S&P500とナスダックは最高値更新、次の焦点はアメリカCPIとFOMC、ナスダック100の見通し
週明けの米国株は上昇して終えた。5月の雇用統計は米長期金利の押し上げ要因となったが、その影響を跳ね除ける強さが今の米国株にはある。次の焦点は、5月の消費者物価指数(CPI)と連邦公開市場委員会(FOMC)となろう。ナスダック100、目先の見通しは?注目しておきたい上下のチャート水準は?
サマリー
・強い雇用統計を受けても下落幅が限定的だった米国株
・次の焦点は5月のCPI、FOMCの焦点は政策金利の見通しにある
・主力の半導体株に注目、株式分割のエヌビディアは小幅高で終えた
・強気相場のナスダック100、19,200ポイントのトライ&ブレイクが焦点に
強い雇用統計で米債市場のムードが一変
5月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が27.2万人と、市場予想の18.0万人を大きく上回り、労働市場の堅調さを示唆した。平均時給は前月比で0.4%増、前年同月比で4.1%増と、いずれも市場予想の0.3%増、3.9%増を上回り、賃金インフレの根強さも示唆する内容となった。
5月雇用統計の結果を受け、先週7日の米債市場では10年債利回り(以下では長期金利)が4.4%台まで跳ね上がった。
週明けの米債市場でも長期金利は小幅に上昇して終えた。5月米雇用統計の結果は、低下基調にあった米債市場のムードを一変させている(下のチャートを参照)。
米金利のチャート:30分足 5月29日以降
それでも米国株は最高値を更新
米長期金利の上昇は米国株の下落要因である。事実、7日は主要な米株価指数が下落した。しかし、ラッセル2000(RUT)を除き下落幅は限定的だった(下のチャートを参照)。
そして週明けの米国株は上昇スタートとなった。多くの機関投資家が運用のベンチマークとするS&P500種株価指数(SPX)は、前週末比13.80ポイント高の5360.79で終え最高値を更新した。
ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は前週末比59.403ポイント高の1万7192.529で終え、5日に付けた最高値を更新した。
同様にナスダック100(NDX)も前週末比73.72ポイント高の1万9074.67と最高値を更新した。
主要な株価指数のパフォーマンス:6月7日と10日の動向
次の焦点は米消費者物価指数(CPI)
今週の重要イベントのひとつが、12日に発表される5月の米消費者物価指数(以下CPI)である。
市場予想を確認すると、インフレが抑制される見通しとなっている。注目のコア指数は前月比で+0.3%と、4月から横ばいの見込みである。一方、トレンドを示す前年同月比は前月の+3.6%から+3.5%へ鈍化する見通しとなっている。
米国 消費者物価指数(CPI)の動向:23年5月以降
米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレの再燃を警戒するなか、5月の雇用統計では賃金インフレの根強さが示された。
この状況で5月CPIでインフレの粘着性が確認される場合、パウエルFRBは政策金利(FFレート)を現在の高水準でより長く維持する姿勢を維持せざるを得ないだろう。短期金融市場では9月の利下げ期待がさらに後退するだろう。米債市場では長期金利のさらなる上昇が予想される。ゆえに強いCPIは米国株にとって逆風となろう。
一方、5月CPIが予想以下の内容となれば、米国株の追い風となろう。しかし、株高の持続性は下で述べる政策金利の見通しに左右されると予想する。
FOMCの焦点と米国株の見通し
焦点は政策金利の見通し
今週11日~12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。6月会合の焦点は、FOMCメンバーが想定する最新の政策金利の見通し(ドットチャート)にある。
現時点でFOMCメンバーが予想する今年の利下げ回数は3回(中央値)である。しかし、短期金融市場が織り込む利下げの回数は1回まで減少している。
パウエルFRB議長をはじめFRB高官らのインフレ再燃に対する警戒レベルは高い。そして、早期の利下げについて慎重な姿勢を貫いていることも考えるならば、最新の見通しでは今年の利下げ回数が修正されることが予想される。
