金価格が史上最高値に再接近 金利低下やドル安で 米経済の堅調さ背景
金価格が2020年8月の史上最高値に接近。物価上昇という米国経済の不安が薄れる中での金利低下やドル安が追い風だ。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)で金の先物価格が史上最高値に迫っている。アメリカ経済の過熱感の和らぎが長期金利(10年物米国債利回り)の低下やドル安につながり、金の投資先としての人気を高めているためだ。金価格が4月から5月にかけて史上最高値に近づいた際は地銀の経営破綻などの不安要因が金買いにつながり、その後、米国経済の底堅さが確認されると金価格は下落に転じて史上最高値更新はならなかった。今回は米国経済の不安要素が薄れる中での金価格上昇だけに、前回とは異なる展開をみせる可能性もありそうだ。
金先物価格は史上最高値まであと2ドル強
LSEGのデータによると、COMEXでの金先物価格(中心限月)の29日の終値は1トロイオンス=2067.1ドル。4営業日連続で2000ドルの大台に乗せ、2020年8月6日につけた終値ベースの史上最高値(2069.4ドル)まであと2ドル強に迫った。金価格は4月から5月にかけても2000ドル超の水準で取引されていたが、再び最高値更新にチャレンジしている形だ。金スポット価格(GOL)も同様に高値で取引されている。
金価格上昇の背景にあるのは米国の長期金利の低下だ。ニューヨーク債券市場での29日の長期金利の終値は4.271%で、9月13日以来の低さとなっている。金融市場では、金利水準が下がれば債券などで資金を運用するメリットが薄れることから、相対的に金の人気が高まるとされる。
また、外国為替市場でのドル安傾向も金価格の上昇につながっているもようだ。金はドル建てで取引されるため、ドルが安くなればドル以外の通貨を保有している投資家にとっては金の割安感が強まり、金が買われやすくなれるとされる。LSEGによると、ドルの他通貨に対する強さを示すドルインデックス指数(DXY)は11月に入ってから約3.7%ドル安方向に振れており、金価格の値上がりに貢献している。
こうした長期金利の低下やドル安が金価格の上昇につながる構図は4-5月の値上がり局面でもみられた。ただ、長期金利低下やドル安が起きた背景には違いもみられる。
足元の長期金利低下にはアメリカ経済への前向きな期待
4-5月の長期金利が低くなったのは3月に起きた米地銀のシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻がきっかけだった。米国の銀行システムの健全性への不安が安全資産である米国債の買いにつながって価格が上がり、結果として長期金利が下がるという流れだ。さらに米国の金利低下がドル安要因となり、ドルインデックス指数はSVB破綻前から4月半ばにかけて約4.4%ドル安方向に動いていた。しかし米国の銀行システムに対する不安は5月1日のファースト・リパブリック銀行の経営破綻と救済の後で沈静化し、長期金利は再び上昇傾向となって金価格を下押しした。
一方、今回の長期金利低下は米国の物価上昇が順調に減速し、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利引き下げに向かうという前向きな期待が高まる中で起きている。足元の長期金利は4.2%台まで下がったとはいえ、歴史的には依然として高い水準にあり、今後も低下が続いたとしても不思議ではない。この場合は金価格にさらに上昇圧力がかかる展開も想定されそうだ。ただ、長期金利の先行きは今後の経済指標に左右されることも間違いなく、金価格の動向も影響を受けそうだ。
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