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米国株本格異変か S&P500半年ぶり月次下落 物価上昇衰えず

S&P500が8月に半年ぶりの月次下落を記録。衰えない物価上昇を背景にして、アメリカの株価上昇の異変がはっきりしてきた。

出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場の異変がはっきりしてきた。米国の代表的な株価指数であるS&P500種株価指数の8月に1.8%下落。2月以来半年ぶりの月次でのマイナスとなった。長期金利の上昇が下押し圧力として働く中で、投資家心理が冷え込んだとみられる。また、31日に発表された7月の個人消費支出(PCE)物価指数は事前予想通りの結果で、物価上昇の衰えは感じられなかった。引き続き9月1日発表の8月雇用統計が物価上昇圧力の強さを示すかどうかで、株価が上下する場面が想定されそうだ。

アメリカの株式市場の上昇の勢いがストップ

S&P500(SPX)の31日の終値は前日比0.16%安の4507.66。7月末との比較では1.77%安となった。S&P500は3月から5か月連続で月次プラスを記録し、上半期に16%高となっていたが、勢いがストップした形だ。

S&P500の月次騰落率の推移

株価上昇の足を引っ張ったのは長期金利(10年物米国債利回り)の高止まりだ。ニューヨーク債券市場の31日の取引では長期金利が4.091%で取引を終え、8月に入って終値が一度も4%を割り込むことはなかった。長期金利は22日には一時、2007年11月7日以来15年9か月ぶりの水準となる4.366%をつけている。金利水準が上がれば株式の投資先としての魅力が相対的に薄れ、株価には下押し圧力がかかるとされる。

7月のPCE物価指数は事前予想通りの結果

金利上昇の背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が問題視する物価上昇が止まっていないことがある。31日に発表された7月のPCE物価指数の伸び率は、総合指数が前年同月比3.3%、食品とエネルギーを除いたコア指数が4.2%だった。いずれも事前予想で見込まれていた通りの結果でサプライズはなかったが、FRBが目標とする2%を大きく上回り、それぞれ6月から伸び率が拡大している。

PCE物価指数(総合、コア)の伸び率の推移

一方、PCE物価指数の伸び率は2022年6月に総合指数で7.0%となった水準と比較すれば、順調に低下してきたともいえる。また、現在の物価上昇は家賃(持ち家の帰属家賃含む)の値上がりの強さが大きな要因で、7月の消費者物価指数(CPI)をエネルギーと食品、家賃を除いた指数でみると、伸び率は前年同月比2.5%だ。アトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁は31日の南アフリカでの講演で「基調的な物価上昇率はすでに目標に近いのかもしれない」と述べた。

ただしFRBが物価上昇への警戒を緩めているわけではない。ジェローム・パウエル議長は25日のワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で、PCE物価指数の伸び率の低下を歓迎しつつ、「物価上昇が持続的に目標に向けて下がっているという確信を得る過程の始まりに過ぎない」と言及。状況次第で利上げを検討する立場を強調している。

FRBは物価上昇の背景には米国の労働市場の強さがあるとみており、9月1日午前8時30分(日本時間1日午後9時30分)に発表される8月の雇用統計の重要度は高い。雇用統計が予想よりも強い結果で、消費者の購買意欲が衰えずに物価が上がりやすくなる状況が感じられれば、FRBの利上げが意識され、株価に下落圧力がかかる可能性もありそうだ。


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