米国株に試練 CPIに過熱感 利下げ見通し後退でS&P500下落
アメリカの3月CPIは市場予想を超える強さ。FRBの利下げ見通しは9月まで後退し、S&P500は0.95%安となった。
アメリカの株式市場が試練に直面している。10日に発表された3月の消費者物価指数(CPI)は伸び率が市場予想を上回り、物価上昇の過熱が感じられる結果。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを難しくする内容といえ、長期金利(10年物米国債利回り)は4.5%台まで上昇した。金利高を受けて10日のS&P500種株価指数は前日比0.95%安となり、最高値更新を繰り返してきた勢いが失われている。金融市場が見込むFRBの利下げ開始時期は9月まで後退しており、株式相場の見通しは暗くなった。今後はこれまでの株価上昇を牽引してきた大手ハイテク企業などの1-3月期決算発表が相場の先行きを左右しそうだ。
アメリカの3月CPIは予想を超える結果
10日発表の3月CPIは、総合指数の伸び率が前年同月比3.5%で、1月の3.2%や市場予想の3.4%を上回った。また、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は1月と同じ3.8%となり、こちらも市場予想(3.7%)を超えた。総合指数の伸び率が前月を上回るのは2か月連続だ。
3月CPIの印象は家賃の動向でも悪くなった。3月の家賃の伸び率は前年同月比5.7%で、2月と同じ数字。家賃の伸び率が前月から下がらなかった2023年3月以来1年ぶりだ。FRBは家賃の伸び率の低下が進んでいくことが物価上昇を抑える要因として働くとみてきただけに、見通しが狂った形にみえる。FRBのジェローム・パウエル議長は物価上昇率が低下していくことに楽観的な見方を示していたが、今後、軌道修正を迫られる可能性がでてきた。
S&P500は0.95%安 FRBの利下げ時期の見通しは9月に後退
こうした物価動向を受けて金融市場では金利高が進んだ。10日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.560%で、11月13日(4.632%)以来の高さとなった。前日からの上げ幅は0.194%ポイントで、2022年9月22日(0.196%ポイント)以来の大きさだ。金利の先高観を受けて、10日のS&P500(SPX)は5160.64まで値下がりした。S&P500は1月以降、最高値の更新を22回にわたって繰り返してきたが、10日の水準は3月28日につけた最新の最高値(5254.35)から1.78%安の水準まで後退した。
投資家の間ではこれまで、FRBが利下げに動くことで金利水準が下がり、株式相場の追い風になるとみられてきた。しかし金融市場が見込む利下げ開始時期は3月CPI発表前に有力視されいてた6月から9月まで後退している。CMEグループのデータによると、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間11日午前11時の段階で約17%となり、前日の59%程度から大幅に低くなった。7月までの利下げの確率は約44%、9月までの利下げの確率は約67%と見積もられている。
決算を控えた大手ハイテク株や半導体株の先行きに注目
今後の投資家の関心は大手ハイテク企業などの企業決算に向かいそうだ。10日の株式市場では、電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)が前日比2.89%安、アップル(AAPL)が1.11%安となった。半導体株では、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が2.13%安、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)は0.55%安となった。一方、NVIDIA(エヌビディア、NVDA)は1.97%高となっている。これらの企業が4月中旬以降に発表する決算や業績見通しに対する失望感が出れば、S&P500にさらなる下押し圧力がかる可能性もありそうだ。
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