米国株、トランプトレード継続か反落か、株高継続の鍵はCPIと小売売上高に、S&P500の見通し
先週ダウ平均は4万4,000ドル、S&P500は6,000ポイントへ到達する局面が見られた。中小型株にも買いが広がりラッセル2000は2,400ポイントの攻防にある。トランプトレードの米株高が続くのか?今週この鍵を握るのが10月CPIと小売売上高となろう。
記事のポイント
- 選挙戦でのトランプ陣営の圧勝と米FRBの追加利下げで先週は米株高が進行した
- 米金利の高止まりでもラッセル2000が上昇、米株が強気相場にあることを示唆
- 今週は米経済指標にらみの1週間に、10月のCPIと小売売上高が材料視されよう
- S&P500、今週の見通しと注目のテクニカルラインについて
トランプトレードと米FRBの追加利下げで株高が進行
先週5日のアメリカ大統領選挙では、共和党のトランプ氏が7つの激戦州すべてで勝利をおさめて圧勝した。議会選挙では上下両院ともに共和党が多数派となる可能性が高まっている。「トリプルレッド」の可能性は、多くのトランプ政策が実現する可能性を市場参加者に意識させた。
7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRB(米連邦準備制度理事会)が追加の利下げを決定したことも重なり、先週の主要なアメリカ株価指数は総じて上昇した。
アメリカ株価指数の週間騰落率:11月4日~8日の週
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ラッセル2000が示唆するアメリカ株の強気地合い
先週の米株高で注目したいのが、中小型株の代表的な指数であるラッセル2000の上昇率が最も高かったことである(8.57%の上昇)。
米長期金利が高止まりするなかでもラッセル2000が2,400ポイントの攻防にあることは、マグニフィセントセブンなど一部の主力株に頼っていたこれまでの「歪な株高」から、米国株が脱する方向に向かっていることを示唆している。
投資家の関心が中小型株に向いていることは、S&P500とナスダック100に対するラッセル2000の比(倍率)でも見て取れる。
ラッセル2000とS&P500およびナスダック100の倍率:2024年5月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
S&P500の見通しとテクニカル分析
6000ポイント台の攻防
・S&P500は先週8日、節目の6,000ポイントへ一時到達する局面が見られた(高値6012.45)
・50日線がサポートラインとなり、21日線がレジスタンスラインへ転換することなく、節目の6,000ポイントへ到達。しかも、5,870レベルがサポートラインへ転換したことも確認された。MACDとモメンタムの動きも強気相場に勢いが出ていることを示唆している(下の日足チャート、黒矢印を参照)
・米長期金利が4.3%台で高止まりするなかでも中小型株に買いが入る状況を考えるならば、今週のS&P500は6,000ポイント台の攻防へシフトする展開を想定しておきたい
・今週S&P500の上昇局面で注目したいのが、以下の日足チャートにプロットしたテクニカルラインである
S&P500のレジスタンスライン
・6,168:フィボナッチ・エクステンション100.0%
・6,100:レジスタンスライン
・6,056:フィボナッチ・エクステンション76.4%
S&P500のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
反落の局面では5,870レベルの攻防に注目
・今週トランプトレードの株高が一服しS&P500が反落する場合、まずは5,900ポイント台の維持が焦点となろう。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準5,937レベルの攻防に注目したい
・S&P500が5,800ポイント台へ反落する場合は5,870レベル、直近高安の半値戻しの水準(5,853)そして21日線の攻防が焦点となろう。特に5,870レベルで反発する場合は、再び「サポート転換」が確認されることになる。この状況はサポートラインとしての5,870レベルの存在感を高めるだろう
・時間足のMACDとRSIはともにデッドクロスへ転じている。経済指標が調整売りの要因となる場合は、5,870レベルをトライする展開を想定したい
S&P500のサポートライン
・5,937:フィボナッチ・リトレースメント23.6%(1時間足チャート)
・5,870:サポートラインの転換を意識する水準(日足チャート)
・5,853:直近高安の半値戻し(1時間足チャート)
・5,831:21日線(11/8時点、日足チャート)
S&P500のチャート:1時間足2024年7月以降
出所:TradingView
米経済指標の内容次第では調整の株安も、10月のCPIと小売売上高に注目
今週、S&P500が上で取り上げたサポートラインをトライする要因になり得るのが、米経済指標となろう。注目は13日の10月消費者物価指数(CPI)と15日の同月小売売上高である。それぞれの焦点を以下にまとめた。
米消費者物価指数(CPI)の焦点
・ブルームバーグがまとめた予想では、インフレの低下が一服する見通しにある
・今はトランプ政策によるインフレ再燃のリスクが意識されやすい状況にある。実際にインフレが再燃する場合は来年以降(トランプ政策が実際に実行されて以降)となるだろう。だが、株式市場は少なくとも半年先を織り込んで動く
・「トリプルレッド」の可能性が高まっている状況も考えるならば、CPIの上昇は将来のインフレリスクを市場参加者に意識させる要因となろう。このインフレ懸念は、トランプトレードで進行した米株高を調整する「口実」に使われる可能性があろう
アメリカ消費者物価指数(CPI)の動向:2023年10月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
米小売売上高の焦点
・ブルームバーグがまとめた予想では、9月から個人消費が減速する見通しにある
・アメリカ経済の土台である個人消費が予想外に減速すれば、米株高の調整材料に使われる展開を想定しておきたい
・CPIが予想外に上昇する一方で、小売売上高が予想外に減速すれば、S&P500は5,800ポイント台へ反落する可能性が高まろう
アメリカ小売売上高の動向:2023年10月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
下落の局面では押し目買い狙い
インフレの粘着性を示すCPIとさえない小売売上高はいずれも米株高の調整材料になり得る。だが単月の指標が米株安の要因となっても、それが景気後退の懸念を高める要因にはならないだろう。こちらのIG米国株レポートで指摘したとおり、アメリカ大統領選挙の年は株高となる「アノマリー」が見られる。また、選挙直後の「株高スタートダッシュ」にも成功した。
アメリカ経済の強さ、過去のアノマリー、そしてラッセル2000の上昇(中小型株の買い)を考えるならば、S&P500の下落局面では押し目買いを狙いたい。
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