この点について市場では、1~2回となる見方がある。可能性は低いが「ゼロ」を予想する向きもある。
米連邦準備制度理事会(FRB)政策金利の予想推移
強いCPIとタカ派のFOMCが重なるケース
5月CPIが予想以上となれば、9月利下げの可能性が著しく後退しよう。そこに利下げ回数の減少が重なれば、最高値圏の攻防にある米国株には強い利益確定の売り圧力がかかることが予想される。このケースでは、新たなサポート水準の見極めが焦点となろう。
予想以下のCPIとタカ派のFOMCならば
一方、5月CPIが予想以下となれば、米国株の追い風となろう。しかし、政策金利の予想(ドットチャート)で今年の利下げ回数が1回もしくはゼロとなれば、5月CPIの影響を打ち消す展開が予想される。この場合、米国株は上下に振れる不安定な展開が予想される。
しかし、FRBはデータを精査しながら利下げ開始のタイミングを模索し続けるだろう。5月の雇用統計後の地合いの強さも考えるならば、このケースでの米国株は強気相場を維持すると予想する。
株式分割のエヌビディアは小幅高
現在の米国株は「AI」が重要なテーマとなっている。ゆえに米国株の先行きを考えるうえで、主力の半導体株の動向は重要である。
10日の米債市場では長期金利が上昇基調を維持した。しかし、金利上昇の影響を跳ね除け主力の半導体株はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)を除き、総じて上昇した。
10日に株式分割されたエヌビディア(NVDA)は前週末比0.9ドル高(0.75%高)の121.79と小幅に上昇した。
米半導体株のなかでも、エヌビディアの動向は特に重要である。株高をけん引してきたマグニフィセントセブン(壮大な7銘柄)はもはや「エヌビディア1強」と「その他6銘柄」の状況へシフトしている(詳細はこちらのIG米国レポートを参照)。
この状況は半導体セクターも同様である。年初来のパフォーマンスを確認すると、「エヌビディア1強」の状況が鮮明となっている(下のチャートを参照)。
米半導体株のパフォーマンス:年初来
金利上昇の影響を跳ね除けるナスダック100、目先の見通し
19,200ポイントのトライ&ブレイク
ナスダック100(NDX)は10日、最高値を更新した。
5月30日と6月3日の長い下ヒゲによる急反発、相場をサポートする21日線、そして上昇基調にあるMACDの動向も考えるならば、目先の焦点はIG米国株レポートで何度も取り上げている19,200ポイントのトライそしてブレイクアウトにある。
テクニカルの面でこの水準(19,200レベル)はフィボナッチ・エクステンション100%(N計算値)の水準にあたる。先週7日の高値19,114レベルの上方ブレイクは、19,200トライのシグナルと想定しておきたい。
ナスダック100が19,200レベル以上の攻防となる場合は、100ポイントのレンジで新たなレジスタンスの水準を見極めたい。
反落の局面では3つの水準の攻防に注目
一方、5月CPIとFOMCが米株安の要因となる場合、ナスダック100(NDX)は調整売りに直面することが予想される。このケースでは、3つの水準での攻防に注目したい。
まずは10日線である。この移動平均線は10日時点で18,807レベルにある(下のチャート、青ラインを参照)。10日線の攻防は、18,800ポイント台の維持を見極めるための攻防となろう。
次は21日線である。この移動平均線は10日時点で18,665レベルにある(下のチャート、緑ラインを参照)。年初以降、この移動平均線はサポートとしてもレジスタンスとしても意識される局面が散見されている。
現在はサポートラインとして意識されるかどうか?を確認する局面にあり、この移動平均線が下落相場を止める場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
一方、ナスダック100が21日線をも下方ブレイクする場合は3つ目の水準、3月21日の高値18,465レベルを視野に下落幅の拡大を警戒したい。実際にこの水準をトライする場合は「サポート転換」が焦点となろう。
なお、18,465レベルをトライするきっかけとして考えておきたいのが、上で述べた「強いCPIと“タカ派”のFOMCが重なるケース」である。
ナスダック100のチャート:日足 年初来
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