米雇用統計、8月もドル安要因か 過熱沈静の予想 直近2回は下振れ
9月1日発表の米雇用統計は就業者数増加が減速の見込み。下振れれば、直近2回と同様に円高ドル安が進む可能性がある。
アメリカの労働省が9月1日に発表する8月の雇用統計は労働市場の過熱感の治まりが感じられそうだ。米国ではこのところ経済活動の落ち着きを示す経済指標の発表が目立つ。8月の雇用統計が予想通りなら、物価上昇抑制を目指す米連邦準備制度理事会(FRB)にとって物価上昇圧力の弱まりを示す新たな好材料といえそうだ。また、雇用統計は6月分と7月分の発表時、いずれも結果が事前予想を下回り、ドル円相場を円高ドル安方向に動かした。今回も予想から下振れる結果となれば、ドル円相場に下落圧力がかかる展開も想定される。
アメリカの8月の雇用統計は就業者数17万人増の予想
8月の雇用統計は9月1日午前8時30分(日本時間1日午後9時30分)に発表される。ロイター通信のエコノミスト調査によると、非農業部門の就業者数は前月比17.0万人増の予想。7月の18.7万人増を下回り、3か月連続の20万人割れが見込まれている。一方、失業率は3.5%、平均時給の伸び率は前年同月比4.4%の予想で、いずれも7月から横ばいになる見通しだ。
非農業部門の就業者数増加の落ち着きは、米国の労働市場の過熱感の和らぎを感じさせる。FRBは労働市場の強さを物価上昇の大きな要因とみており、8月の結果が予想通りなら、2022年3月に着手した利上げの効果が表れているといえそうだ。
米国経済の落ち着きは2023年4-6月期GDP改定値でも
8月の雇用統計で労働市場の落ち着きが示された場合は、このところ発表されてきた経済指標の方向性と一致する内容だといえる。30日に発表された2023年4-6月期のGDP改定値は実質成長率が前期比年率2.1%となり、速報値の2.4%から下方修正された。在庫変動の効果がプラスからマイナスになったことや、輸入の減少率が小さくなったことが要因だ。個人消費の伸び率は前期比年率1.7%となり、速報値の1.6%から微増となってはいるが、ニューヨーク債券市場ではFRBの追加利上げへの警戒感が薄れ、長期金利は低下した。
さらに29日発表の7月の雇用動態調査(JOLTS)でも非農業部門の求人件数が事前予想を大きく下回った。外国為替相場では1ドル=147円台に達していたドル円相場(USD/JPY)が一気に145円台まで振れた。CMEグループのデータによると、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利が現状よりも高くなる確率は6割近くまで上がっていたが、雇用動態調査発表後は40%台前半まで下がっている。
7月と8月の雇用統計は発表後の円高ドル安が進行
このところの雇用統計は円高ドル安要因となってきた。ニューヨーク外国為替市場では、6月の雇用統計が発表された7月7日に前日比1.99円の円高ドル安が進行。7月の数字が発表された8月4日も0.79円の円高ドル安が進んだ。いずれも失業率や平均時給の増減率に大きな変化はなかったが、予想を超える就業者数増加の減速がFRBの利上げ観測を弱め、ドルを売って円を買う動きにつながった。
このため8月の雇用統計でも結果が事前予想から下振れた場合は円高ドル安の材料となりそうだ。FRBの動向に関する金融市場の思惑は日本時間31日午後9時30分発表の7月の個人消費支出(PCE)物価指数の結果にも左右されるとみられ、今後のドル円相場の値動きが大きくなる可能性もある。
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