを示している。
ゆえに、レジスタンスラインが意識され相場が反落しても、50日線や21日線を維持する限り(これら移動平均線がサポートラインへ転換する場合)、S&P500指数は底堅さを維持する展開が予想される。
S&P500種株価指数のチャート:日足 23年3月以降
米債ボラティリティの低下→米株反発のトレンド
11月に入ってからのS&P500指数(SPX)の反発は、投資家心理の改善を示している。
この点を示唆しているのが、IG米国株レポートで何度か取り上げてきた米国債の先行き変動リスクを反映する「MOVE指数」の低下である。
下のラインチャートを見ると、「MOVE指数の低下 / S&P500指数が上昇」の状況にあることが分かる。
米債市場では現在、長期ゾーン利回りに対する上昇の圧力が後退している。この動きを受けMOVE指数は落ち着いた状況にある。これら一連の流れを受け、S&P500指数は現在の状況(反発相場)にあると考えられる。
MOVE指数とS&P500指数のチャート:日足 年初来
ベアトレンドからの完全脱却が焦点に
しかし、S&P500指数(SPX)は完全にベアトレンドから脱却したわけではない。この点を示唆しているのが、上で述べた短期レジスタンスラインの攻防である。週明けはこのラインが意識され、上値の重いスタートとなった。
また、市場の変調を先取りする特性のあるラッセル2000(RUT)の動向も、投資家心理がリスク選好へ完全には傾いていない状況を示唆している。
この点を日足チャートで確認すると、S&P500指数とは対照的にラッセル2000は21日線前後での攻防が続き、むしろ下値をトライするムードにある(下のチャートを参照)。
今後も米金利の上昇が抑制され、米債市場が落ち着いた状況を維持する場合は、S&P500指数の反発相場が予想される。しかし、その状況でラッセル2000が50日線(13日時点 1,755レベル)やトレンドチャネルの上限を突破できない状況が続く場合は、S&P500指数の反落リスクが残るだろう。
逆に、ラッセル2000が上で述べた2つのテクニカルラインを完全に突破する場合は、投資家心理が本格的に強気に傾いているシグナルの一つとなろう。
この状況が確認される場合、S&P500指数は4,500ポイント台への上昇と、その上の水準である今年7月の高値4,607レベルのトライが焦点として浮上することが予想される。
ラッセル2000のチャート:日足 年初来
今週の変動要因
変動要因1:消費者物価指数(CPI)
今日以降、米国株は2つの材料で上下に振れる展開が予想される。
ひとつは、重要経済指標である。今週はいくつかの重要経済指標が発表されるが、なかでも市場参加者の関心が高いのが、10月の消費者物価指数(CPI)と小売売上高である。
今日は10月の消費者物価指数(CPI)が発表される。今回の焦点はこちらのレポートで述べたとおり、コア指数(変動の大きい食品とエネルギーを除いた指数)の内容にある。
10月の市場予想を確認すると、前月比と前年同月比のコア指数はともに横ばいの見通しである(下のチャート、赤バーチャートとドットを参照)。
米国 消費者物価指数の動向:月次 22年10月以降
11月のミシガン大学期待インフレ率は、1年先(短期)と5-10年先(長期)がともに前月から上昇した。特に5-10年先の期待インフレ率は、2011年以来の水準まで上昇した(こちらのレポートを参照)。
この状況で10月のCPIコアがインフレ圧力の根強さを示す結果となれば、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め長期化の観測が高まることで、米国株には調整の売り圧力が高まることが予想される。
一方、10月のCPIコアでインフレ鈍化の傾向があらためて確認される場合は、米長期ゾーン利回りが低下する要因となろう。
上で述べたとおり、今の米株高はMOVE指数(米国債の先行き変動リスクを表すボラティリティ指数)の低下が一因となっている。
今年の9月中旬以降、MOVE指数は金利の上昇リスクを受け上昇幅が拡大し、10月上旬には140ポイント台まで上昇する局面が見られた。その後、116ポイント台まで低下した。しかし直近のMOVE指数は、現在は再び上昇のムードにある(直近の水準は124ポイント台、2つ目のチャートの赤ラインを参照)。
10月CPIが米金利の低下要因となれば、MOVE指数の上昇幅が限定的となることが予想される。
逆に、10月CPIが米金利の押し上げ要因となれば、MOVE指数の上昇幅が再び拡大することが予想される。ゆえに強いCPI(特にコア指数でインフレ圧力の根強さ)が確認される場合は、米国株の下落を警戒しておきたい。
変動要因2:小売売上高
明日は、個人消費の動向を示す10月の米小売売上高が発表される。
今年の4月以降、個人消費は堅調さを維持してきた。しかし10月の市場予想を確認すると、総合でマイナス0.3%と個人消費の勢いが後退する見通しである。自動車を除く小売売上とコア小売売上(自動車、ガソリン、建築資材、外食を除く指数)も前月から低下する見通しである(下のチャートを参照)。
FRBの利上げサイクル終了が意識されるなか、今後は景気の動向が焦点となろう。
今回の小売売上高で米国GDPの約7割を占める個人消費の勢いが予想以上に後退していることが示される場合は、米金利の低下による株高よりも、景気懸念による株安を警戒しておきたい。
一方、10月の個人消費で予想外の底堅さが確認される場合は、米国株の上昇要因になり得る。
米国 小売売上高の動向:月次 22年10月以降
変動要因3:FRB高官の言動
今週は14日から17日まで、連邦準備制度理事会(FRB)の高官らがイベントや講演に参加する。
本日は、23年の投票権を持つシカゴ地区連銀のグールズビー総裁がエコノミッククラブで経済および金融政策についての講演を行う。また、ジェファーソンFRB副議長がグローバルリスク、不確実性そしてボラティリティについての討論会に参加する。
15日以降はバーFRB理事、クックFRB理事そしてニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁ら金融政策の方向性に大きな影響を与えるキーマン達がイベントや講演に参加する。
FRBの各高官からインフレ、金融政策そして景気の動向について言及がある場合は、米債市場の変動要因となろう。米債市場の動きは、米国株のトレンドを左右しよう。
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