エヌビディア、総収入加速の勢いは? 21日決算 株価は早くも再上昇
エヌビディアが21日に8-10月期決算を発表する。総収入の実績や今後の見通しで投資家の予想を超えられるかが焦点だ。
半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)が21日の取引時間終了後に発表する2023年8-10月期決算は総収入増加の勢いが続いているかどうかが焦点だ。人工知能(AI)開発ブームに後押しされきてたエヌビディアの株価は8月末以降に勢いが止まったが、10月下旬からは再浮上が始まっている。米中対立の深まりといったエヌビディアにとっての不安材料がくすぶる中でも、8-10月期の実績や今後の見通しで投資家の期待を超えることができれば、改めて株価に強い追い風が吹くことも考えられる。
エヌビディアの8-10月期決算は総収入2.7倍の予想
エヌビディアは米国東部時間の21日午後5時(日本時間22日午前7時)に決算会見を開く。金融情報会社リフィニティブのデータによると、エヌビディアの8-10月期決算に関する市場予想は総収入が前年同期の2.7倍にあたる161.23億ドル、投資家が注目する調整ベースの1株当たり利益(EPS)は約5.8倍の3.36ドルと見込まれている。エヌビディアは過去14回の四半期決算のうち、総収入で1回、1株当たり利益で2回、市場予想をクリアできなかった。
エヌビディア株(NVDA)は2023年、AI開発向け半導体を手掛けるデータセンター部門の急成長を受けて上昇が加速。8月31日につけた終値ベースでの上場来高値(493.55ドル)は2022年末比で約3.4倍という異例の勢いとなった。その後は長期金利(10年物米国債利回り)上昇が株式市場全体を下押する中、エヌビディア株の勢いも鈍ったが、長期金利が頭打ちとなった10月下旬以降は再浮上している。11月13日の終値は上場来高値に迫る486.20ドルで、9営業日続伸を記録している。
リフィニティブによると、直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は30.26倍。株価上昇が止まる中でも収益拡大予想は維持されているため、前回の決算発表前の約44倍から大きく低下した。結果として、エヌビディアのPERは同業のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)の32.10倍よりも割安な水準となっている。一方、同じく同業のインテル(21.07倍、INTC)と比べた場合は割高だ。アナリストが提示する目標株価の平均は628.13ドルで、13日の終値よりも約3割高い。53人のうち18人が強い買い、33人が買いを推奨。残り2人は維持を勧めている。
アメリカと中国の対立がエヌビディアの不安材料に
エヌビディアはAI開発向けの半導体で圧倒的なシェアを持ち、マイクロソフト(MSFT)やアマゾン・コム(AMZN)などハイテク大手がこぞってAIサービスに力を入れる中で、製品への需要が拡大してきた。8-10月期決算では、エヌビディア自身が前回決算発表時に示した総収入の目安である160億ドル前後を超えられるかが注目点となる。また、エヌビディアが2023年11月-2024年1月期決算の総収入の見通しとしてどれだけ高い数字を示すかへの関心も高く、市場予想の約177億ドルを上回るかが焦点となる。
AIブームを背景に順風満帆にみえるエヌビディアだが、米中対立が業績の逆風になるおそれもある。バイデン政権は10月に中国向け半導体輸出規制の強化を発表。中国が最先端の半導体技術で軍事力を強化することを防ぐ狙いで、2022年10月の規制をさらに厳格に運用するとしている。エヌビディアの中国からの収入は2023年に入って回復傾向にあるが、改めて下押しされる可能性がちらつく。
また、米国の金利高が景気を下押ししてハイテク大手の業績を悪化させれば、AI開発への投資が減速するシナリオも想定される。逆にエヌビディアの半導体への需要が増え続けた場合には、生産能力をどこまで確保できるかという問題も生じかねない。マイクロソフトが出資するOpenAI社の生成系AIサービス「ChatGPT」が性能の高さで世界を驚かせてから約1年が経つ中、AIブームの盛衰がエヌビディアの業績を左右する局面が出てくる可能性もありそうだ。
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